
執筆:看護師 図司真澄
高血圧の治療では、薬を長く飲み続けることで脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気を防ぐことができます。
一方で、薬には副作用が起こることもあり、安心して治療を続けるためには薬の特徴や注意点を知っておくことが大切です。
本記事では、高血圧の治療薬(降圧薬)の代表的な副作用と、症状が出たときの対処法、そして副作用を抑えながら薬を続けるための生活の工夫を分かりやすく解説します。


なぜ副作用が起こる?高血圧の薬(降圧剤)の基本を知ろう
高血圧は自覚症状が少ないまま進行し、脳や心臓、腎臓にダメージを与える「サイレントキラー」と呼ばれる病気です。
降圧薬は血管を広げたり、体内の水分や塩分のバランスを調整したりして血圧を下げ、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの重い合併症を防ぐための薬です。
食事や運動などの生活改善だけでは血圧が下がりきらない場合や、早期から管理が必要な場合に処方されます。
一方で副作用は、薬が血圧を下げるために働く仕組みそのものが体に強く影響することで起こってしまうことに。
たとえば血管を広げる薬では顔のほてりや頭痛、体内の水分量を減らす薬では電解質バランスの乱れや脱水が見られることがあります。
また、人によって薬の代謝スピードや腎臓・肝臓の機能が異なるため、同じ薬でも副作用の出方に差があるのも特徴です。
副作用を恐れて服薬をやめてしまうと血圧が再び上昇し、合併症のリスクが高まるため、薬の働きと副作用の仕組みを理解しておくことが重要です。
代表的な高血圧の薬と副作用
それでは高血圧の薬の種類と副作用について、解説します。
【関連記事】【保存版】高血圧の薬の全種類をわかりやすく解説|効き方・副作用・注意点を比較
Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)
血管の平滑筋に作用してカルシウムの流れを抑え、血管を広げて血圧を下げる薬です。効果が高く、高血圧と診断されたときに初めに処方される薬(第一選択薬)になります。
主な副作用は、顔のほてり・頭痛・足のむくみなどがあり、むくみが強い場合は薬の変更が検討されます。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
腎臓や心臓を守る効果も期待されるACE阻害薬は、血圧上昇の物質を作る酵素を抑える薬です。
主な副作用として、空咳・高カリウム血症・腎機能の一時的低下などが起こることがあります。
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンⅡ)の作用を抑えて血管を広げる薬です。
ACE阻害薬に比べて咳の副作用が少なく、安全性が高いとされています。
主な副作用として、高カリウム血症・腎機能低下、まれに血管浮腫などがあります。
利尿薬(サイアザイド系・ループ利尿薬)
利尿薬は、体内の余分な塩分や水分を排出して血圧を下げる薬です。サイアザイド系は軽度〜中等度の高血圧に、ループ利尿薬は心不全などで強力な利尿が必要な場合に使われます。
主な副作用として、電解質異常(低カリウム血症など)や脱水、高尿酸血症(痛風)があり、注意が必要です。
MR拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
MR拮抗薬は体内で血圧を上げるホルモン(アルドステロン)の働きを抑えて、塩分や水分の排泄を促し血圧を下げる薬です。
主な副作用として、高カリウム血症や腎機能障害があります。スピロノラクトンという薬では、女性化乳房などホルモンに関連した症状がみられることもあります。
交感神経抑制薬:β遮断薬・α遮断薬
β遮断薬は心臓の拍動を抑え、α遮断薬は血管を広げて血圧を下げる薬です。β遮断薬は、心不全や不整脈がある場合にも使われます。
主な副作用として、めまい・低血圧・徐脈・疲れやすさ・立ちくらみなどがあり注意が必要です。
ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
ARNIは、ARBの作用に加えて、血管を広げ心臓を保護する働きをもつホルモンの作用を長く保つことで、降圧効果を高める新しい薬です。
主な副作用として、低血圧・高カリウム血症・腎機能障害などがあり、ARBと同様に定期的な血液検査が推奨されます。
副作用が出たときどうする?受診の目安と対応法

すぐに病院へ行った方がよい危険サイン
副作用には緊急性の高いものとそうでないものがあります。
以下のような症状だけではなく、その他の症状でも生活に支障が出る場合は、休日や夜間でも迷わず受診してください。
- 呼吸が苦しい、唇や舌が腫れる、声がかすれる
ACE阻害薬などで起こる血管浮腫やアレルギー反応(アナフィラキシー)の可能性があり、窒息や血圧低下など命に関わる危険があります。 - 強いめまいや意識が遠のく、立てないほどのふらつき
薬の効き過ぎで血圧が急激に低下している可能性があります。 - 急な体重増加、全身のむくみ、尿量の減少
腎機能が低下しているサインかもしれません。
呼吸困難や血管浮腫などの症状が出た場合は、服用している薬の名前や飲んだ量、症状が出た時間などをメモしたり、スマートフォンに記録して、診察時に持参すると診察がスムーズになります。お薬手帳も忘れずに持参しましょう。
副作用が気になるときの医師へ相談のコツ
緊急性がなくても、むくみや咳・だるさ・立ちくらみなどが続く場合は放置せず医師に相談してください。
相談時は次の情報を伝えると判断がしやすくなります。
- 症状が出た日時、頻度、持続時間、生活への影響
- 薬を飲んだ時間や量、飲み忘れや追加服用の有無
- 家庭で測った血圧や脈拍、体重の変化
これら3点があれば薬の種類や量の調整、別の薬への切り替えがスムーズになります。
安心して薬を続けるための生活の工夫

