
コーヒーは、多くの人にとって毎日の習慣となっている飲み物です。しかし、「高血圧の人はコーヒーを控えたほうがいいの?」「飲みすぎると危険?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、コーヒーが血圧に与える影響や医学的な根拠、安心して楽しむための適量、さらに高血圧の方におすすめの食材の組み合わせや生活習慣の見直しまで、専門的な知見に基づいて詳しくご説明します。
コーヒーが血圧に与える影響
コーヒーのカフェインは交感神経を刺激し、コーヒーカップ1~2杯を飲むと一時的に10〜15mmHg程度の血圧上昇を引き起こすことがあります。空腹時やカフェインに慣れていない人では顕著になる傾向がありますが、多くの場合1〜2時間で元に戻ります。
ただし、この影響はあくまで「一時的なもの」であり、日常的にコーヒーを飲んでいる人では血圧の上昇がほとんど見られないという報告もあります。つまり、コーヒーの血圧への影響は個人差が大きく、摂取状況によって異なるという点を理解しておくことが重要です。
高血圧とカフェインの関係
高血圧とカフェインの関係については、さまざまな研究が行われています。
例えば、欧米の研究では、1日3 〜5杯のコーヒー摂取は心血管疾患のリスクを減らす可能性があると報告されているなど、近年では、「適量のコーヒー摂取は血圧に悪影響を与えない」もしくはとする研究も増えてきました。
一方で、カフェインを摂りすぎると、血管が収縮したり心拍数が増えたりして、体に負担がかかりやすくなる場合も考えられます。
特に注意が必要なのは、エナジードリンクなどカフェインを多く含む飲みものとの併用です。エナジードリンクは種類によってカフェインの量が大きく異なるため、知らずに飲みすぎてしまうと、1日の摂取してもよい適量の目安を超えてしまう可能性があります。
1日のカフェイン摂取量に気をつけながら、安全に楽しむことが大切です。(※1)
高血圧の人はコーヒーを飲んでも大丈夫?

「コーヒー=絶対にNG」というわけではなく、飲み方や量を工夫することで、無理なく生活に取り入れることが可能です。ここでは、コーヒーが血圧に及ぼす影響を正しく理解し、安心して楽しむための知識についてお伝えします。
コーヒーを飲むときに気をつけるポイント
高血圧の人がコーヒーを楽しむ際は、以下のような点に注意することで、血圧への影響を最小限に抑えることができます。
- 空腹時を避ける:空腹時のカフェインは血圧が上がりやすいので、朝食後などに飲むのが理想的
- 飲む時間帯を選ぶ:夕方以降のカフェイン摂取は、睡眠の質を下げ、間接的に血圧を上昇させる可能性があるため注意
- 砂糖やクリームは控えめに:甘いコーヒーやミルク入りコーヒーはカロリー・脂質・糖質の摂りすぎにつながる
- エナジードリンクとの併用を避ける:カフェイン含有量が増えすぎると心拍や血圧に影響を及ぼす
高血圧の方は300mg(2〜3杯)を上限の目安にし、すでに降圧剤を服用している人や、カフェインに敏感な人は、1日1〜2杯までに抑えるのがベター。
また、「カフェインが血圧に悪いのでは?」と心配する方は、後述するカフェインレスコーヒーの活用もひとつの選択肢です。
適切なタイミングと適量を守り、生活習慣全体とバランスを取りながら飲むことが、高血圧の人にとって重要なポイントと言えるでしょう。
飲み過ぎを避けるコツ
「気づけば1日中コーヒーを飲んでいた…」という方は少なくないかもしれませんが、習慣化された摂取を減らすには、ちょっとした工夫が効果的で、無理なく自然に飲む量を減らすことができます。また、水分補給の目的であれば、ノンカフェインのハーブティーや白湯を取り入れるのもおすすめです。
- 朝食後と昼食後など、タイミングを決めて飲む
- マグカップを小ぶりのものに変える
- 「香りだけ」楽しむ時間を設ける
- 1杯をゆっくり時間をかけて飲むようにする
カフェインレスコーヒーは高血圧に良い?
