
執筆:看護師 図司真澄
血圧が高めと言われるたびに「何か始めた方がいいのかな」と感じる場面は多いかもしれません。
特に、最近注目されている成分にGABA(ギャバ)がありますが、血圧との関係がどの程度明らかになっているかは意外と知られていません。
本記事では、GABAの作用、仕組み、多く含む食品、そして摂るタイミングまで整理し、日々の血圧ケアに役立つ情報をまとめてわかりやすく紹介します。


GABAと血圧の関係を科学的に解説:作用の仕組みと期待されるポイント
GABAという言葉を耳にする機会が増えたものの、「血圧と本当に関係があるのか?」と疑問に思う方も多いはずです。
この章では、GABAがどのように体の働きに関わり、血圧の変化と関連づけられてきたのか、その基本的な仕組みをわかりやすくまとめます。
GABA(ギャバ)の基本的な働き
GABA(γ-アミノ酪酸)は、体の中にも存在するアミノ酸の一種です。特に脳では、神経の働きを落ち着ける役割を持つ物質として知られています。
私たちの体はストレスを感じると、緊張したときに働く“交感神経”というアクセル役の神経が活発になり、ノルアドレナリンという物質を分泌します。これが血管を収縮させ、血圧が上がりやすくなる要因のひとつです。
GABAはこの仕組みの中で、末梢神経にあるGABAb受容体と結びつくことでノルアドレナリンの分泌を抑える方向に働く可能性があると報告されています。※1,2
GABAが血圧に関わる仕組み
GABAが血圧をサポートすると言われる背景には、次のような考え方があります。
● 交感神経の働きを和らげる作用
ストレスで高まりやすい交感神経の作用を、GABAが緩和する方向に働くとされています
● リラックスによって血管がゆるみやすい
緊張していると血管もかたくなりやすく、血圧が上がりやすくなり、GABAによるリラックス作用がこの状態に影響することもあります
ただし、作用の感じ方には個人差があります。
研究で示されているGABAの血圧サポート作用
GABAを20mg、40mg、80mgと量を変えて摂取した研究では、下記の結果が報告されています。※1
●40mgでは「上の血圧(収縮期血圧)」に変化が見られた
●80mgでは「上と下の血圧(収縮期・拡張期)」の両方に変化が見られた
つまり、ある程度GABAを摂取したほうが、血圧が高めの人で変化が現れやすい傾向があったということです。
また、GABAを含む調味料や食品を一定期間継続的に摂取した研究でも、血圧が高めの人では数値が下がったという報告もあり(※2)、一方で、もともと血圧が正常の人では、大きな血圧変化が見られなかったという研究もあります(※3,4)。
これは “血圧が高めの人に作用しやすく、正常の人には大きく影響しない”という特徴を示しています。
GABAが多い食品一覧と選び方

GABAは、特別なサプリだけでなく、普段の食事に登場する野菜や発酵食品にも自然に含まれています。ここでは、取り入れやすい食品の特徴をわかりやすくまとめます。
GABAを多く含む食品一覧
GABAは植物の熟成や発酵過程で増えることがあり、次のような食品で日常的に摂りやすくなっています。
● トマト・トマトジュース
熟したトマトほどGABAが増えやすく、ジュースは一定量の摂取を継続しやすい特徴があります。
● 発芽玄米
発芽の過程でGABAが増えることが知られており、主食として無理なく取り入れられます。
● かぼちゃ・ナス・じゃがいもなどの野菜
さまざまな野菜に含まれ、和洋問わず料理に使いやすい食品です。
● 味噌・漬物などの発酵食品
発酵の過程でGABAが増えることがあり、日常の食卓にも取り入れやすい食品です。
● GABAを含む野菜ジュース・機能性表示食品
含有量が明記されているため、量を管理しやすいのが特徴です。
GABAの含有量は食品の完熟度・加工方法・品種によって大きく変わることがあるため、まずは日常的に続けやすい食品を選ぶことが大切です。
トマトジュースや発酵食品が注目される理由
トマトジュースや味噌・漬物などがGABA食品としてよく紹介されるのには、いくつかの理由があります。
● 一定量を摂りやすい
加工食品は成分が比較的安定しているため、毎日だいたい同じ量のGABAを取り入れやすい特徴があります。
● 日常の食事に取り入れやすい
特別な調理が不要で、食事に自然になじむ食品が多いことから、習慣として続けやすい点が支持されています。
● GABA以外の健康成分も同時にとれる
トマトに含まれるリコピン、発酵食品の乳酸菌など、複数の成分をまとめて摂れる点も魅力です。
食品で摂るメリットとサプリとの違い
食品とサプリには、それぞれ異なる特徴があります。目的や生活スタイルに合わせて使い分けることが大切です。
食品のメリット
食品からGABAを摂る場合、自然な形で無理なく続けやすい点が最大の特徴です。
主食や副菜に組み込みやすく、GABA以外の栄養素も一緒に摂れることから、食生活全体を整えたい人に向いています。また、食品に含まれるGABAは極端に多くないため、過剰摂取の心配が少ないのも安心材料です。
サプリのメリット
サプリメントでは、1日に摂取するGABA量が明確に示されているため、「必要な量をしっかり摂りたい」という人に向いています。
食事の影響を受けず、量を一定に保てるのが大きな利点です。ただし、飲み合わせや体質によって注意が必要な場合もあるため、薬を飲んでいる方は医師に相談するのが安心です。
食品は“自然に続けるための土台”、サプリは“必要な量を補う手段”。日常の食事で無理なく取り入れつつ、必要に応じてサプリを活用するというバランスが現実的です。
GABAを摂る“タイミング”はいつが良い?