副作用を減らすための生活習慣の見直し
血圧が安定すると減薬できる可能性があり、副作用を軽くすることにもつながるので、生活習慣を整えることを意識してみましょう。
気をつけたい生活習慣のポイントは以下の5つです。
減塩
1日6g未満を目標に塩分を控え、レモンや酢、香辛料で味付けしてみましょう。
外食や加工食品には多くの塩分が多く含まれているため、栄養成分表示を確認して食品を選ぶ習慣をつけることが、減塩と高血圧対策につながります。
【関連記事】高血圧を改善する食事法!注意すべき食材と栄養のポイント!
適度な運動
1日30分前後のウォーキングや軽い筋トレを週5日ほど続けるのが目安です。
急に激しい運動をすると血圧が下がり過ぎることがあるため、無理のない範囲で行いましょう。
【関連記事】運動で血圧を下げる~おすすめの有酸素運動と控えるべき運動~
体重管理
体重を1kg減らすごとに収縮期血圧は約1mmHg、拡張期血圧は約0.9mmHg下がると報告されています。※1
特にBMI25以上の肥満傾向がある人では、内臓脂肪を減らすことで降圧効果がさらに高まります。
無理なダイエットではなく、毎日30分程度の運動と減塩を意識した食事を組み合わせ、少しずつ体重を落としていくことが大切です。
十分な睡眠とストレス対策
規則正しい生活で自律神経を整え、血圧の変動を抑えましょう。
就寝前はスマホやテレビの光を避け、リラックスできる環境をつくることで深い眠りにつながり、翌朝の血圧も安定しやすくなります。
【関連記事】ストレスで高血圧に?意外な関係性と改善ポイントを解説
アルコールを控える
飲み過ぎは血圧を上げるだけでなく、薬の副作用を悪化させる原因になります。
薬の減量や中止を検討するときの注意点
血圧が安定していて低めにコントロールできていると、「薬を減らしたい」「やめたい」と希望される方も多くいます。
実際、血圧が十分に下がり生活習慣の改善が進んでいる場合には、医師の判断で薬を減らしたり中止が検討されます。
ただし、薬を急にやめると血圧が反動で上がり、脳卒中や心筋梗塞など重大な合併症のリスクが高まることも。
休薬した患者の約4人に3人は時間の経過とともに血圧が再上昇したというデータもあり、自己判断での中止は非常に危険といえます。 ※1
減薬や中止を行う際には、家庭血圧を毎日測定して経過を確認しながら、医師の指示に沿って少しずつ進めることが大切です。
特に冬は血圧が上がりやすく、夏は下がりやすい季節変動があるため、時期を含めた慎重な判断が必要になります。
薬を飲み忘れたときの対処法
降圧薬は毎日決まった時間に飲むことが基本です。
降圧薬を飲み忘れても、2回分を一度にまとめて飲むのは危険です。
薬の飲み方が1日1回なのか2回以上なのか、次の服用までどのくらい時間があるかなどによって対応方法が変わります。
どうすればよいか迷ったときは、自分で決めずに必ずかかりつけ医や薬剤師に相談してください。
旅行や出張などで生活リズムが変わるときは、ピルケースや1日ごとの分包、スマホのアラームなどを活用しましょう。
また、残りの薬が少なくなった時点で早めに受診しておくと安心です。家庭血圧の記録と一緒に服薬状況をメモしておくと、診察時に役立ちます。
食べ物・サプリと薬の意外な関係
血圧の薬は特定の食品やサプリと組み合わせると、薬が効きすぎたり逆に効果が弱くなったりすることがあります。
代表的な例として、カルシウム拮抗薬とグレープフルーツを同時に摂取すると、薬の分解が妨げられ血圧が下がり過ぎるため注意が必要です。
また、カリウムを多く含む減塩食品やサプリは、ARBやACE阻害薬などと併用すると血中のカリウムが増えすぎて不整脈を起こす危険があります。
健康食品やハーブ、ダイエットサプリなども作用が不明な場合があるため、新しい健康食品やサプリを始める際は医師や薬剤師に必ず相談してください。
まとめ|副作用を理解して無理なく治療を続けるために
血圧の薬は長期的に服用することが多いため、副作用の可能性を知っておくことが安心への第一歩です。
危険な症状が出たら早めに受診し、軽い症状の場合も記録して医師に伝えましょう。
生活習慣を整え、食品やサプリの注意点を守ることで、薬の効果を保ちながら副作用を抑えることができます。
自己判断で薬をやめず、医師や薬剤師と連携しながら安全に治療を続けていきましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」


