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脳出血はなぜ高血圧で起こる?好発部位・症状・リハビリまで完全解説

脳出血はなぜ高血圧で起こる?好発部位・症状・リハビリまで完全解説

執筆:看護師 図司真澄

高血圧は「自覚症状がほとんどない病気」と言われる一方で、ある日突然、命や生活に大きな影響を及ぼす脳出血を引き起こすことがあります。なぜ血圧が高い状態が続くと、脳の血管は破れてしまうのでしょうか。

本記事では高血圧と脳出血の関係を軸に、発症の仕組み、起こりやすい部位や症状、治療やリハビリ、そして再発を防ぐためにできることまでをわかりやすく解説します。

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脳出血とは?高血圧との深い関係

脳出血は突然起こる病気というイメージを持たれがちですが、実際には高血圧という背景が長年積み重なって発症するケースが少なくありません。血圧が高い状態が続くと、脳の血管には少しずつ負担がかかり、気づかないうちにリスクが高まっていきます。

まずは、脳出血がどのような病気なのか、そしてなぜ高血圧と深く結びついているのかを、全体像から整理していきましょう。

脳出血とはどんな病気か

脳出血とは、高血圧などによって傷んだ脳内の血管が破れ、脳の中で出血が起こる病気です。出血によってできた血のかたまり(血腫)が脳を圧迫することで、手足のまひや言葉の障害、意識障害など、さまざまな症状が現れます。

脳出血は「脳卒中」と呼ばれる病気の一つです。発症すると短時間で状態が急速に悪化することもあり、早急な医療対応が求められるケースも少なくありません。

特に高血圧が長く続いている人では、脳の細い血管に慢性的な負担がかかりやすく、脳出血のリスクが高まるとされています(※1)。

脳梗塞・くも膜下出血との違い

脳卒中には、脳出血のほかに脳梗塞とくも膜下出血があります。脳梗塞は、脳の血管が詰まり、血液が十分に流れなくなることで起こる病気です。

一方、くも膜下出血は、脳の表面とそれを覆う「くも膜」の間にある空間(くも膜下腔)で、血管が破れて出血が起こる病気です。

脳の中で出血がたまる脳出血とは異なり、脳のまわりに血液が広がるのが特徴で、脳出血はこれらの中でも特に高血圧との関係が深いタイプの脳卒中とされています。

なぜ高血圧で脳出血が起こるのか【メカニズム】

高血圧が続くと、なぜ脳出血のリスクが高まるのでしょうか。

ここでは、高血圧が脳の血管にどのような影響を与え、どのような仕組みで脳出血につながるのかをわかりやすく説明します。

高血圧が脳血管に与えるダメージ

高血圧は、脳出血を含む脳卒中の発症に最も強く関係する危険因子とされています(※1)。血圧が高い状態が長期間続くと、脳の血管には常に強い圧力がかかり、とくに脳の奥にある細い血管が傷みやすくなります。

このような血管では、血管壁がもろくなったり、しなやかさを失ったりしやすい状態です。

その結果、血圧の変動をきっかけに血管が破れやすくなり、脳内で出血が起こって脳出血を発症するリスクが高まると考えられています。

高血圧性脳出血が起こりやすい人の特徴

高血圧があるすべての人に脳出血が起こるわけではありませんが、高血圧の期間が長い人や、血圧の管理が不十分な状態が続いている人では、発症リスクが高くなることが知られています。

また、糖尿病や腎臓の病気など、ほかの生活習慣病をあわせ持つ場合には、脳や心臓の血管にかかる負担がさらに大きくなります。そのため、こうした人では、より適切な血圧管理が重要になります。適切に治療を続けることで、発症リスクを下げることは十分可能です。

ガイドラインでは、脳卒中の予防のために高血圧の治療を行うことが強く推奨されており、年齢や合併症の有無に応じて、無理のない範囲で血圧を下げることが望ましいとされています(※1)。

ストレス・喫煙・飲酒との関係

ストレスや喫煙、過度の飲酒は、それ自体が直接脳出血を引き起こすとは限りません。しかし、これらの習慣は血圧を上げたり、血圧の変動を大きくしたりする要因になります。

高血圧の状態にこうした生活習慣が重なることで、脳の血管にかかる負担がさらに増し、結果として脳出血のリスクが高まる可能性があります。

そのため、高血圧性脳出血の予防には、薬による治療だけでなく、減塩や適度な運動、飲酒量の見直しといった生活習慣の改善も重要です。

高血圧性脳出血の好発部位と症状

高血圧によって血管が傷むことで起こる脳出血は、出血する部位によって症状が大きく異なります。

ここでは、高血圧性脳出血が起こりやすい部位と、それぞれの部位でみられやすい症状について、全体像を整理しながら説明します。

被殻出血|最も多い高血圧性脳出血

被殻出血は、高血圧性脳出血の中で最も多くみられるタイプです。被殻は、脳の奥に位置し、手足の動きや感覚、話す機能などに関わる神経の通り道が集まっている部位です。

そのため、被殻で出血が起こると、片側の手足のまひや、ろれつが回りにくくなるといった症状が現れやすくなります。出血量が多い場合には、意識レベルの低下を伴うケースも少なくありません。

