
執筆:看護師 図司真澄
スーパーに並んでいる梅干しを見て、種類や塩分濃度の多さに悩んだ経験はありませんか。
「身体のためには、やっぱり塩分が低いものを選んだほうがいいのかな」と、とりあえず減塩タイプに手を伸ばす人も多いかもしれません。
一方で、梅干しは身体に良いイメージがある食品でもあります。それでも、高血圧が気になり始めると「そもそも梅干しって食べないほうがいいのでは?」と不安になることもありますよね。
本記事では、梅干しの塩分量について整理しながら、高血圧が気になる方に安心して梅干しを取り入れるための考え方を解説します。


梅干しの塩分は本当に高いのか
看護師になって、梅干しについて語る日が来るとは思いませんでした。
梅干しのルーツについて調べてみると、日本最古の医学書「医心方」には梅干しの効能が書かれており、平安時代には梅干しが存在していたのだとか。
長い歴史の中で、体調管理に役立てられてきた食品だといえるでしょう。
現代でも梅干しは健康によいイメージがありますが、気になるのは塩分。しかし、高血圧が気になるからと梅干しを敬遠するのはもったいないかもしれません。
まずは、梅干しの実際の塩分量はどれくらいなのかを見ていきましょう。
1日の塩分摂取量の目安
梅干しの塩分を考える前に、まず押さえておきたいのが「1日にどれくらいの塩分をとるのが目安か」ということです。
厚生労働省のデータによると、日本人の1日の食塩摂取量は平均で約10g前後とされています。男性は約11g、女性は約9gと、いずれも目標量を上回っているのが現状です(※1)。
健康な成人の目標量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされています。
さらに、高血圧のある人では、1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることが目安とされています。これは、血圧への影響をできるだけ小さくするために意識したい基準です(※2)。
諸外国と比べると、日本人の塩分摂取量はやや多い傾向があります。欧米諸国では8〜9g程度が一般的で、世界保健機関(WHO)は1日5g未満を推奨しています(※3)。
ただし、日本の食事には味噌汁や漬物など、塩分を含む食品が自然に組み込まれているため、特定の食品だけを避けることではありません。大切なのは1日の食事全体で塩分量を把握することです。
この目安を頭に置いたうえで、梅干しがどのくらいの位置づけになるのかを考えていきましょう。
梅干し一粒あたりの塩分量
1日の塩分摂取量の目安を踏まえると、梅干し一粒がどのくらいの塩分量になるのかを知っておくことは重要です。
梅干し一粒の塩分量は、種類や大きさによって差がありますが、一般的には約0.5〜2g前後とされています。
市販の減塩タイプや調味梅干しでは1g未満のものもありますが、白干梅(昔ながらの塩だけで漬けた梅干し)の場合は、一粒で2g前後になることも珍しくありません。
この数字を、高血圧の人の目安である「1日6g未満」と照らし合わせると、梅干し一粒で1日の塩分量の3分の1近くを占める場合があることになります。白干梅を食べる場合は、特にほかの食事とのバランスを意識する必要があるでしょう。
梅干しの塩分だけを見るのではなく、味噌汁や加工食品などを含めた1日の合計で考えることが大切です。
梅干しはなぜ体によいと言われてきたのか

「梅はその日の難逃れ」ということわざがあります。これは、梅干しを朝に食べることで、その日一日を無事に過ごせるよう願う、昔の人の知恵を表した言葉です。
食あたりや体調不良が今より身近だった時代、保存性が高く、食欲を促す梅干しは、日々の体調管理に役立つ存在でした。
梅干しが体によいとされてきた背景には、こうした知恵が受け継がれてきた歴史があります。
現在では梅の効能に関する様々な研究が進んでいますが、特に塩分や高血圧との関係については気になるところです。
梅干しと高血圧は本当に相性が悪いのか
梅干しが高血圧と相性が悪いと思われがちなのは、塩分を含んでいるためです。塩分のとりすぎが血圧を上げやすいことはよく知られており、その影響で梅干しも「控えたほうがよい食品」と受け取られやすくなっています。
