
執筆:看護師 図司真澄
健康診断や家庭用血圧計で、「血圧」と「心拍数/脈拍数」の数字を見る機会があるかと思います。
しかし「血圧が高いと脈も速くなるの?」「心拍数と脈拍数って違うの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、血圧と心拍数の関係をわかりやすく解説し、日常で気をつけたいポイントまでわかりやすく整理します。


血圧と心拍数(脈拍)の違いをやさしく理解しよう
健康診断などで「血圧」と「心拍数/脈拍数」を一緒に見ることがありますが、この2つが何を示しているのかを正しく理解できている人は意外と少ないかもしれません。
ここでは、血圧と心拍数の基本的な違いを、解説していきます。
血圧とは何か(上と下の血圧の意味)
血圧とは、血液が動脈の内側の壁へ与える圧力のことです。血圧には「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」があります。
上の血圧は心臓がぎゅっと収縮して血液を押し出すときの圧力、下の血圧は心臓が休んで血液をためているときの圧力です。
実は、血圧は「心拍出量 × 末梢血管抵抗」によって決まります。
・心拍出量:心臓が1分間に送り出す血液の量
・末梢血管抵抗:血液が全身を流れるときに血管がつくる“流れにくさ”
この2つのどちらか、あるいは両方が増えると血圧は高くなります。
たとえば、動脈硬化が進むと血管の壁が硬くなり血液の通り道が狭くなるため、血液の流れに抵抗が生じます。
すると、心臓は同じ量の血液を送り出すためにより強い力を必要とし、 結果として血圧が高くなります。
【関連記事】高血圧が引き起こす動脈硬化とは?仕組みとリスク・予防法を徹底解説
心拍数・脈拍数とは何か
心拍数とは、心臓が1分間に拍動する回数のことです。
健康な成人の心拍数は、安静時で1分間に60〜100回が目安となります。
一方、脈拍数とは心臓が拍動するたびに動脈に伝わる拍動数を指し、測定は手首などの動脈です。
正常であれば、心拍数と脈拍数はほぼ同じ値を示します。
しかし、不整脈があると心臓の拍動のリズムが不規則になり、 心臓に十分に血液がたまらないまま次の拍動が起こることがあります。
そうすると、心臓から一回で送り出せる血液の量が少なくなり、手首などで脈として感じられないことがあるのです。このようなとき、心拍数と脈拍数に差が生じます。
血圧が高いからといって心拍数も上がるわけではない
血圧と心拍数はどちらも体の重要な指標ですが、「血圧が高い=心拍数も高い」というわけではありません。
血圧は主に血管の抵抗や血液量によって変化し、心拍数は心臓の拍動リズムを示すものです。そのため、これらは必ずしも連動しません。
ただし、高血圧の方で普段から心拍数が高い方は注意が必要です。
ある研究では、高血圧の人の中で心拍数が高い人ほど死亡率が高いことが明らかになりました。(※1)心臓や血管の病気が原因となる死亡率や、心筋梗塞や狭心症になる人の割合が高いことも明らかになっています。
そのため血圧だけを見て判断するのではなく、心拍数/脈拍数も合わせて確認することが、心臓や血管の病気のリスクをより正確に把握する鍵になります。
心拍数が高い・低いときに考えられる原因と注意点

「最近ドキドキする」「脈が遅い気がする」──そんな変化は、心臓や自律神経のバランスの乱れが関係しているかもしれません。
ここでは、心拍数の変化を起こす主な要因と、注意すべきサインを具体的に整理します。
心拍数が高いときに考えられる原因(ストレス・甲状腺機能亢進症・不整脈など)
心拍数が100回/分以上の状態を頻脈(ひんみゃく)といいます。
安静にしているのに心拍数が高い場合、代表的な原因は以下のような場合です。
- ストレス・不安・緊張:交感神経が優位になり、一時的に心拍数が上がる
- 脱水:体の血液量が少ないため、心臓の拍動を速めて全身に血液を行き渡らせようとする
- 貧血:血液中の酸素が少ないため、全身に酸素を届けようと拍動が増える
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):甲状腺ホルモンの過剰に分泌されると、心拍数が増えることがある
- 不整脈(心房細動など):心臓のリズムが乱れ、効率よく血液を送れなくなることがある
また、カフェインやタバコ(ニコチン)などでも一時的に心拍数が上がることがあります。
心拍数が低いときに考えられる原因
一方で、安静時に心拍数が少ない場合もあります。心拍数が50回未満の状態を徐脈(じょみゃく)といいます。
徐脈になると、息切れやめまいを起こすことがあります。
- 洞不全症候群や房室ブロック:
・心臓のリズムをつくる、または電気信号を伝える働きに異常が起こる病気
・脈が極端に遅くなったり、一時的に止まったりすることがあり、めまい・倦怠感・失神を起こすことがある - 甲状腺機能低下症:
・甲状腺ホルモンの分泌が少なくなると、心拍数も少なくなる
・体のだるさ、寒がり、むくみなどを伴う場合は、この病気が隠れていることもある - 加齢:
・加齢に伴って、心臓のリズムを調整する働きが少しずつ衰えるため、拍動がゆっくりになることがある - 薬の影響:
・高血圧や不整脈の治療薬で脈が遅くなることがある
・薬の影響が疑われる場合は、自己判断で中止せず医師に相談しましょう
頻脈・徐脈が続くときのリスクと受診の目安
一時的な変化であれば問題ありませんが、次のような状態が続くときは注意が必要です。
- 安静時に心拍数が100回以上続く(頻脈)
- 安静時に50回未満でめまい・息切れ・倦怠感を伴う(徐脈)
- 脈が飛ぶ、リズムが乱れる
- 胸の圧迫感や動悸、失神を伴う
これらの症状がある場合、検査で原因を調べる必要があります。
心拍数の異常は、心臓の異常や甲状腺の病気など、重大な疾患のサインであることもあるため、放置せず医療機関を受診しましょう。
血圧と心拍数を整える生活習慣:今日からできる予防と改善