被殻を走る血管は細く、高血圧の影響を受けやすいことが知られています。血圧が高い状態が長く続くことで血管への負担が蓄積し、その結果として被殻出血を起こすリスクが高まると考えられます。

視床出血|感覚障害が出やすい

視床出血は、高血圧性脳出血の中でも比較的多くみられるタイプで、感覚の異常が現れやすいことが特徴です。視床は、皮膚の感覚や体の位置感覚などの情報を脳全体に伝える役割を担っているため、出血が起こると、しびれや感覚が鈍くなるといった症状がみられることがあります。

視床出血では、左右の目の位置や向きがおかしくなるなど、眼の動きに異常が出ることがあります。こうした症状の現れ方には個人差があり、感覚障害が目立つ場合もあれば、意識の変化が主な症状となる場合もあります。

視床出血は高齢者に多く、回復後も感覚障害や意欲低下が残ることで、日常生活動作が低下し、日常生活動作が低下し、介助が必要になる場合がある点にも注意が必要です。

小脳出血|ふらつき・嘔吐が特徴

小脳出血では、頭痛、めまい、ふらつき、嘔吐、歩きにくさといった症状が現れやすいことが特徴です。小脳は体のバランスや動きを調整する役割を担っているため、出血が起こると、まっすぐ歩けなくなる、立っていられないといった状態になることがあります。

吐き気や嘔吐を伴うことも多く、消化器の不調やめまいの病気と間違うことも少なくありません。

小脳は脳の後方、頭の奥に位置しており、この周囲(後頭蓋窩)で出血が起こると、脳を強く圧迫して重症化する場合があることが知られています。そのため、小脳出血では早期に状態を評価し、適切な治療につなげることが重要です。

強いめまいや嘔吐が急に現れた場合や、歩行が不安定になった場合には、無理に様子を見ず、早めに医療機関を受診することが勧められます

橋出血・皮質下出血の特徴

橋出血は、脳幹の一部である「橋」と呼ばれる部位で起こる脳出血です。

橋は、運動や感覚の神経が集中しているだけでなく、呼吸や意識の維持にも深く関わっています。そのため、出血が起こると、両手両足のまひ重い意識障害が現れ、短時間で状態が急変することがあります。重篤になり得るため、わずかな変化にも注意が必要です。

皮質下出血は、大脳の表面を覆っている「皮質」のすぐ下で起こる出血です。

若い人では、脳動静脈奇形(AVM)と呼ばれる血管の異常が原因となる一方、高齢者では、アミロイドアンギオパチーと呼ばれる病態が関係している場合があります。

アミロイドアンギオパチーでは、アミロイドβ蛋白という物質が脳の血管の壁にたまることで、血管がもろくなり、わずかな刺激でも破れやすくなると考えられ、その結果、皮質下で出血が起こることがあります。

症状としては、頭痛、片側の手足のまひ、視野の欠け、言葉が出にくくなるなどがみられることがあり、出血した場所によって現れ方はさまざまですが、高血圧による血管障害もこれらの出血を起こす重要な背景の一つです。

脳出血の治療法と血圧管理の重要性

脳出血と診断された場合、まず命を守るための治療が優先されますが、治療はそれだけで終わりではありません。出血の状態や症状に応じて内科的治療や外科的治療が行われ、その後も再発を防ぐための血圧管理が重要になります。

ここでは、脳出血の主な治療の考え方と、高血圧をどのように管理していくことが大切なのかを、全体の流れが分かるように整理して説明します。

内科的治療(降圧・安静・薬物療法)

脳出血の治療では、まず出血をこれ以上広げないことと、体の状態を安定させることが何より大切になります。「脳出血だとすぐ手術になるのでは?」と思われがちですが、実際には内科的な治療のみで経過を見る場合も少なくありません。

特に発症直後は、血圧が高い状態が続くと、脳の中で出血が広がるおそれがあります。一方で、血圧を急激に下げすぎると、脳やほかの臓器に十分な血液が行き渡らなくなる危険性も考えられるでしょう。