一方で近年、梅や梅由来成分そのものの働きに注目した研究も行われています。中には、梅に含まれる成分が、血圧を上げる仕組みに関わる「アンジオテンシンⅡ」というホルモンの働きを抑える可能性が示されたという報告もあります(※4)。
アンジオテンシンⅡとは、血管を収縮させる物質を作るホルモンです。また、この働きを抑えることで、動脈硬化の予防・改善効果も期待されています。
ただし、こうした研究結果は、梅干しを食べれば血圧が下がるという意味ではありません。あくまで、梅由来成分の性質を調べた研究であり、日常の血圧管理をそれだけで行えるわけではないので注意が必要です。
抗酸化作用・疲労回復など、梅干しに期待される働き
梅干しが体によいと言われてきた理由のひとつに、抗酸化作用があります。抗酸化作用とは、体の中で増えすぎた「活性酸素」の働きをおだやかにすることです。
活性酸素は、年齢を重ねたり、ストレスや疲れがたまったりすると増えやすく、体に負担をかける原因のひとつと考えられています。
梅に含まれる成分の中でも、近年注目されているのがフラボノイドと呼ばれる成分で、研究では、梅由来のフラボノイドに、抗酸化作用があることが示されています(※5)。
また、梅干しに含まれるクエン酸は、疲れを感じたときのサポートとして知られています。昔から、疲労感があるときや食欲が落ちているときに梅干しが食べられてきたのも、こうした特徴が関係していると考えられます。
さらに、梅干しの酸味には唾液の分泌を促す働きがあり、口の中をさっぱりさせて食事をとりやすくする効果も期待されます。唾液がしっかり出ることは、消化の第一歩を助ける点でも大切です。
梅干しの効能はその他にも多くありますが、だからといって食べ過ぎは禁物。
健康のためには生活習慣を整えることが第一ですが、そのうえで塩分量に気を配りながら、無理のない形で梅干しを取り入れていくのがおすすめです。
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高血圧が気になる人に適した梅干しの選び方

梅干しは体によいと言われてきた一方で、塩分を含む食品でもあります。
高血圧が気になる場合、大切なのは「食べる・食べない」を決めることではなく、どんな梅干しを、どのくらい選ぶかという視点です。ここでは、梅干し選びで押さえておきたいポイントを整理します。
塩分8%・10%・20%の違い
市販の梅干しには、塩分8%・10%前後のものから、20%前後のものまで幅があります。この違いは、味の好みだけでなく、製法の違いとも深く関係しています。
塩分8%や10%程度の梅干しは、比較的食べやすい味が特徴です。
酸味や塩味がやわらかく、高血圧が気になる人でも取り入れやすい一方で、味を整えるために調味料が使われている商品が多い傾向があります。甘味やだしの風味が加えられていることもあり、「食べやすさ」を重視した梅干しといえるでしょう。
一方、塩分20%前後の梅干しは、昔ながらの白干梅に多く見られます。白干梅は、梅と塩だけを使って漬け込み、天日干しをして仕上げる、非常にシンプルな製法で作られます。
余分な調味料を加えず、塩の力だけで保存性を高めているため、塩分は高めですが、梅本来の酸味と風味がはっきり感じられるのが特徴です。
この製法のおかげで白干梅は保存性が高く、少量でも強い塩味を感じやすくなります。そのため、一粒あたりの塩分量は多くなりやすく、食べる量を意識することが欠かせません。
ここで大切なのは、「塩分%が高いから避ける」「低いから安心」と単純に判断しないことです。どの製法の梅干しなのか、一粒あたりでどれくらいの塩分になるのかを意識し、1日の食事全体の中でどう位置づけるかを考えることが、無理のない選び方につながります。
減塩梅干し・はちみつ梅干しの注意点
高血圧が気になる人に人気なのが、減塩梅干しやはちみつ梅干しです。確かに、塩分量が抑えられている商品が多く、取り入れやすい面があります。
ただし、ここで気をつけたいのは、「減塩だから安心」「甘いから食べやすい」と感じて、量が増えてしまうことです。
減塩タイプでも、何粒も食べれば塩分は積み重なります。また、はちみつ梅干しなどは、甘味料や調味料が使われている場合があり、食べやすさからつい食べ過ぎてしまうこともあります。
大切なのは、表示されている塩分%だけで判断せず、食べる量を意識することです。「今日は一粒まで」「この日は他のおかずを薄味にする」といった工夫が、結果的に塩分管理につながります。
