
高血圧に悩む人にとって、ストレスは見逃せないリスク要因の一つです。
今回は、ストレスがなぜ血圧を上昇させるのか、そのメカニズムや実例、予防法までをわかりやすく解説します。日常生活でできる具体的な対策も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜストレスで血圧が上がるのか?そのメカニズムを知ろう
ストレスを感じると、私たちの身体は「緊急事態に備えるモード」になり、自律神経のひとつである交感神経が活発になることで、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。
これにより心拍数が上がり、血管が収縮して血圧が一時的に上昇します。
短期的な反応であれば問題がないことがほとんどですが、長期的にストレスを受け続けると、常に体が緊張しているような状態となり、高血圧を引き起こす要因のひとつとなってしまいます。
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ストレスが血管を収縮させる仕組み
ストレスを感じると、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、血管の筋肉が収縮し、血管の通り道が細くなります。その結果、同じ量の血液を流すために高い圧力が必要になり、血圧が上がるというわけです。
また、脳はストレスによる緊張状態を“非常時”と判断し、体を覚醒状態に保とうとします。
これが続くと、体が高い血圧に慣れてしまい、いつも高血圧の状態を保とうとするようになります。
慢性的なストレスが引き起こす「高血圧体質」
常にプレッシャーを感じている、気を張って生活している、イライラや不安が収まらない。
そんな状況が続くと、身体はその緊張状態に慣れてしまい、ストレスを受け続けているような状態が慢性化します。
すると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経がずっと働いたままの状態になりやすくなります。
この結果、血圧も常に高めの状態が維持されやすくなり、いわゆる「高血圧になりやすい体質」に近づいてしまう状態に。そして将来的に、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気のリスクが高まる傾向になるのも注意が必要です。
ストレスで血圧はどれくらい上がるのか
個人差はありますが、ストレスによって一時的に血圧が20〜30mmHgも上昇することがあります。
たとえば、診察室で血圧を測ると高くなる「白衣高血圧」や、大事な会議の前に血圧が上がる「職場高血圧」がその一例です。
一時的な上昇であっても、その状態が頻繁に繰り返されることで、血管へのダメージが蓄積されてしまいます。
その結果、将来的に慢性的な高血圧症(本態性高血圧)につながるリスクが高くなることもあります。
日常で起こるストレス下高血圧の具体例

ストレス下高血圧は、一時的なストレスによる一時的な血圧上昇であればそれほど心配する必要はありません。
しかし、仕事のストレス等で継続的なストレス環境にあることで高血圧状態が続いてしまうと、高血圧発症が2倍以上高まるということが報告されています。
ストレス下高血圧の代表的な例としては、「白衣高血圧」や「職場高血圧」「昼間高血圧」などがあげられます。
白衣高血圧:病院でだけ血圧が高くなる理由
白衣高血圧とは、病院などで血圧を測るときだけ数値が高くなり、家庭では正常な値を示す状態を指します。これは、医師や看護師の前で緊張することで交感神経が刺激され、一時的に血圧が上がるストレス反応が原因と考えられています。
日常生活では問題ないと思っていても、白衣高血圧のある方はストレスによる血圧変動を起こしやすい傾向に。将来的に慢性的な高血圧へ移行する可能性があることがわかっています。
そのため、白衣高血圧による一時的な血圧上昇自体はそれほど心配するものではないですが、診察時以外の日常生活の血圧がコントロールできているかどうかを確認するためにも家庭血圧が大切です。
職場高血圧:仕事中のストレスが血圧を上げる?
