
執筆:看護師 図司真澄
肥満と高血圧は深く関わっており、放置すると心臓病や脳卒中など大きな病気のリスクも。
そこで「太ると血圧が上がるのはなぜ?」という疑問について、わかりやすく解説します。
さらに、食事や運動など日常生活で実践できる改善法も紹介していきますので最後までお付き合いください。


肥満と高血圧の関係とメカニズム
肥満の中でも、特にお腹まわりに脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」は、血圧を上げやすいことが知られています。
そこで以下、内臓脂肪型肥満をベースに肥満と高血圧の関連性とメカニズムを見ていきましょう。
肥満が血圧に与える影響
肥満になると体のサイズが大きくなる分、体内を循環する血液の量も増えます。
血液が増えると、それを全身に送り出すために心臓はより多くの血液を拍出しなければならず、血圧が上がりやすくなることに。
さらに、お腹にたまった内臓脂肪は「血圧を上げる物質」を作り出し、血管を縮めたり、体に水分や塩分をため込みやすくしたりします。
また、肥満の人ではインスリン抵抗性(インスリンというホルモンが効きにくくなる状態)が生じ、神経の働きが過剰になって血圧が上がったり、腎臓が塩分をため込みやすくなったりします。
まとめると、肥満は心臓や血管に負担をかけるだけでなく、内臓脂肪やホルモンの働きによって血圧を上げる原因になるのです。
関連データで見るリスク
日本には約4300万人もの高血圧の人がいるといわれています。そのうち3人に1人は治療を受けておらず、治療中でも約半数は血圧が十分に下がっていません。※1
高血圧になると、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気になるリスクが高まるため、体重コントロールが重要です。
体重をコントロールすることが血圧管理の第一歩であり、将来の健康リスクを減らす鍵になるのです。
痩せると血圧は下がる?体重減少の効果

肥満が高血圧につながるのは理解できても、実際にどれくらい体重を減らせばよいのか、多くの人が気になる点です。
何kg減量で血圧は下がる?
実際、研究では体重を1kg減らすごとに血圧が1mmHgほど下がることが分かっています。
わずかな変化に見えるかもしれませんが、収縮期血圧(上の血圧)が5mmHg下がるだけでも、脳卒中や心筋梗塞などのリスクは下がると報告されています。
加えて、日本人で肥満の方の場合、体重の3%を減らすだけで降圧効果が確認されています。
例えば80kgの人であれば、わずか2.4kgの減量で血圧改善につながる可能性があるのです。
リバウンドが血圧に与える影響
ただし、注意が必要なのはリバウンドです。短期間で急激に体重を落とすと反動で元に戻りやすく、そのたびに血圧も乱高下します。
そのため、食事と運動をバランスよく組み合わせ、無理のないペースで続けられる習慣を作ることが重要です。
血圧を下げるための食事法
血圧の改善には、まず食生活を整えることが欠かせません。特に塩分の摂りすぎは血圧を押し上げる大きな原因で、日本人は平均して1日10g前後の塩分を摂りいるといわれます。
本来はその半分程度の1日6g未満が目安とされているので、多くの人が塩分を摂りすぎていることになります。
調味料の使い方や外食の選び方を少し工夫するだけでも、無理なく減塩は可能です。
減塩の工夫とポイント
しょうゆやソースを「かける」より「つける」、みそ汁の汁を半分残す、加工食品の表示を確認して減塩タイプを選ぶなど、少しの工夫で塩分摂取は減らせます。
さらに、出汁やスパイスを上手に使えば、塩分を減らしても美味しく食べられます。
昆布や干し椎茸でしっかり出汁を取る、胡椒や生姜、ニンニクで風味をつけるなどの方法があるため、ぜひ実践してみてください。
野菜・果物・食物繊維を増やす
カリウムを多く含む野菜や果物(バナナ、ほうれん草、海藻など)は、余分な塩分を体の外に出すのを助けてくれます。
食物繊維も腸内環境を整え、体重管理や血糖値の安定に役立ち、血圧改善につながります。
野菜は、炒め物や煮物、汁物に加えれば、自然と摂取量が増えるでしょう。
果物は食後のデザートとして取り入れると、手軽で続けやすい方法になります。
DASH食・地中海食の活用
欧米で注目されているのが、DASH食や地中海食です。野菜、果物、魚、低脂肪乳製品を中心にした食事や、オリーブオイルやナッツを取り入れるスタイルは血圧を下げる効果が報告されています。
DASH食は「高血圧を止めるための食事法」という意味で、塩分を控えつつ、カリウム、マグネシウム、カルシウムを多く含む食品を重視した食事パターンです。
さらに、日本の食事にも取り入れやすい内容で、魚中心の和食と共通点が多いのも特徴になります。
【関連記事】高血圧を改善する食事法!注意すべき食材と栄養のポイント!
アルコール・糖質との付き合い方
お酒は血圧を上げる要因になります。目安としては、日本酒1合、ビール中瓶1本程度が適量です。
また糖質のとりすぎも肥満につながるため、主食を玄米や全粒粉パンに変える、甘い飲み物を控えるなどの工夫が効果的です。
清涼飲料水やお菓子に含まれる糖分は思っている以上に多いため、普段の摂取量を一度見直すことが望ましいでしょう。
【関連記事】血圧とアルコールの正しい関係|高血圧リスクと飲酒の適量とは
血圧を下げるための運動法

