
執筆:看護師 図司真澄
醤油は、日本の食文化の歴史とともに育まれてきた調味料です。
江戸時代に関東で広まった濃口醤油、関西を中心に使われてきた淡口(うすくち)醤油など、地域ごとに味や使い方は異なります。
和食は健康的なイメージがありますが、醤油は取り入れ方によっては塩分をとりすぎてしまうため注意が必要です。
この記事では、身近な醤油大さじ1の塩分量を起点に、種類の違いや無理なく続けられる減塩の工夫をわかりやすく解説します。


醤油大さじ1に含まれる塩分量とは
健康診断で血圧が高く、塩分の摂りすぎを指摘されても、具体的に何を減らせばよいのか迷うことはありませんか。
実は、日常的に使う醤油の塩分量を知ることが、無理のない減塩への第一歩になります。
醤油大さじ1・小さじ1の塩分量
濃口醤油の塩分濃度は商品によって差がありますが、おおむね15%〜17%程度とされています。大さじ、小さじそれぞれ1杯の塩分量は下記です。
・大さじ1杯(約18g)あたりの塩分量:2.7g〜3.1g
・小さじ1杯(約6g)あたりの塩分量:0.9g〜1.0g
このように、見た目には少量に感じる醤油でも、大さじ1杯で1日の塩分摂取量のかなりの割合を占めることが分かります。煮物や炒め物で大さじ1杯を使い、さらに味を調えるために追加すると、塩分は確実に積み重なっていきます。
家庭料理では計量せずに目分量で使うことも多いため、知らないうちに想定以上の塩分を摂取してしまうケースは珍しくありません。
塩分量はどのくらい多い?1日の目安量と比較
成人の1日の食塩摂取目標量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされています。濃口醤油を大さじ1杯使うだけで、この目標量の約3割〜4割に達する計算です。
高血圧の場合は、6.0g未満が減塩目標とされているため、さらに塩分に注意する必要があります(※1)。
和食は野菜や魚が多く、健康的なイメージがありますが、醤油や味噌といった調味料の使い方によっては、塩分をとりすぎてしまう可能性があります。特に、下味・調理中・仕上げ・つけ醤油と、複数の場面で醤油を使うと、1食あたりの塩分量は想像以上に増えがちです。
なお、淡口(うすくち)醤油は色や風味がやさしいため塩分が少ないと思われがちですが、一般的には塩分濃度が約18%と、濃口醤油より高い点にも注意が必要です。こうした違いを理解したうえで、使う量や使い方を工夫することが、無理のない減塩につながります。
濃口醤油と淡口(うすくち)醤油の塩分の違い

濃口醤油と淡口(うすくち)醤油は、見た目や味の印象だけでなく、製法や成り立ちにも違いがあります。
塩分量を正しく理解するために、こうした背景も知っておきましょう。
濃口醤油の塩分量と特徴
濃口醤油は、日本で最も一般的に使われている醤油で、大豆・小麦・塩・水を原料とし、麹菌による発酵・熟成を経て造られます。発酵と熟成の過程で、うま味や香り、色がしっかりと形成されるのが特徴です。
塩分濃度は商品によって差がありますが、おおむね15%〜17%程度とされています。発酵によって生まれるアミノ酸や香り成分が豊富なため、比較的少量でも味に満足感を得やすく、使い方次第では使用量を抑えやすいという側面があります。
一方で、煮物や炒め物、下味など複数の工程で使うと、無意識のうちに量が増えがちです。濃口醤油は「万能で使いやすい」からこそ、計量や使う回数を意識することが重要になります。
淡口(うすくち)醤油の塩分量と誤解されやすいポイント
淡口(うすくち)醤油は、関西を中心に発展してきた醤油で、料理の色合いを淡く仕上げる目的で使われてきました。濃口醤油と同じ原料を使用しますが、製法や設計思想には違いがあります。
淡口醤油は、熟成期間が比較的短く、色が濃くならないように調整されている点が特徴です。また、発酵の進み具合や保存性を考慮し、塩分濃度はおおむね18%前後と、濃口醤油より高めに設計されています。
そのため、見た目や名前の印象とは異なり、淡口醤油は「塩分が少ない醤油」ではありません。色を抑えながら少量で味を決めるための醤油であり、濃口醤油と同じ感覚で使うと、結果的に塩分をとりすぎてしまう可能性があります。
なお、「薄口(うすくち)醤油」と「淡口(うすくち)醤油」は呼び方が違うだけで、同じ種類の醤油を指します。一方、一般的に使われる濃口醤油とは、味や見た目だけでなく、塩分設計や役割に明確な違いがあります。
- 濃口醤油
塩分濃度は約15〜17%
発酵・熟成によるうま味と香りが強く、少量でも味が決まりやすいのが特徴 - 淡口(薄口)醤油
塩分濃度は約18%前後と、濃口より高め
料理の色を薄く仕上げる目的で使われ、塩分が少ないわけではありません
名前や色の印象から「薄口=塩分が少ない」と誤解されがちですが、実際は“色を薄く仕上げるための醤油”であり、減塩用ではない点に注意が必要です。
濃口・淡口それぞれの役割を理解し、使う量を意識することが、無理のない減塩につながります。
減塩醤油の塩分量と正しい考え方
減塩を意識し始めると、「減塩醤油に替えれば安心なのでは」と考える人は多いかもしれません。
実際、減塩醤油は上手に使えば役立つ調味料ですが、少し注意しておきたいポイントもあります。
減塩醤油の塩分はどれくらい減っている?
「減塩」と表示されている醤油は、対照となる通常の醤油と比べて、ナトリウムの量が100gあたり120mg以上少なくなっていることが条件とされています。
ちなみに、食塩相当量とナトリウム(Na)量は同じように思われがちです。
食塩相当量は、ナトリウム(g)×2.54=食塩(g)と換算されます。
さらに、醤油の場合はそれだけでなく、同じ種類(濃口や淡口など)の標準的な醤油と比べて、塩分の低減割合が20%以上であることも必要です。この2つの条件を満たして、はじめて「減塩」と表示できます(※2)。
一方で、「うすあじ」「あっさり」といった言葉は、塩分が少ないことを示しているわけではありません。味の印象を表しているだけの場合もあるため、減塩を意識するなら、栄養成分表示の「食塩相当量」を確認することが重要です。
減塩醤油は、同じ量を使ったときに塩分を抑えやすくなる調味料、と理解すると分かりやすいでしょう。
「減塩醤油は意味ない」と言われる理由
減塩醤油について、「あまり意味がない」と感じる人がいるのは、使い方が原因になっていることが少なくありません。
減塩醤油は、通常の醤油より塩味がやさしく感じられる場合があります。そのため、「少し薄い」と感じて量を多く使ってしまうと、結果的に摂る塩分があまり変わらなくなることがあります。
また、塩分を減らすと食品の保存性が下がることもあります。減塩醤油は、通常の醤油より賞味期限が短かったり、開封後の保存に気を配る必要があったりする点にも注意が必要です。
最近では、技術の進歩によって「減塩でもおいしい」商品が増えてきましたが、味に満足できず使用量が増えてしまっては、減塩の意味が薄れてしまいます。
減塩醤油は、「使えば安心」という万能なものではありません。量を意識し、だしや香りを生かす工夫と組み合わせることで、はじめて減塩の効果が生きてきます。
醤油の塩分を抑える使い方・減塩のコツ