職場の人間関係やプレッシャー、過密スケジュールといった精神的ストレスにより、勤務中だけ血圧が高くなる「職場高血圧」も近年注目されています。
仕事中は集中や緊張により交感神経が優位になりやすく、そこにストレスが加わることで血圧が一時的に上がる場合があります。
特に、朝の出勤前と退勤後に測定した家庭血圧が正常であっても、職場では高い数値が出る人は要注意です。このような人は、体がストレス下でも高血圧を維持するようになり、将来的に慢性的な高血圧(本態性高血圧)へ進行するリスクが高まるとされています。
家庭血圧と診察時の差が示すサイン
白衣高血圧や職場高血圧のような特定の場面でだけ血圧が高くなるタイプの高血圧は、普段の血圧測定だけでは見逃されることが少なくありません。
特に注目すべきなのは、診察時の血圧と家庭で測る血圧の差です。例えば、自宅では130/80mmHgなのに病院では150/90mmHgを超えるというようなケースでは、緊張やストレスが原因で一時的に血圧が上がっている可能性があります。
一般的に、診察時と家庭血圧の差が10〜20mmHg以上ある場合は、ストレスに対して血圧が大きく反応しやすい傾向があると考えられます。
次の章では、そうした「ストレスによる血圧変化」に気づくための方法や、見える化する工夫について詳しくご紹介します。
あなたのストレス状態をチェック!うつ症状と血圧の意外な関係とは

ストレスは目に見えず、感じ方も人それぞれ。そのため、「自分はストレスを感じていない」と思っていても、身体にはすでに影響が出ていることがあります。
特に見落とされやすいのが、「心の状態と血圧」の関係です。
簡単セルフチェックでわかるストレス度
以下のような項目に、いくつ当てはまるかチェックしてみましょう。
☐ 寝つきが悪い、夜中に目が覚める
☐ 食欲が落ちている/過食傾向がある
☐ 仕事や家事に集中できない
☐ 気分が落ち込みがち
☐ 血圧が日によって大きく変動する
☐ 怒りや不安、焦りを感じやすい
これらのうち3つ以上に当てはまる場合、ストレスによる影響が出ている可能性があります。
ただし、これはあくまで簡易チェックであり、気になる症状が続く場合は、医師や専門家に相談することが大切です。
心の不調が血圧に現れるサインとは?
心の状態は、体調に大きな影響を与えます。 「心身相関」という言葉があるように、強いストレスや気分の落ち込みは、血圧の上昇と密接に関係していることがわかっています。
実際にうつ病や不安障害のある方の中には、高血圧も併せ持っているという報告も。
こうした精神的な不調は、交感神経を過剰に働かせてしまい、血圧が上下に大きく変動しやすくなるのです。 「最近気持ちが沈みがち」「やる気がでない」という方は、血圧の変動にも注意が必要です。
うつ症状と高血圧は関係している?心と体のつながりに注目
気分の落ち込みや意欲の低下などのうつ症状がある人は、ストレスによる緊張状態が続き、血圧が高めになる傾向があります。その一方で、高血圧患者では神経症やうつ傾向が多いという報告もあり、相互に関連している可能性があります。
ストレスや精神的要因の関与が大きい高血圧の場合には、適している高血圧の薬の種類が変わったり、通常の高血圧の薬のみではコントロールが難しく、必要に応じて抗不安薬・抗うつ薬などを使ったり、メンタルヘルスケアなどを行うことで改善することもあります。
また、抗うつ薬の中には血圧に影響を及ぼすこともあるため、抗うつ薬を服用中で高血圧がある方は、主治医や薬剤師に問題のない薬か念のため確認すると安心です。
心と体は密接につながっています。「気分が沈みがちなときこそ、血圧にも目を向ける」ことが、健康を守るポイントです。気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
家庭血圧の記録がストレスのバロメーターになる
ストレスや気分の変化による血圧変動は、自宅での血圧記録を続けることでその傾向を把握しやすくなります。 特に、朝起きてすぐと夜寝る前など、毎日ほぼ同じ時間帯に測ることが大切です。
こうした習慣が、ストレスに対する体の反応を「見える化」する手がかりになります。これらの記録は医師との診察時に共有することで、より適切なアドバイスや治療のサポートにもつながります。
ストレスによる高血圧を予防する!今日からできる7つの改善ポイント

ストレスが血圧に影響することが分かっても、「具体的にどうすればよいのか」と悩む方は多いはずです。
ここでは、医学的にも有効とされるストレス解消・高血圧予防の方法を7つに絞ってご紹介します。どれも手軽に始められるものばかりですので、無理なく自分に合った方法からぜひ取り入れてみてください。
1. 軽い有酸素運動での気分転換
ウォーキングや自転車こぎ、ストレッチなどの軽い運動は、ストレス解消に役立つ方法として医学的にも注目されています。 運動をすることでセロトニンやエンドルフィンといった心を安定させる脳内物質が分泌され、気分が落ち着きやすくなります。
さらに、運動は血管の柔軟性を保ち、血圧の安定にも良い影響を与えることが知られています。 特に中高年層の方は、「無理のない運動を毎日少しずつ」を心がけることが大切です。
