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運動で血圧を下げる 〜高血圧の予防・改善における具体的なポイントを紹介〜

運動で血圧を下げる 〜高血圧の予防・改善における具体的なポイントを紹介〜

日本における高血圧の患者数は約4300万人と推計されており、およそ3人に1人が高血圧であるとされています。(※1)
高血圧は、自覚症状が少ないために、見過ごされがちな病気といわれており、血圧が高い状態を治療せずに放置すると、脳卒中や心疾患などの重大な病気を発症するリスクが約2倍に高まるという研究報告もあるため、注意が必要です。(※2)

高血圧の治療には、血圧を下げる薬(降圧薬)の服用が効果的であることが分かっています。
しかし、高血圧の原因には運動不足や食生活の乱れといった生活習慣も関係しているため、薬だけに頼らず、運動や食事を見直して生活習慣を改善することもとても大切です。

日本の高血圧の治療指針である「高血圧治療ガイドライン2019」において、毎日30分,または週に180分以上の有酸素運動を行うことで、収縮機血圧で4mmHg以上、拡張気血圧で2mmHg以上の降圧の効果があると示されています。

一方で激しすぎる運動は血圧を急激に高くしてしまうことや、高血圧でも血圧コントロールの悪い(自宅の血圧測定で上の血圧で160以上,下の血圧で100以上)方や、脳や心臓等に他の病気がある方や、高齢者で筋肉が衰えている場合には、運動療法は控えた場合が良いことがありますので一定の注意も必要です。

今回は、運動のメカニズムから、トレーニング方法まで具体策をわかりやすく解説します。持病のある方は必ず主治医と相談のうえご活用ください。

高血圧に運動が効果的な理由とは? 

高血圧は遺伝や加齢だけでなく、血管の柔軟性低下や自律神経バランスの乱れといった“生活習慣由来”の要因が大きく関わります。適度な運動は血流量が増加することで血管内皮を刺激し、一酸化窒素(NO)の産生を促すことで、血管をしなやかに保ち末梢抵抗を減少させます。

同時に心肺機能を鍛えることで、ストレス過多で優位になりがちな交感神経を鎮めるため、安静時血圧を穏やかに下げる土台が整います。

高血圧の予防・改善におすすめの運動 

運動とひと言でいっても、降圧効果が得やすいもの・安全管理が欠かせないものなど特徴はさまざまです。ここでは運動の中でも、取り組みやすく、継続しやすいとされているウォーキングなどの有酸素運動や、ヨガやストレッチなどのリラクゼーション系の運動を中心に具体例をご紹介します。
医師の指示を守りながら、無理せず続けられるように、メニュー選びのご参考にしてください。

ウォーキングの効果と正しいやり方 

ウォーキングは特別な道具を必要とせず、膝や腰への負担が小さいため幅広い年齢の方が実践しやすい運動です。少し息がはずむくらいのペースで30分以上体を動かすと、血管が広がりやすくなり、心臓や肺の働きが良くなります。さらに、気分がすっきりしてストレス解消にもつながります。

時間が取れない場合は10分×3回に分けても同等の効果が期待できます。(※3)

 ・1日30分以上を目標に歩幅をやや広めに取る
・腕を後方まで大きく振り肩甲骨から動かす意識を持つ
・背筋を伸ばし視線を10 m先に置いて猫背を防ぐ 

1日8,000歩以上を目安に 

具体的にどんな運動をしたら良いかわからない・・・そんな時には先ずは、日常生活の中で日々何歩歩くかを意識してみましょう。8,000歩以上のウォーキングを行うことで血圧を下げる効果が期待できるといわれています。いきなり8,000歩は難しいという方は、今の歩数から+3,000歩を一つの目安に歩数を増やしてみましょう。

アプリを使って日々の歩数と血圧変化を確認してみよう

日々の歩数を意識して、歩数が少ない日は夜散歩してみる、帰りの電車で一駅手前で降りて歩く等、少しずつ歩数を増やす取り組みをしてみましょう。そんなときに便利なのがスマートフォンアプリです。今、何歩歩けているかの確認はもちろん、日々目標の歩数に達しているか確認して毎日8,000歩以上歩く習慣を先ずは目指してみてはいかがでしょうか。

Welbyマイカルテは歩数に加え、体重や家庭血圧の記録・管理ができる無料のアプリケーションです。体重が高めの方は体重記録もおススメです。ぜひ使ってみて、日々の生活習慣改善に役立ててみてください。

ヨガやストレッチで自律神経を整える

ヨガやストレッチで自律神経を整える

呼吸と動作を同期させるヨガは精神的緊張をゆるめ、副交感神経を高めます。英雄のポーズは下半身の血流を促し、猫のポーズは背骨を柔軟にして深い呼吸を助けます。就寝前に10分のストレッチタイムを設ければ入眠時血圧が下がり翌朝の値も安定しやすいでしょう。ポーズ保持は呼吸5回を目安にし、痛みのない範囲で可動域を徐々に広げてください。