醤油の塩分を減らすためには、種類を選ぶことだけでなく「どう使うか」が大切です。少しの工夫で、味の満足感を保ちながら塩分を控えることができます。
醤油は「かける」より「つける」で使う
減塩の基本としてよく知られているのが、「かける」よりも「つける」使い方です。料理に直接醤油をかけると、どれくらい使ったのか分かりにくく、無意識のうちに量が増えがちです。
一方、小皿に醤油を入れてつけて食べると、使った量が目で確認でき、自然と使用量を抑えやすくなります。さらに、100円ショップなどで売られている「醤油スプレー」の容器を使うのもおすすめです。霧状に噴射できるため、少量でも全体に行き渡り、かけすぎを防ぎやすくなります。
刺身や冷ややっこ、焼き魚などは、この方法に変えるだけでも塩分を減らしやすくなります。
だしや酢、ポン酢で味にメリハリをつける
塩分を減らしてもおいしく食べるためには、「塩味以外の味」を上手に使うことがポイントです。かつお節や昆布のだし、レモンや酢の酸味、香味野菜の香りを加えると、醤油の量を減らしても満足感が得られやすくなります。
例えば、煮物ではだしをしっかり効かせる、サラダには醤油を少量使って酢や柑橘を足すといった工夫が効果的です。ポン酢も、醤油だけで味付けするより、少ない塩分量でさっぱりとした味に仕上げやすくなります。
醤油麹を使ってうま味を活かす
最近、「腸活」という言葉を耳にする機会が増え、塩麹を料理に取り入れる方も多くなっています。塩麹はよく知られていますが、「醤油麹」をご存じでしょうか。
醤油麹は、醤油に米麹を加えて発酵させた調味料で、うま味とコクが増し、塩味がまろやかに感じられるのが特徴です。実は、醤油麹は自宅でも簡単に作ることができ、減塩を意識した食事にも取り入れやすい調味料として注目されています。
肉や魚の下味に使ったり、炒め物の仕上げに少量加えたりすることで、醤油の使用量を自然に減らすことができます。減塩を意識しつつ、おいしさも大切にしたい人にとって、取り入れやすい工夫の一つといえるでしょう。
まとめ|醤油の塩分量を知って上手に減塩しよう
醤油は和食に欠かせない調味料ですが、大さじ1杯でも意外と多くの塩分を含んでいます。
濃口醤油と淡口(うすくち)醤油では、見た目や味の印象だけでなく、塩分濃度や製法にも違いがあるため、特徴を理解したうえで使うことが大切です。
また、「減塩」と表示された醤油には明確な基準があり、イメージだけで判断せず、栄養成分表示を確認する習慣が減塩への近道になります。減塩醤油は便利な選択肢の一つですが、量を使いすぎてしまえば効果は小さくなってしまいます。
醤油を「かける」より「つける」で使う、だしや酸味を生かす、醤油麹などでうま味を補うといった工夫を取り入れることで、無理なく塩分を抑えることができます。
毎日の食事で少しずつ意識を変え、醤油と上手につき合いながら、健康的な食生活を続けていきましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献:
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
※2:日本高血圧学会「減塩食品の紹介(食塩含有量の少ない食品の紹介)」


