
執筆:看護師 図司真澄
家庭で血圧を測っていると、「右の腕と左の腕で血圧が違うのは大丈夫?」と心配になったり、気になることはありませんか?
血圧は日々の体調や測定条件によって変動しやすく、多少の左右差は多くの人にみられる現象です。一方で、毎回大きな差が続く場合には、血管の状態などが関係している可能性が考えられます。
「どの程度まで様子を見てよいのか」「医療機関に相談すべき目安はどこなのか」などと迷う場面もあるかもしれません。
この記事では、血圧の左右差が生じる理由から、注意したいポイント、正しい測り方のコツまでを分かりやすく解説します。


血圧の左右差が生じるしくみと正常範囲の考え方
家庭で血圧を測定した際に右腕と左腕で数値が異なることはよくあることで、実は、左右の血圧がまったく同じになるほうが珍しく、多少の左右差は誰にでも起こる自然な現象です。
■ 腕の筋肉量や使い方の違い
利き腕はよく使うため筋肉量が多くなり、血管がわずかに圧迫されやすいため血圧が少し高めに出るということがある
■ 鎖骨下動脈(腕へ向かう血管)のルートの違い
左右では腕に向かう血管の「出発地点」が異なり、この構造の違いにより、左右で数mmHgほどの差が出ることがある
■ 測定したタイミングによる血圧の変動
血圧は測定するタイミングで変動しやすく、座った直後と落ち着いている時で血圧は異なり、また、姿勢の違いや血圧計の巻き方など、測定方法によって左右差が出ることもある
正常とされる左右差の目安とは?
一般的には、左右の血圧差が10mmHg未満であれば正常の範囲と考えられています。
ただし、測定のたびに10mmHg以上の差が続く場合には、血管の状態などが影響している可能性も否定できないため、自己判断せず医療機関で相談することが勧められます。
血圧の左右差が大きいときに考えられる原因
左右の血圧が“いつ測っても大きく違う”という場合、単なる生理的な差だけでは説明できないこともあります。
ここでは、代表的な理由を分かりやすく紹介します。
動脈硬化による血管の狭窄(閉塞性動脈硬化症)
動脈硬化が進むと、血管の内側が狭くなり、血液の流れが弱くなることがあります。
片側の血管だけが狭くなった場合、その腕への血流が低下し、血圧が低めに測定されやすくなる傾向がみられます。その結果、左右差が目立つこともあるでしょう。
閉塞性動脈硬化症(ASO:Arterio-Sclerosis Obliterans)は、一般的には下肢(足の血管)に多い病気ですが、上肢の血管で起こる場合もあります。その際は腕への血流が低下し、血圧が低めに出やすくなるといえます。
さらに、動脈硬化が進行すると、狭窄にとどまらず、血管がほぼ塞がった状態(閉塞) に至ることもあります。
鎖骨下動脈狭窄症
左右の腕へ血流を送る「鎖骨下動脈」に狭い部分があると、その腕の血圧が低く出ることがあります。どちらの腕の血圧が高くなるかは、左右のうちどちら側の血流が低下しているかによって異なるといえるでしょう。
鎖骨下動脈が狭くなる主な原因として知られているのが動脈硬化です。動脈硬化により血管の内側が厚くなったり硬くなったりすると、腕へ向かう血流が弱まり、血圧の左右差として現れることがあります。
また、血流が弱くなると…
- 腕のだるさや重さ
- 力が入りにくい感じ
- しびれ、冷たく感じる
- 腕を使うと疲れやすい
といった症状がみられることがあります。ただし、症状がまったく現れない場合もあります。
大動脈炎症候群(高安動脈炎)
大動脈炎症候群(高安動脈炎)は、大きな動脈に炎症が起こることで血管が狭くなることがある病気です。
血液の流れが弱くなると その腕の血圧が低く測られやすくなるため、左右差につながることがあります。この病気は 若い女性に多いとされ、頻度としては高くありません。
一般的にみられる症状としては、
- 脈が弱い、触れにくい
- 発熱やだるさなど全身の不調
- めまい、立ちくらみ
などがありますが、症状が軽い・気づきにくい場合もあります。
大動脈解離・大動脈瘤
大動脈解離や大動脈瘤は、心臓から全身へ血液を送る「大動脈」にトラブルが起こる病気です。
- 大動脈解離:大動脈の壁の内側が裂け、血流の通り道が変わる
- 大動脈瘤:大動脈の一部がこぶのようにふくらむ
これらが起こると、腕へ向かう血流が通常と変わってしまい、左右の血圧が大きく違って測られることがあります。
正しい血圧の測り方

