
高血圧に悩む方の中には、突然の「めまい」や「ふらつき」を経験する方も少なくありません。本記事では、高血圧とめまいの関係、症状が起こる原因、正しい対処法や予防法まで、わかりやすく解説します。

高血圧でめまいやふらつきはなぜ起きる?
高血圧にともなう「めまい」や「ふらつき」は、日常生活に不安をもたらす症状のひとつです。
特に治療中の方は「薬の影響では?」と心配されることも多いでしょう。まずは、そのメカニズムについて確認してみましょう。
高血圧による脳血流の変化が影響している
高血圧になると、脳の血管にかかる圧力が常に高くなり、その結果、血管の壁が徐々に傷つき、血流がスムーズに行き渡らなくなる可能性があります。この状態では、脳に十分な酸素や栄養が届かなくなり、ふらつきや軽いめまいを感じやすくなることも。
また、高血圧の人が急に立ち上がると、血圧が一時的に低下して脳への血流が不足する「起立性低血圧」が起こるケースも。起立性低血圧はふわっとした感覚や、クラッとくる立ちくらみの原因にもなります。
降圧剤や生活習慣の影響も見逃せない
高血圧の治療で処方される降圧剤は、血圧を下げる効果がある反面、時に「下がりすぎて」しまうことがあります。特に服薬を開始したばかりの時期や、薬の種類を変更・追加した際には注意が必要です。
また、睡眠不足やストレス、過労なども脳への血流を乱す要因で、これらの生活習慣が重なると、ふらつきやめまいといった初期症状が現れることがあります。
血圧がどれくらいの高さでめまいの症状が出るのか
血圧の数値とめまいの関係には個人差がありますが、収縮期血圧(上の血圧)が180mmHg以上になると、脳の血管に急激な圧がかかり、「頭がフワッとする」「視界がぼやける」などの症状が出ることがあります。
さらに、200mmHgを超えるような急激な血圧上昇があると、「高血圧性脳症」と呼ばれる深刻な状態になる可能性もあるため、早期の受診と対応が重要です。
高血圧の状態でめまいや吐き気がある場合に考えられる疾患

めまいや吐き気が高血圧とともに現れた場合、それは単なる一時的な体調不良ではなく、重大な疾患の前兆である可能性もあります。考えられる主な疾患について説明します。
高血圧性脳症の可能性
高血圧性脳症とは、急激な血圧上昇により脳の血管が障害を受け、脳の浮腫(むくみ)などを引き起こす病気です。症状としては、強いめまい、吐き気、視覚障害、意識障害などが見られます。
特に、収縮期血圧(上の血圧)が200mmHgを超えるような状況では発症リスクが高まります。
この状態は医療的緊急性が高く、早急な血圧管理と治療が必要です。症状に気づいた時点で直ちに医療機関を受診することが求められます。
脳梗塞や脳出血といった緊急疾患のリスク
高血圧が続くと、脳の血管が破れやすくなったり、詰まりやすくなったりすることも。これにより、脳出血や脳梗塞が発生することがあり、これらの疾患でもめまいや吐き気が出現します。
脳梗塞では、「回転性めまい」と呼ばれる周囲がぐるぐる回るような感覚がみられることもあり、歩行困難、吐き気、手足のしびれなどを伴うことも多いです。時間が経過するごとに後遺症のリスクが増すため、迅速な対応が不可欠です。
耳鼻科系疾患や内耳の障害によるめまい
めまいの原因は脳だけではありません。内耳にある平衡感覚をつかさどる器官に影響があると、「浮動性めまい」や「回転性めまい」が起こることがあります。これらのめまいは、高血圧とは無関係に起きることもありますが、高血圧が内耳の血流に影響を与えることで起きる可能性も考えられます。さらには耳鳴りや耳の閉塞感、難聴といった症状を伴うこともあり、耳鼻咽喉科での精密検査が推奨されます。
めまいやふらつきを感じたときの正しい対処法
突然のめまいやふらつきは非常に不安になりますが、冷静に対処することで重症化を防ぐことができます。ここでは、応急処置の方法を具体的にご紹介します。
まずは座って安静に!急な動きは避ける
めまいやふらつきを感じたら、まずは無理に動かず、座るか横になるなどして安静を保ちましょう。特に外出先では、交通事故などのリスクもあるため、安全な場所に移動してしゃがむことが大切です。
立っている状態で倒れてしまうと、頭を打つなどの二次被害が起きる可能性があります。自宅でも転倒防止のために、椅子に腰かけるか、横になって体を休めてください。
水分補給やカフェインの取り方に注意
脱水は血圧を不安定にし、めまいを引き起こす要因にもなります。吐き気がない場合は、常温の水や経口補水液で少しずつ水分を補いましょう。
カフェインの摂取に関しては注意が必要です。一時的に血圧が上がる可能性があるため、普段から高血圧で治療を受けている方は、医師と相談しながら摂取量を調整しましょう。
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異変を感じたらすぐにかかりつけ医へ
安静にしても症状が改善しない、またはめまいに加えて激しい頭痛やろれつが回らない、意識がぼんやりするなどの異常があれば、迷わず医療機関を受診しましょう。
特に高血圧性脳症や脳卒中の可能性がある場合は、症状が出てからの時間との勝負になります。ためらわずに救急車を呼ぶ判断も必要です。
高血圧でめまいがした場合は何科に行けばよい?