「コーヒーは飲みたいけれどカフェインが気になる」という方におすすめなのが、カフェインレスコーヒー(デカフェ)です。最近では、味や香りも本格的な製品が多く登場しており、違和感なく置き換えることができるようになっています。
カフェインレスであれば、血圧を急激に上げる心配が少なく、夜に飲んでも睡眠を妨げにくいというメリットがあります。
さらに、クロロゲン酸などのポリフェノール成分は、カフェインレスでもしっかり摂取できる場合が多く、血管の健康維持にも期待できます。
高血圧の人が安心してコーヒーの風味を楽しむためには、通常のコーヒーとカフェインレスをうまく使い分けるのが理想的です。たとえば、「朝は通常のコーヒー、夕方以降はカフェインレス」といったリズムをつくるのも良いでしょう。
コーヒータイムにおすすめの組み合わせ食材

コーヒーと相性のよい食品の中には、血圧を下げる作用を持つ栄養素を含んでいるものも多く、上手に取り入れることで、コーヒータイムをより健康的に楽しむことができます。
ここでは、1日の生活の中でコーヒーを飲むタイミング別に、高血圧対策としておすすめの食材をご紹介します。
朝のコーヒーに合わせるおすすめ食材
朝のコーヒーは、一日の始まりの活力源でもあります。ただし、空腹時にブラックコーヒーだけを摂ると、カフェインによって血圧が急上昇しやすくなります。そこでおすすめなのが、バナナやナッツ、チョコレートなどの軽い食材と一緒に摂ることです。
- バナナ:カリウムが豊富で、余分なナトリウムを排出し、血圧を下げる作用があります。
- ナッツ類(アーモンド・クルミなど):マグネシウムや不飽和脂肪酸が血管をしなやかに保つ効果が期待できます。
- ダークチョコレート(カカオ70%以上):フラバノールというポリフェノールが含まれており、血圧を安定させる働きがあります。
これらを少量ずつ組み合わせれば、血糖値の急上昇も防ぎつつ、血圧のコントロールに寄与する朝食になります。
間食のコーヒーに合わせるおすすめ食材
仕事や家事の合間の「一息コーヒー」にも、健康意識を持ったおやつを添えることで、血圧への悪影響を避けることができます。ここでのポイントは、食べすぎないことと、栄養価のあるものを選ぶことです。
- ナッツ類:少量でも満腹感があり、塩分無添加のものを選べば血圧にも優しい。
- ダークチョコレート:甘さ控えめでポリフェノールを効率よく摂取できます。
甘い菓子パンやケーキなどと比べて、血糖値や血圧を急激に変動させることなく、穏やかな満足感を得られるのがこれらの食材の魅力です。
昼食・夕食後のコーヒーに合わせるおすすめ食材
食後にコーヒーを楽しむ習慣がある方には、カリウムを多く含むフルーツを取り入れるのが効果的です。
- リンゴ:水溶性食物繊維やポリフェノールが豊富で、腸内環境を整えながら血圧にもよい影響を与えます。
- バナナ:カリウムが豊富で、食後の塩分の排出を助けてくれます。
特に外食などで塩分が多くなりがちな場合には、果物でナトリウム排出を促進することが血圧管理に有効です。食後のコーヒーと共に果物を軽くつまむことで、口直しにもなり、栄養的にもバランスがとれます。
夜のコーヒーは控えめに!眠りと血圧への配慮
夜遅くにコーヒーを飲むと、カフェインの作用で交感神経が刺激され、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりすることがあります。こうした睡眠障害が続くと、血圧が慢性的に高くなる原因にもなり得ます。夜はカフェインレスコーヒーへの切り替えがおすすめです。
高血圧の人がコーヒーよりも控えるべきもの
コーヒーは適量であればあまり心配がないことはわかったけれど、高血圧の人が他に控えるべきものとして、下記4点を意識しましょう。
- 塩分・・・日本人のほとんどは塩分取りすぎと言われています。減塩調味料を使う、お漬物等塩辛いものは避ける、ラーメン等塩気のあるものはスープは飲まない等、できるところから塩分を減らす努力をしていきましょう。