家庭での血圧測定は、日々の体調や血圧の傾向を把握するための大切な習慣です。
ただ、血圧は測り方によって大きく変わることがあるため、正しい手順で測ることがとても重要です。
ここでは、家庭で血圧を測るときに気をつけたいポイントを、わかりやすくまとめました。
血圧計は「上腕で測るタイプ」を選ぶ
家庭用の血圧計にはいくつか種類があります。
腕(上腕)に巻いて測るタイプ が正確な値が出やすいため推奨(※1)。手首で測るタイプは便利ですが、不正確な値になりやすいという特徴があります。
測る環境を整えることが大切
血圧は、周りの環境や体の姿勢で大きく変わります。
次のような状態を整えてから測りましょう(※1)。
- 静かで落ち着ける場所に座る
- 背もたれに寄りかかり、足を組まない
- 測る前に 1〜2分ほどゆっくり休む
- 腕の位置は 心臓の高さに合わせる
- 測る前のコーヒー、運動、入浴、喫煙、アルコールは避ける
これだけでも、測定のバラつきがぐっと減ります。
また、基本的には利き手と反対側の腕で測定することが推奨されています。
週に1~2回は左右どちらも測定してみて、血圧の左右差をチェックし、左右差が大きい場合は医師に相談しましょう。
測るタイミングは「朝」と「寝る前」
1日の中で血圧は変動するため、どの時間帯で測定しているかがとても大切です。
家庭で測る場合は、次の2つが基本になります(※1)。
● 朝
- 起きて1時間以内
- トイレを済ませた後
- 朝食や薬を飲む前
- 座って1〜2分経ってから測る
● 夜
- 寝る前
- 座って1〜2分経ってから測る
この2つを記録しておくことで、自分の血圧の傾向がより正確に分かります。
また、血圧は測るたびに少し変動するため、測定は1回だけではなく、2回測ってその平均値を参考に記録しましょう。
記録は必ず残しておく
血圧は体調や睡眠、ストレス、食事などの影響で毎日変動するため、測定の記録をするだけではなく、食事内容や食事をした時刻、睡眠時間など日々の記録をしておくことがとても大切です。
記録はノートや血圧手帳に書き残す方法はもちろん、スマホのアプリを使う方法でも構いません。
アプリを活用すると、測った値が自動で保存され、後からグラフで振り返ることができるため、血圧の変化に気づきやすくなります。また、記録忘れを防ぐ通知機能や、医療機関への共有がしやすい点も便利です。
毎日の記録を続けていると、いつもより高い日が続いていないか、朝と夜でどのような違いがあるのかなど、自分の血圧の傾向が次第に見えてきます。
こうした情報は、医療機関で相談するときにも役立ち、状況をより正確に伝えやすくなります。

参考:Welbyマイカルテ アプリ画面より
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血圧の安定につながる生活習慣のポイント

血圧は、体調や食事、睡眠、ストレスなど、日々の生活習慣の影響を受けやすいものです。普段の過ごし方を少し整えることで、血圧が安定しやすくなるとされています。
ここでは、血圧を良い状態に保つための習慣を紹介します。
食事を整える
塩分を控えめに
塩分をとりすぎると、体が水分をため込みやすくなり、結果として血圧が上がりやすくなるとされています。
そのため、日々の食事の中で次のような工夫をしてみましょう
- 味つけをいつもより薄めにする
- うどんの汁やラーメンのスープを飲まない
- 加工肉・インスタント食品など「塩分が多い食品」をとりすぎない
- 調味料は「かける」より「つける」方法で量を調整する
また、レモンや酢、香辛料、だしの旨味などを活用すると、塩分を減らしながらも満足感のある味になります。
脂質のバランスをとる
脂質をとりすぎると動脈硬化の進行につながりやすく、血管の負担が増えると言われています。
下記のような工夫が、血管の健康維持に役立ちます。特に、野菜や海藻、きのこ類は食物繊維が多く、塩分の排出を助ける働きも期待できます。
- 揚げ物を続けない
- バターやラードより植物油を使う
- 魚(特に青魚)・野菜・大豆製品を意識して取り入れる
- 外食では「焼く・蒸す・ゆでる」調理法を選ぶ
軽い運動を習慣にする
体を動かすことは血流をよくし、血管の柔らかさを保つために大切だとされています。
激しい運動でなくても十分で、日常生活に取り入れやすい運動 が続けやすいポイントです。
- ウォーキング
- ストレッチ
- 自転車こぎ
- ラジオ体操
- 軽い筋トレ(椅子を使ったスクワット、ゆっくり立ち座り など)
重要なのは 「少し息がはずむ」程度の動きを継続すること。1日10〜20分でもよいので、無理のない時間から始めてみましょう。
睡眠とストレスケアを大切にする
睡眠不足や精神的なストレスは、血圧が上がりやすくなる要因として知られています。「緊張が続く」「休む時間がない」状態が積み重なると、自律神経のバランスが乱れやすくなるためです。
次のような工夫が負担を軽くするのに役立ちます。
- 夜はスマホを早めに手放し、眠る準備の時間をつくる
- 深呼吸やストレッチで気持ちを落ち着ける
- 寝る時間・起きる時間をできるだけ一定にする
- 疲れを感じたら無理をせず早めに休む
- ぬるめのお風呂にゆっくり入る
これらは大きな変化でなくても、積み重ねることで心身の緊張が和らいで血圧が安定しやすくなると言われています。
たばこやお酒との付き合い方を見直す
たばこやお酒は、どちらも血圧に影響しやすい生活習慣のひとつです。
たばこは、動脈硬化の要因とされており、血管が狭くなりやすくなることから、血圧に負担がかかりやすくなります。いきなりやめるのが難しい場合は、本数を減らす・吸う間隔をあける・食後すぐに吸う習慣を見直すなど、できる範囲から工夫していくことが大切です。
一方、お酒は、飲み方によって血圧が上がりやすくなるため、飲む量を決めておく・ゆっくり飲む・休肝日をつくるといった工夫が役立ちます。完全に控える必要はありませんが、負担を減らす飲み方を心がけることで体が楽になることがあります。
まとめ
血圧の左右差は、体のつくりや測るタイミングなどの測定条件によって自然に起こることが多く、5〜10mmHg程度の差であれば一般的に見られる範囲です。
ただし、毎回大きな差が続く場合は、血管の状態が影響していることもあるため、そのようなときは一度きちんと測り方を見直したり、気になる点があれば医療機関に相談することで安心につながります。
また、正しい測り方や生活習慣を整えることは、左右差に限らず 血圧全体の安定につながる大切なポイントです。
健康管理の一環として、今日からできる範囲で血圧との向き合い方を見直していきましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」