めまいの原因は一つではなく、多岐にわたります。特に高血圧を背景にしためまいは、専門的な診断が求められる場合も多いため、症状の種類やタイミングによって受診先を適切に選ぶことが重要です。
病院受診は「突然」「継続する」「激しい」のタイミング
めまいが以下のようなタイミングで現れた場合には、早急な医療機関の受診をおすすめします。
- 突然始まり、強い回転性のめまいや吐き気を伴う場合
- めまいが繰り返し起こる、あるいは1日以上続く場合
- 激しい頭痛や手足のしびれ、ろれつが回らないなどの症状がある場合
このような症状は、脳梗塞や高血圧性脳症など、命に関わる疾患の前触れである可能性があります。
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高血圧と関係ある症状もある
高血圧に起因するめまいは、降圧薬の副作用や血圧の変動、あるいは血管障害などが関係していることが多いです。そのため、まずかかりつけの内科や循環器内科に相談するのが適切です。
また、耳の症状(耳鳴り、難聴、耳の閉塞感など)を伴う場合は、内耳の病気が関与している可能性もあるため、耳鼻咽喉科の受診が勧められます。
内科・循環器内科・耳鼻科の使い分け
以下に、症状別に受診すべき診療科をまとめます。
- 内科・循環器内科:高血圧の治療中で、血圧変動や服薬に関連しためまいがある場合
- 耳鼻咽喉科:耳の違和感、耳鳴り、難聴、耳の閉塞感などを伴うめまいの場合
- 脳神経内科・脳神経外科:激しい頭痛、手足のしびれ・動かしにくさ、言葉が出にくいなどの症状を伴う場合
自分の症状がどの診療科に該当するか迷った場合は、まず内科で相談し、必要に応じて専門科への紹介を受けるのも一つの手です。
高血圧によるめまいを予防する生活習慣のポイント

高血圧が原因で起こるめまいやふらつきを予防するには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。血圧を安定させることで、こうした症状も起きにくくなります。
食事の塩分・脂質を見直す
高血圧予防・改善の基本は「減塩」です。日本人の平均塩分摂取量は依然として高く、1日あたり6g未満が推奨されているにも関わらず、10gを超えるケースも散見されます。味付けは薄味を心がけ、醤油や味噌、加工食品の使用量にも注意しましょう。
また、動物性脂肪の多い食品やトランス脂肪酸を含むスナック菓子・揚げ物なども動脈硬化を促進し、血管の柔軟性を失わせ、血圧に影響を及ぼすことが知られています。代わりに、野菜・海藻・きのこ類・大豆製品などを積極的に取り入れましょう。
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ストレス・睡眠不足を避ける工夫
ストレスや睡眠不足は交感神経を刺激し、血圧を上昇させる原因になります。特に慢性的なストレスは、血圧のコントロールを難しくさせ、自律神経のバランスが崩れることでめまいやふらつきのリスクを高めることにもつながります。
リラックスする時間を意識的に設けたり、軽い運動(ウォーキングやストレッチなど)で気分転換を図ることも効果的です。睡眠は毎日6〜8時間を目安に、一定の時間に寝起きするリズムを保つよう心がけましょう。
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血圧の定期測定と記録のすすめ
血圧は日内変動があるため、1回の測定だけでは状態を正しく把握できません。朝起きた直後(排尿後・食前)と、夜寝る前の1日2回、できれば毎日測定を続けることが理想です。
測定結果は記録しておきましょう。特に、めまいやふらつきを感じたときの血圧も一緒にメモしておくと、受診時に医師に相談しやすく、医師が診断する際に役立ちます。
まとめ
高血圧の方が経験するめまいやふらつきには、さまざまな原因が考えられます。多くの場合、降圧剤の影響や急激な血圧の変動、起立時の血流低下が関与していますが、中には高血圧性脳症や脳梗塞など、早急な対応が必要な疾患が隠れていることもあります。
めまいを感じたときは、まずは安静にして体を休め、水分補給などの応急処置を行うことが大切です。そして、安静にしても症状が改善しない場合、症状が強かったり長引く場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
また、日々の生活習慣の見直し、特に塩分の摂取制限やストレス管理、定期的な血圧測定は、高血圧のコントロールとめまいの予防に直結します。めまいを「一時的な不調」と軽視せず、体からのサインとして捉えることが、健康を守る第一歩となるでしょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。