
執筆:看護師 図司真澄
血圧が気になるとき、「薬以外にできることはないかな」と感じた経験はありませんか。
日々の食生活に少し意識を向けるだけで、体のめぐりを整えるサポートになる場合があります。
本記事では、「バナナ」がなぜ血圧対策に良いとされるのかをわかりやすく解説し、手軽に続けられる果物「バナナ」と血圧の関係を、科学的な根拠とともにわかりやすく紹介します。


バナナと血圧の関係|なぜ注目されているのか
血圧を安定させるには、食事・運動・ストレスなど、日々の生活習慣を整えることが大切です。
その中でも、バナナは“身近に取り入れやすい食品”として多くの人に注目されています。
ここでは、バナナに含まれる成分カリウムやGABA(ギャバ)などの成分が、どのように血圧の安定に関わるかを科学的な知見をもとに解説します。
血圧が高くなる原因とは
血圧が上がる原因には、塩分の摂りすぎ・ストレス・運動不足・加齢などがあります。 塩分をたくさん摂ると、体内に水分がたまりやすくなり、血液の量が増えて血圧が上がります。
ストレスが続くと血管が縮みやすくなり、血圧を上げてしまうこともあります。また、運動不足になると体のめぐりが悪くなり、余分な塩分や水分が体にたまりやすくなります。
その結果、むくみや体重増加が起き、血圧が高くなりやすくなります。
さらに、年を重ねると血管がかたくなる「動脈硬化」も進みやすくなります。血管がかたくなると血液が流れにくくなり、心臓が強く押し出さなければならなくなるため、自然と血圧が上がってしまうのです。また、過度の飲酒や喫煙も高血圧の原因になります。
このように、血圧は食事・運動・年齢に加えて、生活習慣全体の影響を受けています。だからこそ、毎日の習慣を少しずつ整えることが、血圧を安定させる第一歩です。
バナナが血圧ケアに注目される理由
バナナが注目されている最大の理由は、カリウムやマグネシウムなど血圧を調整する働きを持つ栄養素を豊富に含んでいる点です。
さらに、バナナは皮をむくだけで食べられる手軽さと、毎日の食生活に取り入れやすい利便性も継続の後押しになります。
朝食や間食にバナナを取り入れることで、自然にカリウムを補給できるため、「無理のない血圧ケア食品」として支持されています。
カリウムによる塩分排出のメカニズム
塩分を摂りすぎると、体内のナトリウムが増えて血液量が増加し、血圧が上がります。このときに働くのが、バナナに豊富なカリウムです。
カリウムは、余分なナトリウムを体の外に出すサポートをします。これにより体内の水分バランスが整い、血圧が上がりにくくなるのです。※1
現代の食生活では、外食や加工食品から塩分を摂りすぎる傾向があります。そんなとき、バナナのようなカリウム源を取り入れることは、血圧管理の助けになります。
GABAがもたらすリラックス作用と血圧安定効果
仕事や人間関係のストレスは、血圧を上げる要因のひとつです。ストレスを受けると、血管が収縮して血圧が上がります。
ここで注目されるのが、バナナに含まれるGABA(ギャバ)です。GABA(ギャバ)は、脳内の神経伝達を整えるアミノ酸の一種で、精神を安定させる作用だけではなく、血圧を下げる作用があります。※2
マグネシウム・食物繊維の効果
バナナには、マグネシウムと食物繊維も含まれています。マグネシウムは血管をやわらかく保ち、血流をスムーズにします。
一方で、食物繊維は腸内環境を整えるだけでなく、血圧やコレステロール値を適正に保つ働きがあります。※3
これらの成分が相互に作用することで、血管の健康を支えながら、 血圧の安定を助ける効果が期待できます。
研究で報告されている血圧への影響
研究では、一定期間(4週間)バナナを摂取した群(グループ)で、収縮期血圧(上の血圧)が低下したという報告もあります。※2
また、日本でも、GABAやカリウムを含む食品が「機能性表示食品」として販売され、 「血圧が高めの方に適した食品」として紹介されていますよね。
ただし、これらは薬のように血圧を下げるものではなく、あくまで日常の健康維持をサポートする食品です。
血圧を安定させるためのバナナの食べ方

