
毎日の健康を守るうえで欠かせないのが、血圧を正しく測定することです。
この記事では、家庭での血圧測定の重要性から、測定時の注意点、スマートフォンアプリやスマートウォッチの活用方法までわかりやすく解説します。

なぜ家庭血圧が重要なのか?診察室血圧との違いを知ろう
血圧測定は病院で行えば十分だと思っていませんか?実は、病院で測る「診察室血圧」よりも、自宅で日常的に測る「家庭血圧」の方が、健康状態を正しく把握するうえで重要とされています。ここでは、その理由について詳しく説明します。
白衣高血圧・仮面高血圧とは?
診察室で測った血圧が高くなる現象を「白衣高血圧」と呼びます。医療者の前で緊張してしまい、本来より高い数値が出てしまうため、実際の血圧状態とは異なる可能性があります。
逆に、自宅では高く出るのに診察室では正常値になるケースを「仮面高血圧」と呼びます。これも見逃されやすく、適切な治療の機会を失ってしまうことがあるのです。
こうしたタイプの高血圧を見極めるには、家庭血圧の測定が欠かせません。
高血圧ガイドラインが家庭血圧を推奨する理由
日本高血圧学会が定めた「高血圧治療ガイドライン(2019年版)」では、家庭血圧が診察室血圧よりも信頼性・再現性に優れているとされています。つまり、日常生活に近い環境で測定する家庭血圧の方が、血圧管理の判断材料として優れているのです。(※1)
特に、家庭血圧は、治療方針の決定や薬の効果を評価する際にも重要な情報となるため、正確に測定することが高血圧治療の基本となっています。
早朝高血圧・就寝前の血圧測定の重要性
血圧は一日のうちで変動します。とくに朝は交感神経が活性化するため、血圧が上がりやすい時間帯です。この現象は「早朝高血圧」と呼ばれ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める要因として知られています。
また、就寝前の血圧も重要です。日中の疲労やストレス、夕食・飲酒などが
正しい血圧の測り方|測定のタイミング・姿勢・注意点

血圧は測るタイミングや姿勢、環境によって大きく変動します。正確な数値を得るためには、適切な方法を理解し、日々の測定に活かすことが大切です。ここでは、正しい測定のためのポイントを解説します。
朝と夜、どちらが正しい?測定の最適なタイミング
家庭での血圧測定は、1日2回行うのが基本です。最適なタイミングは「朝起きて1時間以内(排尿後・朝食前・服薬前)」と「就寝前」です。
朝は、身体の活動が始まる直前で、血圧が自然に上昇しやすい時間帯になります。就寝前は、日中の疲労やストレスの影響が現れる時間帯であり、これらを測定することで血圧の変動パターンを把握できます。
忙しい日や体調がすぐれない日など、どうしても2回測定が難しいときは、どちらか一方だけでも構いません。重要なのは「毎日継続して測定すること」です。
正しい測定姿勢
測定時の姿勢も非常に重要です。以下の点を守ることで、より正確な数値が得られます。
- 椅子に深く腰かけ、背もたれに背を預ける
- 足は組まず、床に平行に置く
- 測定する腕は心臓と同じ高さに保つ
- 腕帯(カフ)は素肌もしくは薄手の肌着(衣類)の上から巻く
- 測定前に1〜2分間安静にする
これらの姿勢を守ることで、測定誤差を最小限に抑えることができます。
血圧測定が苦手な方はリラックスが大事
血圧は緊張や不安で上昇することがあります。測定時に「ドキドキしてしまう」「測定が怖い」と感じる人も多いはず。こうした方には、リラックスするための呼吸法や静かな環境の整備がおすすめです。
たとえば、深呼吸を3回ほどしてから測定を始める、音楽をかける、測定前に目を閉じてリラックスするなど、簡単な工夫が効果的です。
測定時の注意点:環境、食事、排尿など
以下のような条件も、測定結果に大きな影響を与えるため、注意が必要です。
- 室温が寒すぎる(冬場などは暖かい部屋で測定を)
- 測定直前に食事やカフェイン、アルコールを摂取している
- 排尿を我慢している状態
- 運動や入浴直後
これらの状態では、血圧が正確に測れないことがあります。できるだけ安定した環境で、日々同じような条件下で測定することが理想です。
血圧測定を続けるには?習慣化のコツと記録方法
血圧測定は、1日だけでは意味がありません。重要なのは「毎日継続すること」。しかし、忙しい日々の中で習慣化するのは簡単ではありません。
ここでは、継続するための工夫と、記録の大切さについて解説します。
毎日のルーティンに測定を取り入れるコツ
測定を日課にするには、すでに習慣化している行動とセットにするのが効果的です。
たとえば、
- 朝のトイレの後にそのまま測定する
- 夜の歯みがきの前に測定する
- 朝食を食べる前に血圧を測るようにして「測ったら朝ごはん」という流れを作る
など、自然な流れに組み込むと続けやすくなります。
また、スマートフォンのアラームやリマインダー機能を活用し、測定時間に通知が来るよう設定するのも有効です。
測定できない日があっても気にしすぎない
完璧に毎日2回測ることを目指すと、かえってストレスになることもあります。「今日は朝だけ」「昨日は測れなかった」など、少し抜けてしまっても大丈夫です。
大切なのは、「測らないより測ったほうがいい」という姿勢で、前向きに取り組むことです。
継続は力なり!
数値の傾向をつかむためには、ある程度の測定回数があれば十分効果があります。
測定結果はアプリや手帳で記録を残すことが大切
血圧を測定したあとは、その数値を記録することも非常に大切です。記録があることで、血圧の変動や傾向を把握でき、医師の診察時にも役立ちます。
そこで、以下のような記録方法があります。
- 紙の「血圧手帳」に毎日記入する
- スマートフォンの「血圧測定アプリ」に入力
- アプリと連携する血圧計を使い、自動記録する
特に、アプリは血圧数値のグラフ化や平均値の表示、リマインダー機能など便利な機能が多数搭載されており、記録の継続と管理をサポートしてくれます。
血圧測定アプリは使うべき?メリットと注意点を解説