高血圧が気になる人のための梅干しとの付き合い方
梅干しは体によいイメージがある一方で、塩分が気になり、距離を置いてしまう人も少なくありません。
ただ、高血圧が気になるからといって、梅干しを完全に避ける必要はありません。大切なのは、「どのくらい」「どう食べるか」を自分なりに決めておくことは先ほどのとおりです。
ここでは、無理なく続けやすい梅干しとの付き合い方を整理します。
1日に食べてもよい量と、塩分を抑える食べ方の工夫
高血圧が気になる人の場合、1日の食塩摂取量は6g未満が目安とされています。この基準を踏まえると、梅干しは1日あたり一粒までをひとつの目安として考えると安心です。
とくに白干梅のように塩分が高めの梅干しでは、一粒で2g前後の塩分になることもあります。減塩タイプであっても、複数粒食べれば塩分は積み重なります。そのため、「今日は一粒まで」とあらかじめ決めておくことが、無理のない付き合い方につながります。
梅干しには様々な効能がありますが、だからといって毎日必ず梅干しを食べる必要はありません。
外食や加工食品が多い日は控える、自炊で全体的に薄味の日に取り入れるなど、1日単位で調整する意識を持つと続けやすくなります。
塩分を抑えるためには、食べ方の工夫も有効です。梅干しを刻んで料理に使うことで、少量でも風味を感じやすくなります。たとえば、和え物や冷ややっこ、野菜と組み合わせると、自然と摂取量を抑えられます。
また、「梅干しを使う日は、味噌汁を薄めにする」など、ほかの料理との組み合わせで調整することもポイントです。梅干しだけで考えるのではなく、食事全体の中で塩分バランスをとる意識が大切です。
目安量を知り、食べ方を工夫することで、梅干しは高血圧が気になる人にとっても、無理なく取り入れやすい食品になります。
「なんとなく減塩」から卒業する血圧管理のコツ
「梅干しを食べたから、その日の血圧が変動する」というわけではありません。
血圧は、食事だけでなく、睡眠、体調、ストレス、運動量など、さまざまな要因によって日々変動します。そのため、特定の食品を食べたかどうかだけで血圧の良し悪しを判断するのは現実的ではありません。
大切なのは、一時的な数値に一喜一憂することではなく、日々の傾向を見ることです。そのために役立つのが、血圧の測定と記録です。
血圧は、できるだけ同じ時間帯・同じ条件で測ることで、変化を把握しやすくなります。朝起きてトイレを済ませたあとや、夜寝る前など、自分なりの測定タイミングを決めておくと続けやすくなります。
記録方法は、難しいものである必要はありません。
スマートフォンの血圧管理アプリを使ったり、ノートにその日の血圧だけでなく「外食だった」「飲み会があった」などを簡単に書き留めたりするだけでも十分です。
こうした記録を続けることで、「どんな生活のときに血圧が安定しやすいのか」が少しずつ見えてきます。
「なんとなく減塩する」のではなく、自分の血圧の動きを知りながら調整することが、長く続けられる血圧管理につながります。
まとめ
梅干しは古くから日本の食卓に根づき、体調管理の知恵として親しまれてきました。一方で、現代では塩分や高血圧との関係から、「食べていいのか迷う食品」になっているのも事実です。
本記事では、梅干し一粒あたりの塩分量や、塩分濃度・製法の違い、さらに研究で示されている効能について整理してきました。
血圧は日々の生活習慣や体調によって変動するものです。だからこそ、血圧を測り記録し、自分の体の反応を知りながら調整していくことが大切になります。
減塩も「我慢するもの」ではなく、自分にとって無理のない「いい塩梅」を見つけることが続けるコツです。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献:
※1:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
※2:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
※3:World Health Organization「Sodium reduction」
※4:紀州梅効能研究会「梅およびその有効成分の動脈硬化等、心血管病変に対する予防、改善効果のモデル細胞を用いた検討」
※5:紀州梅効能研究会「梅の細胞増殖抑制作用、抗酸化作用に関する研究」