バナナはそのままでもおいしく食べられる手軽な果物です。
食べるタイミングや量、組み合わせを工夫すると、血圧ケアの効果をより効果的にすることができます。ここでは、日々の生活に無理なく取り入れるための実践的な方法を具体的に紹介します。
食べるのにおすすめのタイミング
バナナは、食べる時間帯を選ばず、どのタイミングでも血圧ケアに役立つ果物です。
特に朝は血圧が上がりやすい時間帯とされており、朝食にバナナを食べたからといって急に血圧が下がるわけではありません。
大切なのは、食事のバランスを整えた上で、バナナを継続して摂ることです。バナナに多く含まれるカリウムやマグネシウムといった栄養素は、日々の血圧コントロールをサポートしてくれます。
そのため、朝・昼・夜のどの時間でも、自分の生活リズムの中で無理なく続けられるタイミングで取り入れるのがいちばんです。
血圧以外の効果に着目すると、朝バナナがおすすめです。起床後は血糖値が低下しているため、バナナに含まれる糖質が血糖値をゆるやかに上げ、朝のエネルギー補給にもぴったり。
さらに、食物繊維やオリゴ糖が腸の働きを整え、すっきりした朝のリズムをサポートしてくれます。
1日の目安量と食べ方のコツ
バナナの摂取目安は1日1〜2本です。それ以上食べると糖質やカロリーの摂りすぎにつながることがあります。
また、バナナはそのまま食べるだけでなく、 スムージーやヨーグルトに加えてもおいしく食べられます。
加熱調理も可能ですが、カリウムは水に溶けやすい性質があるため、できれば生のままか、調理時に水に長時間さらさない方法が理想です。
おすすめレシピ
毎日飽きずに続けるために、簡単でおいしいアレンジを紹介します。
●バナナスムージー
バナナ1本に牛乳または豆乳を加え、ミキサーで混ぜるだけ。
お好みで小松菜やきな粉を加えると、カリウムやマグネシウムも一緒に摂ることができます。
●ヨーグルト×バナナ
スライスしたバナナをヨーグルトに加えるだけの簡単デザート。
タンパク質や乳酸菌、食物繊維を同時に摂れるため、腸内環境を整えたい人にもおすすめです。
●オートミール×バナナ(朝食や軽食に)
温めたオートミールにバナナをつぶして混ぜるだけ。バナナの栄養素とオートミールの食物繊維が、血圧の安定をサポートします。満腹感が続くので、間食を控えたいときにもおすすめです。
バナナを食べるときの注意点

健康によいとされる食品でも、摂取方法を誤ると期待する効果が得られないことがあります。ここでは、バナナを血圧ケアの一環として活用する際も、量や体質に応じた注意が必要です。
ここでは、安全に取り入れるための基本ポイントと注意点を整理します。
食べ過ぎによる糖質オーバーに注意
バナナ1本にはおよそ20gの糖質が含まれています。1〜2本であれば問題ありませんが、毎日多く食べすぎるとカロリーや糖質の摂りすぎにつながります。
特に、糖尿病や体重管理をしている人は、主食や他の果物とのバランスを考えて取り入れましょう。
腎臓病・糖尿病など持病がある人の場合
腎臓の機能が低下している場合、体内のカリウムを十分に体外へ排出できていないことがあります。
カリウムが過剰に蓄積すると心臓への負担が増える可能性があるため、医師や栄養士の指導を受けて摂取量を調整することが重要です。そのため、医師の指導を受けている人は自己判断で摂取量を増やさないようにしましょう。
また、糖尿病の人は血糖値コントロールの観点から、バナナを含む食事全体の糖質量に注意する必要があります。
【関連記事】食後に血圧が下がる原因とは?対策や高血圧・糖尿病との関連を徹底解説
【関連記事】高血圧と腎臓の関係とは?CKD(慢性腎臓病)予防に必要な知識を解説
バナナを安全に取り入れるためのまとめ
・1日1〜2本を目安にする
・食べすぎや糖質の摂りすぎに注意する
・持病がある人は医師や栄養士に相談する
自分の体調に合った範囲で無理なく続けることが、健康的な血圧維持につながる最も重要なポイントです。
まとめ|無理なく続けられる血圧ケアにバナナを
バナナは、カリウム・GABA・マグネシウム・食物繊維といった 血圧を安定させる栄養素をバランスよく含んだ果物です。
塩分の多い食事が気になる方や、 ストレス・運動不足などで血圧が上がりやすい方にも、手軽に取り入れやすい食品としておすすめできます。
ただし、健康効果を期待するあまり食べすぎないことが大切です。“食習慣の中で無理なく続けるケア食材”として活用することで、バナナは健康的な血圧維持をサポートしてくれます。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献:
※1:安東克之,藤田敏郎,山下亀次郎(1983).本態性高血圧症患者におけるカリウムの降圧効果.日本内科学会雑誌, 72(7), 882–889.
※2:増田 隆昌 ほか(2021).バナナ摂取がもたらす血圧降下、便通促進、精神安定効果 ― ランダム化単盲検並行群間比較試験 ―.New Diet Therapy, 37(3), 3-10.
※3:Aleixandre A, Miguel M. Dietary fiber and blood pressure control. Food Funct. 2016 Apr;7(4):1864-71.