- お酒・・・禁止ではありませんが、控えめに。目標は男性で日本酒だと1合、ビールだと中瓶1本(500ml)までが目安です。女性だとこの半分程度が目安です。いきなりは難しくても休肝日を作る、1日〇杯までと上限をつくるなどできるところからやってみましょう。
- 喫煙・・・まずは1日に吸う本数を減らし、できれば禁煙までがんばりましょう。
- ストレス・・・睡眠時間を十分にとり、ストレスを溜めないようにしましょう。毎日血圧を測っていると、ストレスの血圧への影響に気づけたりします。
血圧測定を活用して生活習慣の影響をチェックしよう

コーヒーや塩分、アルコールなどの影響は、本人が自覚しにくいことも多く、日々の血圧を記録することで初めて見えてくるパターンがあります。血圧測定の活用法と、生活習慣との関係を把握するための具体的な方法を解説します。
家庭血圧を測定するメリット
血圧はさまざまな要因で変動するため、一度の測定では正確な状態を把握しにくいものです。そのため、病院だけでなく、自宅でも継続的に血圧を測る「家庭血圧」の測定が推奨されています。
家庭血圧には次のようなメリットがあります:
- 食事・睡眠・ストレス等の生活習慣と血圧の関係に気が付ける
- 血圧を十分コントロールできているかどうか、治療効果や季節の変化によるコントロール悪化がないか確認できる
まずは1か月、朝・晩の2回を基本に、毎日同じ時間に測ってみましょう。どんなときに血圧が高くなるのか、人によって個人差もありますが、1か月測ると自分の血圧の特徴が少しつかめてくると思います。
血圧記録で気づく食習慣と体の反応
コーヒーや塩分、アルコールなどを摂取した日と、その翌朝の血圧を記録してみると、「特定の飲食が血圧に影響している」という気づきを得られることがあります。
たとえば、
- 夜遅くにカフェインを摂った翌朝に血圧が高い
- 塩分の多い食事をした翌日は血圧が上がる
- 果物や野菜を多く摂った翌日は血圧が安定している
といったパターンが現れやすくなり、 ます。このようにこれを日々記録することで、自分に合った食事スタイルを見つけ出す手がかりになります。
血圧アプリやノートを使って、毎日の血圧とその前日の食事内容を簡単にメモしておくことが推奨されます。
中でもおすすめなのが、WelbyマイカルテというPHR(Personal Health Record)アプリです。血圧だけでなく、体重・服薬・食事・運動など、日常の健康データを一括で管理できるため、自分の体の変化を客観的に振り返りやすくなります。
さらに、グラフやカレンダー形式で記録を可視化できるため、変化の傾向がひと目でわかり、医師との共有もスムーズです。アプリはスマートフォンから無料でダウンロード可能で、毎日の記録を簡単に続けたい方にとって、非常に実用的なツールとなっています。
詳しくは公式サイト『Welbyマイカルテ』をご覧ください。

◆まとめ
コーヒーは高血圧の方であっても、適量であれば大きな心配はありません。下記のポイントを意識して、健康的なコーヒータイムをお楽しみください。
- 安心なのはコーヒーで1日コーヒーカップ2~3杯まで
- 夜に飲みたい場合にはカフェインレスがおすすめ(眠りが浅くならないように)
- 砂糖やミルクを入れる方はカロリーに注意
- 一時的な血圧上昇はあるので、毎日の血圧測定前に飲むことは控えましょう
- コーヒーよりも控えるべきものは、塩分・食べ過ぎ・お酒・タバコ・寒さ・ストレス
- 日々の血圧測定でご自身の血圧と生活習慣との関係を確認してみましょう
※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:農林水産省 カフェインの過剰摂取についてhttps://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html#caffeine%20effect