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便秘と血圧の深い関係|- 高血圧の方が注意すべきリスクと対策 –

便秘と血圧の深い関係|高血圧の方が注意すべきリスクと対策

執筆:看護師 図司真澄

便秘と血圧の関係は、日常生活の中で見落とされがちな健康リスクです。

排便時のいきみ血圧を大きく変動させたり、腸の働きが血圧コントロールに関与したりすることがあります。

本記事では、便秘が血圧にどのように影響するのかを解説し、高血圧の方が安全に過ごすための具体的な対策を紹介します。

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便秘と血圧はどんな関係があるの?高血圧の人が注意したいポイント

便秘」と「血圧」は一見関係がなさそうに思えますが、実は大きく関わっています。

排便のときのいきみや、腸の状態の変化が血圧に影響しやすく、特に高血圧の人では注意が必要です。

いきむと血圧が上がりやすくなる

トイレで強くいきむと、体にぐっと力が入り、その瞬間に血管へ強い圧力がかかります。排便時には血圧が一時的に高くなりますが、もともと血圧が高い方や高齢の方では、血圧の変動がさらに大きくなりやすいのです。

排便時の強いいきみが血圧の上昇につながり、それが心不全・不整脈・狭心症・大動脈解離などの病気につながることが報告されています。※1

そのため、「力みすぎない排便」を意識することが、体の負担を減らすうえで大切です。

いきみや腹痛で血圧が急に下がることも

一方で、強くいきみすぎたり、腹痛が強いときには、迷走神経反射という反応で血圧が急に下がることがあります。

冷や汗・めまい視界が暗くなるといった症状が出て、まれに意識を失うこともあります。発作時は無理に立ち上がらず、しばらく深呼吸をして休みましょう。

便秘が続くと血圧の安定にも影響

便秘が長く続くと、いきみが増えるだけでなく、腸内環境の変化などを通じて、血圧のコントロールや心臓・血管の健康に影響が出ることが報告されています。※3

ある研究では、排便回数が少ない人(2~3日に1回程度)は、毎日ある人に比べて心臓や血管の病気で亡くなるリスクが高い傾向が示されています。※4

こうした背景から、腸の調子を整えることは血圧の安定にも役立つと考えられています。

なぜ便秘になるの?知らないうちに起こる5つの原因

便秘は「食べすぎ」「運動不足」といった単純な理由だけではありません。年齢生活リズムストレス薬の影響など、さまざまな要素が少しずつ重なって起こるものです。

ここでは、知らないうちに腸の働きを妨げている5つの主な原因を、少し詳しく見ていきましょう。

加齢による腸の動きの変化

年を重ねると、腸の筋肉の力神経の反応が弱くなり、便を押し出す「ぜん動運動」がゆるやかになります。また、高齢になるほど水分をとる量や食事量が減る傾向があり、それも腸の動きを鈍らせる原因に。

特に女性ホルモンの変化によって腸の動きが影響を受けやすく、更年期以降に便秘が増えることもあり、加齢ホルモンの変化による腸の変化は自然なことですが、放っておくと慢性的な便秘になりやすくなります。

水分や食物繊維の不足

便の70〜80%は水分です。体内の水分が足りないと、便が硬くなって排出しにくくなります。

また、野菜果物きのこ海藻などに含まれる食物繊維は、便のかさを増やして腸を刺激するのが特徴です。

特に現代の食生活では、外食加工食品が中心になることで食物繊維が不足しやすく、便秘の一因になります。

忙しくて水を飲み忘れる」「野菜をあまり食べない」といった日常の小さな積み重ねが、便秘を引き起こすきっかけになるのです。

体を動かさない・ストレスが多い

は「第二の脳」と呼ばれるほど、自律神経と深く関係しています。

運動不足で体を動かさない生活が続くと、腸の動きが鈍くなり、ガスや便がたまりやすく、さらに、ストレスや緊張が続くと、自律神経のバランスが乱れ、腸がスムーズに動かなくなります。

【関連記事】ストレスで高血圧に?意外な関係性と改善ポイントを解説

薬の影響(血圧の薬など)