運動は血圧を下げるのに非常に効果的です。特に有酸素運動と筋肉を鍛える運動を組み合わせると効果が高いとされています。
大切なのは「きつい運動を一気にする」のではなく「無理なく続けられること」です。
そこで以下、血圧を下げるために有効な運動の方法を紹介します。
有酸素運動の効果と実践法
ウォーキングやジョギング、自転車、水泳などの有酸素運動は、血管を柔らかくし、血圧を下げやすくします。目安は1日30分を週5日、合計150分程度。
例えば「通勤で1駅歩く」「夕食後にゆっくり散歩する」など、日常の中に組み込むのがおすすめです。
最初は10分程度から始めて、徐々に時間を延ばしていく方法が続けやすいでしょう。
運動強度は「少しきついけれど、会話ができる程度」が適切です。息が切れるほど激しい運動は、かえって血圧を上げてしまう可能性があるため注意すべき点といえます。
筋トレ(レジスタンス運動)の役割
筋肉を増やすと基礎代謝が上がり、太りにくい体になります。スクワットや腕立て伏せなど、自宅でできる簡単な運動で十分です。
以前は血圧が上がるからと敬遠されていましたが、現在では安全に取り入れられることが確認されており、適度な筋トレはむしろ血圧改善に有効といえます。
日常生活で取り入れる「ながら運動」
「運動の時間をとるのは大変」という人には、ながら運動が向いています。エレベーターではなく階段を使う、テレビを見ながらストレッチをするなど、生活の一部として体を動かす工夫を積み重ねれば、自然と運動量は増やせます。
掃除や庭仕事、洗車といった家事も立派な運動になります。掃除機かけ、庭仕事、洗車なども有酸素運動に含まれるため、普段の活動を見直してみると運動機会は意外と多いものです。
【関連記事】運動で血圧を下げる~おすすめの有酸素運動と控えるべき運動~
まとめ|肥満対策が高血圧予防の近道
肥満と高血圧は切り離せない関係にありますが、食事や運動の工夫で改善することができます。
塩分を控え、野菜や果物を増やす、体重を少し減らす、毎日少し歩く。身近な工夫の積み重ねが、体重を減らし血圧を下げることにつながります。
重要なのは、すべてを一度に完璧にするのではなく、減塩や運動などできることから少しずつ始めること。
また、血圧の管理は一人で抱え込まず、家族や医師と相談しながら進めることも大切です。
健康な体重を維持し、バランスの取れた食事と適度な運動を続けることで、血圧と上手に付き合いながら、いきいきとした毎日を送りましょう。
↓『Welbyマイカルテ』ダウンロードはこちらから ↓


※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」