急性期には、医師が血圧を下げすぎないよう注意しながら、適切な範囲までゆっくりと調整します(※1)。

この時期の血圧管理では、主に点滴による降圧薬を使用します。血圧の変化をこまめに確認しつつ、患者さん一人ひとりの状態に応じて投与量や速度を調整していく方針です。

また、ベッドで安静に過ごすことや、脳の腫れを抑える治療、肺炎などの合併症を防ぐための全身管理も同時に行われます。

内科的治療の目的は「今の出血を抑えること」だけではなく、その後の回復をできるだけ良好にし、後遺症を軽くするための土台づくりにあります(※2)。

外科的治療(手術が必要なケース)

脳出血の治療では、多くの場合は内科的治療が中心となりますが、出血の量が多い場合や、脳が強く圧迫されている場合には、手術による治療が検討されることがあります。

外科的治療の目的は、脳内に形成された血腫を除去し、脳への圧迫を軽減する点にあります。
圧迫の解除によって、意識障害の改善や致命的な状態の回避が期待されます。

一方で、出血部位が深部に及ぶ場合や、症状が比較的安定している場合には、手術を行わず内科的治療を継続する選択がなされることも少なくありません。治療方針は、出血量や神経症状を総合的に評価したうえで決定されます。

手術方法としては、開頭手術のほか、内視鏡を用いた低侵襲手術があり、患者さんの状態や施設の体制に応じて使い分けられています。

手術を行った場合であっても、その後の血圧管理や全身管理、リハビリテーションの継続が、回復を左右する重要な要素といえるでしょう(※2)。

回復とリハビリ|再発を防ぐためにできること

命の危機を乗り越えたあとも、すぐに元の生活に戻れるとは限りません。脳出血からの回復には時間がかかり、その過程を支えるのがリハビリテーションです。

この章では、脳出血後のリハビリの目的や進め方に加えて、再発を防ぐために日常生活でできることを、血圧管理を軸に整理して説明します。

脳出血後のリハビリの目的

脳出血後のリハビリの目的は、低下した身体機能や生活動作をできるだけ回復させることと、合併症や生活機能のさらなる低下を防ぐことです。

運動まひや歩行障害だけでなく、疲れやすさ、注意力の低下、日常生活動作の不安定さなどもリハビリの対象になります。

脳出血後、全身状態が安定した段階から、できるだけ早期に段階的なリハビリを開始することが推奨されています(※1)。

ただし、リハビリの内容や量は一律ではなく、出血の部位や重症度、年齢、合併症などを考慮して個別に調整され、無理に動かすことよりも、「安全に、継続できる形で行うこと」が重要です。

高血圧と向き合う生活習慣の見直し

脳出血と高血圧は深く関係しているため、回復期以降も血圧を安定させる生活習慣が重要になりますが、血圧管理というと薬のイメージが強いかもしれませんが、日々の過ごし方も大きく影響します。

塩分を控えた食事、体調に合わせた運動、体重管理、飲酒量の見直し、禁煙などは、血圧を整える基本とされています(※2)。

すべてを一度に変えようとする必要はありません。できることを無理なく続けることが、結果的に血圧の安定につながります。リハビリとして体を動かすことも、その一助になります。

脳出血を再発させないためのポイント

脳出血を再発させないために最も大切なのは、血圧管理を続けることです。症状が落ち着いても、医師の指示に従って薬を服用し、定期的な通院を続けることが再発予防への一歩となります。

また、普段と違う症状や体調の変化に気づいたときは、早めに医療機関へ相談することが安心につながり、家族が服薬や通院をサポートしたり、生活環境を整えたりすることも大切です。

脳出血後の再発予防は、短期間で終わるものではありません。回復とともに、数年単位の長い目で取り組んでいくことが重要です。

まとめ

脳出血は、高血圧と深く関係する病気です。治療によって命の危機を乗り越えたあとも、回復には時間がかかり、リハビリや生活習慣の見直しが重要な役割を担います。

リハビリは、体の動きや日常生活のしづらさを改善するだけでなく、体力の低下や合併症を防ぐためにも欠かせません。無理をせず、自分の状態に合ったペースで続けていくことが大切です。

また、脳出血の再発を防ぐうえで、血圧管理は最も重要なポイントです。薬による治療に加え、食事や運動など日々の生活習慣を整えることが、再発リスクを下げることにつながります。すべてを完璧に行う必要はなく、できることを少しずつ続けていく姿勢が大切です。

脳出血からの回復と再発予防は、短期間で終わるものではありません。医療スタッフや家族の支えを受けながら、長い目で回復と予防に取り組んでいくことが、安心した生活につながります。

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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。

◆引用文献:
※1:日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」
※2:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」