最近では、スマートフォンに対応した「血圧測定アプリ」が多数登場しています。アプリは記録や分析が手軽にできる一方で、注意して使うべき点も存在します。ここでは、アプリの利点と活用時のポイントを解説します。
血圧測定アプリを利用するメリット
血圧測定アプリの最大のメリットは、記録が簡単で見やすいことです。入力した数値が自動でグラフ化されるため、自分の血圧の傾向や変化を視覚的に確認することができます。
また、以下のような便利な機能もあります。
- 測定時間のリマインダー通知
- 目標値の設定と平均値の表示
- 医師への報告用にPDFなどでデータ出力が可能
- アプリと連携できるBluetooth対応血圧計で自動記録
こうした機能により、記録を手間なく続けられ、結果的に習慣化しやすくなります。
正しく使うための注意点:測定タイミングや精度に注意
便利なアプリですが、注意点もあります。まず、アプリは「記録・管理」を補助するツールであり、「血圧を測る機能そのもの」は基本的に備えていません(一部スマートウォッチ連携を除く)。
そのため、測定自体は信頼性の高い血圧計を使って行い、アプリはその補助として利用するのが正しい使い方です。
また、測定タイミングが不規則になると、グラフの傾向も正しく反映されません。できるだけ「毎日同じ時間帯」で記録を行い、正確なデータを蓄積することが大切です。
おすすめ無料アプリと選び方のポイント
アプリを選ぶ際には、以下のようなポイントをチェックすると良いでしょう。
- 広告が少なく、画面が見やすくて操作しやすい
- グラフ・一覧表示・平均値などの分析機能がある
- データのエクスポート機能がある(PDF、CSVなど)
- 信頼できる企業や医療機関と連携している
代表的なアプリには、「Welbyマイカルテ」や「血圧ノート」などがあります。これらは医療機関でも利用されており、セキュリティ面でも安心です。
【関連記事】【2025年版】血圧計おすすめランキング!失敗しない選び方ガイド
スマートウォッチで血圧測定はできる?信頼性と使い方の注意点

近年のスマートウォッチには、血圧測定機能を備えたモデルが登場し、注目を集めています。しかし、「本当に信頼できるのか?」「どう使えば正しく測れるのか?」といった疑問も多く寄せられます。ここでは、スマートウォッチでの測定について解説します。
使用時の注意点:心臓の高さ・測定姿勢
スマートウォッチで正しく血圧を測定するためには、通常の血圧計以上に姿勢や条件に注意が必要です。特に重要なのは、腕の位置を心臓と同じ高さに保つことです。心臓より高いと低く表示され、低いと高く表示される傾向があります。
また、測定中は静かに座り、動かずにリラックスした状態を保つことが求められます。これにより、測定のばらつきを抑えることができます。
最近では腕時計のように手軽に使えるタイプの血圧測定器もありますが、こうしたものは病院でも使われる「腕に巻くタイプの血圧計」ほど正確ではありません。
日々の変化をざっくり確認するには便利ですが、正確な数値を知りたいときは、医療用の血圧計もあわせて使うのが安心です。
アプリと連携することで継続しやすくなる
スマートウォッチで測定したデータは、専用のスマートフォンアプリと連携することで、自動的に記録・グラフ化されます。この機能により、毎回手書きで記録する手間が省け、測定結果を客観的に見える化することが可能になります。
また、アプリによっては、日ごとの平均値、週や月単位の推移、異常値のアラート表示なども備えられており、継続的な健康管理に役立ちます。リマインダー機能を設定すれば、測定を忘れることも減り、習慣化しやすくなるでしょう。
ただし、スマートウォッチでの血圧測定は、使用環境や体動、肌の状態などの影響を受けやすいため、「体調の傾向を掴むサポートツール」として使うことをおすすめします。
まとめ
高血圧は自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行する「サイレントキラー」とも呼ばれています。そのため、家庭での血圧測定は、健康を守るための最も手軽で有効な手段です。
正しい測定タイミングや姿勢を理解し、毎日継続することで、自分の体の変化に気づきやすくなります。測定は1日2回、朝と夜に行うのが基本ですが、完璧である必要はありません。「測ることを忘れない」ことが最も重要です。
また、血圧測定アプリやスマートウォッチなどのデジタルツールを活用すれば、記録や管理がぐっと楽になり、続けるための大きな助けになります。ただし、アプリや機器の精度や使い方には注意し、必要に応じて医療機関での診察やアドバイスも受けましょう。
血圧管理は、日々の小さな行動の積み重ねです。この記事が、あなたの健康習慣づくりの第一歩となれば幸いです。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(2019年版)」