2. 入浴と睡眠で自律神経を整える
忙しい毎日でも、1日の終わりにぬるめのお風呂にゆっくり浸かるだけで、体の緊張をほぐしやすくなります。入浴後は「リラックスモード」をつかさどる副交感神経が働きやすくなり、自然な眠気が訪れやすくなります。
また、「寝不足」は高血圧の大きなリスク要因のひとつです。 短い睡眠時間や質の低下が続くと、ホルモンバランスが崩れ、血圧が上がるリスクも高まります。 最低でも6〜7時間の質の良い睡眠を確保しましょう。
3. 深呼吸・瞑想でリラックス習慣づくり
深くゆっくりとした呼吸(腹式呼吸)は、心と体を落ち着かせる自然な方法です。 1日に数分間、ゆっくりと腹式呼吸をするだけでも、交感神経の活動がやわらぎ、副交感神経が働きやすくなります。
最近では、マインドフルネス瞑想も注目されています。「今この瞬間」に意識を向けることで思考の渦から抜け出し、ストレスや不安による血圧の上昇を防ぐ効果が期待されています。
4. スマホの利用時間を見直し
スマートフォンは便利な反面、長時間の使用は無意識のうちに心身に負担をかけていることも。 特に寝る前の使用は睡眠の質を下げる原因となり、ストレスや血圧上昇にもつながりかねません。
通知のオンオフ、利用時間の制限、寝室に持ち込まないなど、“スマホとの上手な距離感”を持つことが大切です。
5. 好きな音楽や読書、映画など趣味の時間を作る
趣味に没頭する時間は、脳をリラックス状態へと導く“リセットタイム”です。音楽鑑賞や映画鑑賞、ガーデニング、手芸、読書など、自分が心地よく過ごせる時間を意識的に作ることで、ストレス耐性が高まり、血圧の安定にもつながります。
特に「好きなことに夢中になる時間」は、脳内ホルモンのバランスを整えるのに役立つと考えられています。
6. 一人で抱え込まないコミュニケーション習慣
ストレスがたまっているときほど、人と話すことが大きな助けになります。家族や友人、職場の同僚など、信頼できる相手に話を聞いてもらうだけでも、心の負担が軽くなることも。
また、孤独感は慢性的なストレスを引き起こしやすく、無意識の内に血圧を上げやすくしてしまうため、「人とのつながりを感じられること」が、心身の健康を保つことにもつながると考えます。
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ストレス発散以外の高血圧改善方法にも目を向けよう
ストレス対策だけでなく、生活習慣全般の見直しも高血圧の改善には重要です。ここではストレス以外の観点から、血圧を安定させるための具体的な方法をご紹介します。
生活習慣の見直し
高血圧の予防・改善には、毎日の生活習慣の積み重ねが効果的です。
・栄養バランスと減塩意識
野菜や果物を中心に、バランスの取れた食事を心がけましょう。 塩分摂取は1日6g未満を目指すのが理想です。加工食品や外食を控えめにし、薄味に慣れることがカギです。
・運動の習慣化
運動はストレス軽減にも、血圧のコントロールにも効果的です。週3〜5回、30分程度の有酸素運動が推奨されています。
・嗜好品(カフェイン、アルコールなど)の取り方に注意
カフェインやアルコールは適量であれば問題ないとされていますが、摂りすぎると血圧を上げる原因になります。自分の適量を把握し、無理のない範囲でコントロールすることが大切です。
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マイカルテアプリを活用した継続的な血圧管理
高血圧の予防・改善には、家庭での血圧を継続的に記録することがとても重要です。
特に、朝と夜に決まった時間で測ることで、ストレスの影響や体調の変化に早く気づくことができます。
その際に便利なのが、『Welbyマイカルテ』のようなスマートフォンアプリです。
このアプリでは、毎日の血圧測定値を簡単に記録・グラフ化できるだけでなく、睡眠や体重、服薬状況なども一括で管理可能。ストレスが強かった日や、気分が沈んでいた日の血圧変動を見返すことで、自分の“高血圧の傾向”をより深く理解できるようになります。
さらに、アプリの記録データを主治医と共有することで、診察時の会話もより具体的で精度の高いアドバイスが得られるようになります。 続けやすいという点から、マイカルテの活用は非常におすすめです。
詳しくは公式サイト『Welbyマイカルテ』をご覧ください。

まとめ
ストレスは、自律神経やホルモンを介して血圧を上げる原因になります。白衣高血圧や職場高血圧のように、気づかないうちに血圧が高くなるケースもあります。
また、うつや不安といった心の不調も血圧に影響するので注意が必要です。心と体の変化を見逃さず、運動・睡眠・趣味などでリラックスする習慣を取り入れることが大切です。
さらに、血圧を安定させるためには、食事や運動といった生活習慣全体を整えることも欠かせません。家庭での血圧測定やWelbyマイカルテの活用を通じて、自分の状態を「見える化」しながら、無理のない改善を続けていくことが、健康な未来への第一歩です。
※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。