 水中運動のメリットと注意点 

水泳や水中ウォーキングは、水の浮力でひざや腰などの関節に負担がかかりにくく、水の圧力で血流もスムーズになります。ただし、水温が低いプールでは体が冷えて血圧が急に上がることがあるので、30〜34℃くらいの温かいプールを選びましょう。プールに入ったら、最初の5分ほどはゆっくり歩いて、体を水に慣らすことも大切です。

水中運動は、陸上運動より心拍数が上がりにくいため「楽に感じる」ものの、200 m泳ぐ・15分歩くなど目標を明確にして運動量不足を防ぐことが大切です。 

運動時の注意点!血圧を上げないためのポイント

運動前後の血圧測定の重要性

運動前後の血圧測定は、家庭血圧を活用されると良いです。運動開始により、血圧変動が起きやすいため、元々高血圧をお持ちの方は注意が必要です。

運動前後の血圧測定は、家庭血圧を活用されると良いです。運動開始により、血圧変動が起きやすいため、元々高血圧をお持ちの方は注意が必要です。
特に、家庭血圧160/100mHg以上、診察室血圧180/110mmHg以上の場合には、服薬で血圧コントロールを行い運動を開始する必要があるため、運動開始や適切な運動方法、時間についてはかかりつけ医に相談しましょう。(※4)
終了直後は「運動後低血圧」で一時的に下がりますが、10〜15分以内に大幅上昇するなら負荷が強すぎた、当日の体調に合っていない可能性が考えられます。

血圧・体調・運動内容をメモし、自分に合った強度を客観的に把握するようにしましょう

運動療法が適していない、または注意が必要な人

運動療法は重要ですが、一方で高血圧の方全てに最適な対処法ではありません。下記のような方は、運動による血圧の急な上昇や、運動をすること自体に一定のリスクがあるため注意が必要です。下記に該当する方は、運動に取り組む前に事前に医療機関で運動の種類や強度について相談しましょう。

・Ⅲ度高血圧以上の方(家庭血圧で上の血圧で160以上、下の血圧で100以上)
・脳や心臓等に持病がない方
・高齢者(特に筋力がない、転びやすい等日常生活に不安のある方)

危険な場合も!高血圧の人が控えるべき運動

最大挙上重量に挑戦するデッドリフトやスクワットは呼吸を止めて力む瞬間に、急激に血圧が跳ね上がる恐れがあり、短距離ダッシュやサンドバッグ打ちは、交感神経を急激に刺激し、心拍数や血圧を急上昇させる可能性があります。

これらの運動については、医師の許可が下りるまでは控えるようにしましょう。 

・激しい息こらえを伴う高重量筋トレ
・全力疾走など爆発的スプリント
・寒冷環境での屋外運動 

安全に運動するためのリスク管理

 ウォームアップで筋温や体温をあげることが、運動時の心臓や血管への急激な負担を和らげる効果が期待できるため、血圧が急上昇するリスクを下げることにつながります。
汗をかいた分はこまめに水分補給し、利尿作用の強いカフェイン飲料は避けましょう。めまい・動悸・胸痛が出たら即中断し、医療機関を受診後、症状の原因を明らかにしてから、主治医に運動再開時期の相談をしましょう。

気温の変化が大きい季節は、まず室内でストレッチをして体を温め、血行を良くしてから本格的な運動を始めましょう。

まとめ

高血圧を改善するためには、薬による治療だけでなく、適度な運動を取り入れることやバランスの良い食事を取り入れて、体の状態を整えることがとても重要です。
ウォーキングやヨガ、水中運動といった低負荷でも続けやすい運動を生活に組み込み、減塩・十分な睡眠・ストレス管理・禁煙節酒という基本習慣を守れば、血圧は少しずつ安定し合併症リスクも下がります。

定期的な健康診断で自身の数値を可視化し、モチベーションを維持することも忘れずに。今日の一歩が5年後、10年後の健康寿命を大きく伸ばすきっかけになります。まずは自分に合ったペースで歩き出してみましょう。

血圧や食事の記録を簡単に管理できるアプリ『Welbyマイカルテ』をぜひ活用してみてください。アプリで手軽に記録することで、自分の健康状態を把握しやすくなり、適切な生活習慣の改善につながります。

できることから始めて、健康的な生活を続けていきましょう。

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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。

◆参考文献
※1:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(2019年版)」
※2:横浜市立大学医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科による他施設共同研究
※3:厚生労働省 e-ヘルスネット
※4:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド(2023年版)」