 薬によって腸の動きや水分の吸収が変化し、便秘が起こることがあります。

特に高血圧治療で使われるカルシウム拮抗薬利尿薬は、腸の筋肉をゆるめたり体内の水分を減らしたりして、便を硬くすることがあります。

また、鉄剤鎮痛薬なども便秘を悪化させることが知られており、薬が原因と感じても、自分で中止せず、医師や薬剤師に相談して調整してもらうことが大切です。

【関連記事】【保存版】高血圧の薬の全種類をわかりやすく解説|効き方・副作用・注意点を比較

生活リズムや排便習慣の乱れ

規則正しい生活リズムを好みます。

朝食を抜いたり便意を我慢したり、夜更かしを続けたりすると、腸の動きが乱れやすくなる可能性も。

こうした変化が長く続くと、便秘が慢性化して、いきみの回数が増える傾向があり、これが血圧の変動をまねくことも考えられます。

血圧を安定させるための便秘改善法

便秘を防ぐことは、血圧の急な変動を抑えるうえでも大切なポイントです。腸の動きが整うと、血液の循環や自律神経のバランスも安定しやすくなります。

毎日の生活の中で、できることから少しずつ実践していきましょう。

水分と食物繊維をしっかり摂る

水分食物繊維は、便をやわらかく保つための基本です。体内の水分が足りないと、便が硬くなって出にくくなり、いきみが強くなることで血圧が上がりやすくなります。

こまめに水分をとり、のどが渇く前に少しずつ飲むよう意識しましょう。また、野菜果物きのこ海藻豆類などに多く含まれる食物繊維を毎日の食事に取り入れることで、腸の動きを自然にサポートできます。

軽い運動で腸と血圧を整える

ウォーキングや軽いストレッチなどの運動は、腸の動きを活発にするだけでなく、血圧を安定させる効果もあり、特に朝の時間帯の散歩は、自律神経の切り替えを助け腸と血管の働きを整えるのに役立ちます。

激しい運動でなくても、1日15〜30分ほど体を動かすことを意識しましょう。体を動かすことでストレスもやわらぎ、腸と血圧の両方に良い影響を与えます。

腸内環境を整える食事を心がける

血圧を安定させるための便秘改善法。ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品。

ヨーグルト、納豆味噌などの発酵食品に含まれる善玉菌は、腸内環境を整えるのに有効です。

腸内のバランスが良くなると、腸の働きが活発になり、血液中の余分な老廃物や塩分の排出もスムーズになります。結果的に、血管への負担を減らし、血圧の安定にもつながるでしょう。

【関連記事】納豆で血圧は下がる?高血圧改善の効果と正しい食べ方・薬との注意点を解説

高血圧の方が安全に排便するための工夫

排便の際は、いきみや冷えによって血圧が大きく変動することがあります。

高血圧の方は、トイレ環境や姿勢、習慣を見直して、体への負担を減らすことが大切です。

トイレを温かくして血圧変動を防ぐ

高血圧の方が安全に排便するための工夫。トイレを温かくして血圧変動を防ぐ

寒いトイレでは、体が冷えて血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。暖房便座トイレマットを活用し、できるだけ室温差を少なくするようにしましょう。

必要に応じて、小型ヒーターを設置して空間全体をほどよく暖めるのも有効です。

呼吸と姿勢を意識していきみを減らす

排便時いきみすぎないことが重要です。

深呼吸をしながら、少し前かがみの姿勢で座ると腹圧がかかりにくくなるため、強くいきまなくても自然に便を出しやすくなります。

いきみを繰り返すと一時的に血圧が上がるため、焦らずリラックスして排便しましょう。

便意を我慢せず、規則的な排便習慣を作る

便意を感じたらできるだけ我慢せず、早めにトイレに行くようにしましょう。便意を我慢する習慣が続くと、腸が刺激に慣れてしまい、自然な排便リズムが崩れやすくなります。

朝食後は腸が最も動きやすい時間帯なので、毎日同じ時間にトイレへ行く習慣をつけると効果的です。

まとめ

便秘と血圧の関係を理解し、日常生活で予防することが重要です。便秘は血圧の変動を引き起こし、高血圧の悪化や脳・心臓の病気のリスクを高めることがあります。

腸の健康を整えることは、血圧を安定させるための大切なステップで、水分や食物繊維の摂取、軽い運動、排便環境の見直しといった小さな工夫を積み重ねていくことにより、 腸と血圧の両方を健やかに保つことができます。

もし便秘が長く続いたり、生活習慣を見直しても改善しない場合は、自己判断せずに医師へ相談しましょう。

また、高血圧の薬(降圧薬)を服用中の方で便秘が気になる場合は、薬の変更や整腸薬の併用などを含めて、かかりつけ医や薬剤師に相談することが大切です。

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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。

◆参考文献:
※1:Ishiyama Y, Hoshide S, Mizuno H, Kario K. Constipation-induced pressor effects as triggers for cardiovascular events. J Clin Hypertens (Greenwich). 2019 Mar;21(3):421-425.
※2:Goyal P, Maurer MS. Syncope in older adults. J Geriatr Cardiol. 2016 Jul;13(5):380-6.
※3:Yang T, Santisteban MM, Rodriguez V, Li E, Ahmari N, Carvajal JM, Zadeh M, Gong M, Qi Y, Zubcevic J, Sahay B, Pepine CJ, Raizada MK, Mohamadzadeh M. Gut dysbiosis is linked to hypertension. Hypertension. 2015 Jun;65(6):1331-40.
※4:Honkura K, Tomata Y, Sugiyama K, Kaiho Y, Watanabe T, Zhang S, Sugawara Y, Tsuji I. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6.