「いつ飲むと良いの?」という質問は多いですが、現時点では明確に“この時間が最適”と決まっているわけではありません。ただし、続けやすいタイミングにはいくつか傾向があります。
GABAサプリはいつ飲むと良い?
● 食後
GABAを用いた研究では食後に摂るデザインが多く、生活習慣に取り入れやすい時間帯です。
● 就寝前(30分〜1時間前)
睡眠に関する研究では、就寝前にGABAを摂取すると 「寝つきが早くなる」「深い睡眠(ノンレム睡眠)が増える」といった変化が報告されています。※5
摂取後30分ほどで血中濃度がピークになることが分かっており、就寝前の摂取は理にかなっています。また、睡眠の質が整うことで 夜間の交感神経の過度な活動が抑えられ、結果として血圧にも良い影響が期待されると考えられています。
食品から摂る場合のベストなタイミング
食品の場合はいつ食べても構いません。例としては、下記のような形で習慣の中に自然に組み込むのが続けるコツです。
● 朝食にトマトジュース
● 夕食に発酵食品
● 副菜に野菜を追加する
GABAを取り入れる際の注意点と上手な続け方
GABAは食品成分として安全性は高いとされていますが、取り入れる際に押さえておきたいポイントがあります。
降圧薬服用中の人が気をつけたいポイント
GABAは食品成分ですが、降圧薬と血圧への作用が重なる可能性があります。
特に、下記に該当する方は、GABAサプリを自己判断で始めたり量を増やしたりせず、必ず医師・薬剤師に相談してから利用するようにしてください。
– すでに降圧薬を服用している方
– 複数の薬を飲んでいる方
– 腎臓や肝臓などに持病がある方
処方薬の中止や減量を、GABAなどのサプリだけで代替することは絶対に避けましょう。
血圧が低い人は摂取しても大丈夫?
正常血圧の人ではGABAによる血圧変化がほとんど見られなかったという報告があります(※4,5)。
このことから、低血圧の人がGABAの食品やサプリをとった場合に、血圧が大きく下がってしまうリスクは高くないと考えられています。
とはいえ、めまいが出やすい方や、もともと血圧が低いと言われている方は、少量から試し、体調の変化がないかを確認しながら様子を見るのが安心です。
サプリ依存にならないための考え方
GABAはあくまで「血圧や睡眠を整えるための選択肢のひとつ」であり、主役ではありません。
〈サプリ依存にならないための考え方〉
● サプリはあくまで補助
● 食事・睡眠・運動など生活全体の改善が土台
● 「サプリだけで何とかする」は避ける
塩分の摂りすぎを見直す、体重を管理する、運動を増やす、禁煙する、飲酒量を控えるなど、医療機関でも推奨される生活習慣の改善が、血圧管理の中心であることを忘れないようにしましょう。
毎日の食事に無理なく取り入れるコツ
「無理なく・長く続けられる形」を見つけることが、GABAを含めた生活習慣の工夫を活かすポイントです。
〈毎日の食事に無理なく取り入れるコツ〉
● 朝にトマトジュースを飲む
● 発酵食品を1品追加する
● 野菜を常備しておき、サイドメニューを増やす
● サプリは飲む時間を決めて習慣化する
まとめ:GABAを上手に活用して血圧ケアを習慣に
GABAは神経の興奮を落ち着かせる方向に影響する成分として研究されており、血圧が高めの人を対象にした一部の研究で、血圧が下がる方向に動いた例が報告されています。
一方で、正常血圧の人では大きな変化が見られないとする報告もあり、「補助的な素材として有望だが、薬の代わりになるものではない」という位置づけが妥当です。
食品にも自然に含まれているため、無理なく生活に取り入れやすいのはGABAの大きな利点です。
そのうえで、減塩・体重管理・運動・十分な睡眠など、高血圧対策の基本となる生活習慣を大切にしつつ、GABAを「一緒に取り組むパートナー」のような感覚で上手に活用していきましょう。
高血圧の診断を受けている方、薬を飲んでいる方、血圧が著しく高い方は、自己判断でサプリに頼るのではなく、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談したうえで利用するようにしてください。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献:
※1:Hayakawa K.,Kimura M.,Kamata K.: Mechanism underlying gamma-aminobutyric acid –induced antihypertensive effect in spontaneously hypertensive rats, European Journal of Pharmacology, 438, 107-113, 2002.
※2: 風見大司・小倉長雄・福地敏彦・辻啓介・穴 澤麻梨・前田浩明:γ-アミノ酪酸配合和風調味料の軽症高血圧者,正常高血圧者を含む健 常者に対する降圧作用,日本食品科学工学会 誌,49-6,409-415,2002.
※3:松原大・上野裕文・宗行哲・只野健太郎・陶 山徹・今泉記代子・鈴木淑水・曲田清彦・菊 池範昭・中道昇・熊谷裕生・猿田享男:γ-ア ミノ酪酸(GABA)含有錠剤食品に及ぼす影響 と安全性の評価 , 薬理と治療 ,30 (11),963-972,2002.
※4: Takahashi H.,Sumi M.,Koshino F.:Effect of γ-aminobutyric acid(GABA) on normotensive or hypertensive rats and men, Journal of Physiology, 11, 89-95, 1961.
※5:喜瀬光男・水口彩:発芽玄米の高血圧症に対する改善効果,FOOD Style 21, 8(7), 54-57, 2004. ※6:Byun, J.I. et al.Effect of oral γ-aminobutyric acid (GABA) administration on sleep and its absorption in humans. Food Science and Biotechnology, 25, 547–551,2016.