血圧と心拍数は、どちらも心臓や血管の健康に深く関わっています。
特に、高血圧に加えて心拍数が高い状態が続くと、心臓にかかる負担が大きくなり、心臓病や脳卒中のリスクが高まることがわかっています。
生活習慣を見直したからといって、すぐに心拍数が落ち着くとは限りません。それでも、毎日の過ごし方を変えることで、血圧を安定させ、心臓や血管の負担を減らすことができます。
ここでは、今日から始められる生活の工夫を紹介します。
睡眠の質を整える
寝不足や不規則な生活が続くと、体が緊張モード(交感神経優位)になり、血圧も心拍数も上がりやすくなります。できるだけ就寝と起床の時間を一定に保つことが大切です。
寝る前はスマホやカフェインを控え、深呼吸や軽いストレッチでリラックスしてみましょう。
バランスの取れた食事
塩分を摂りすぎると血圧が上がり、脂っこい食事は動脈硬化を進めます。
また、コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェイン、タバコのニコチンも、心拍数を上げる原因になります。
野菜・魚・豆類を中心にした食事を心がけ、塩分は控えめにしましょう。「少し薄味に慣れる」だけでも、心臓や血管への負担がぐっと軽くなります。
軽い有酸素運動の習慣化
ウォーキングやジョギングなど息が弾む程度の運動を習慣にすると、血管がしなやかになり、血圧も安定しやすくなります。
目安は1日20〜30分、週3〜5回。 無理せず「気持ちいい」と思える範囲で続けることが大切です。
ストレスマネジメントとリラックス法
強いストレスが続くと、体がずっと緊張している状態になり、血圧や心拍数が上がりやすくなります。 完全にストレスをなくすことは難しいですが、「休む時間をつくる」ことを意識してみましょう。
深呼吸や瞑想、好きな音楽を聴く、短い昼寝をするなど、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。
【関連記事】ストレスで高血圧に?意外な関係性と改善ポイントを解説
家庭用血圧計・スマートウォッチの活用法
家庭用の血圧計やスマートウォッチを使えば、血圧や心拍数の変化を毎日簡単に確認できます。
朝や夜など、同じ時間に測る習慣をつけると、自分のいつもの数値がわかり、ちょっとした変化にも気づけるようになります。
異常が続くときは、記録を持って医療機関で相談すると、診察がスムーズです。 「知ること」も、立派な健康管理の一歩です。
【関連記事】【2025年版】血圧が測れるスマートウォッチ|正確さ・機能性で選ぶ!
まとめ:血圧と心拍数の違いを理解して健康を守ろう
血圧が高いからといって、必ずしも心拍数も高くなるわけではありません。
しかし、高血圧の方は、心拍数が高い状態が続くと心疾患のリスクが高まることがわかっています。そのため、血圧だけでなく、心拍数の変化にも意識を向けることが大切です。
毎日のちょっとした測定や、食事・睡眠の工夫が、心臓を守る大きな一歩です。数字を気にするだけでなく、「なぜ変化したのか?」を感じ取ることが、健康を長く保つコツになります。
少しでも違和感を覚えたら、無理せず医療機関に相談してみましょう。血圧と心拍数を意識する習慣が、あなたのこれからの健康を支える力になります。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:Gillman MW, Kannel WB, Belanger A, D’Agostino RB.
Influence of heart rate on mortality among persons with hypertension: The Framingham Study.Am Heart J. 1993;125(4):1148–1154.


