
執筆:看護師 図司真澄
血圧は「上」と「下」の2つの数値で示されますが、その差である「脈圧」も、体の状態を知るうえで重要な指標です。
脈圧が大きすぎると、心臓や血管に負担がかかることがあり、放っておくのは危険です。
本記事では血圧の上と下の差に注目し、原因やリスク、改善のポイントをわかりやすく解説します。


血圧の「上」と「下」って何?脈圧の基本を分かりやすく解説
上の血圧(収縮期血圧)
上の血圧は「収縮期血圧」と呼ばれ、心臓が収縮して血液を全身に押し出すときに血管にかかる圧力のことです。診断や治療の基準としては、病院で測る血圧(診察室血圧)が140mmHg以上であれば高血圧とされます。 ※1
下の血圧(拡張期血圧)
下の血圧は「拡張期血圧」といい、心臓が拡張して血液をため込むタイミングの血管にかかる圧力のことです。 拡張期血圧の場合、診察室血圧が90mmHg以上だと高血圧と診断されます。
高血圧ばかりに目が行きがちですが、拡張期血圧が低すぎる場合には、全身に血液が行き届きにくくなっていることもあるため、注意が必要です。※1
脈圧(血圧の差)の正常値
「脈圧」とは、上の血圧から下の血圧を引いた数値です。たとえば血圧が「130/80」なら、脈圧は50mmHgになります。 一般的に脈圧は40~60mmHg程度が正常範囲です。※2
この範囲から大きく外れる状態が続くと、血管や心臓に負担がかかる可能性があります。脈圧は単なる数値の差ではなく、血管の硬さや心臓の働きを映す大切な指標のひとつといえます。
血圧の上と下の差が異常なときの原因とリスク

脈圧が大きくなる場合と小さくなる場合では、背景にある原因や体への影響が異なります。早めの対策や受診につなげるためにも、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。
脈圧が大きい原因とリスク
脈圧が大きくなる代表的な原因が「動脈硬化」で、血管が硬くなると弾力を失い、血流を調整する力が弱まる状態に。
動脈硬化になると、心臓が血液を押し出すときは血圧が高くなり、心臓が拡張して血液をため込むときには、圧力が保てず下がりやすくなります。
その結果、脈圧が大きくなるのです。脈圧が大きい状態を放置すると、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスクが高まるといわれています。
【関連記事】高血圧が引き起こす動脈硬化とは?仕組みとリスク・予防法を徹底解説
脈圧が小さい原因とリスク
若年層では血管が柔らかいため、脈圧がやや小さいのは自然なことです。 血管の弾力がしっかり働き、血圧の上(収縮期血圧)と下(拡張期血圧)の差が大きく開かないためです。
一方で、心不全などのように心臓が血液を押し出す力が弱まると、収縮期血圧が十分に上がらず、脈圧が極端に小さくなることがあります。
脈圧の異常を放置するとどうなる?
脈圧が大きすぎると心臓や血管への負担が増し、放置すれば脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症につながる恐れがあります。
測定した血圧の数値に極端な差がある場合は、放っておかず生活習慣の見直しや医師の診察を検討することが重要でしょう。
脈圧を安定させるには?今日から始められる改善・予防法

脈圧が大きすぎる背景には、動脈硬化や高血圧といった生活習慣が深く関わっています。
ここでは、血圧を安定させながら生活全体を整えるための工夫を紹介します。
減塩とバランスのよい食生活を心がける
塩分の摂りすぎは動脈硬化や高血圧の原因になりかねません。 味噌汁を薄味にする、加工食品を減らすなどの工夫だけでも効果が期待できます。
さらに、野菜や果物に多いカリウムは塩分の排出を助け、血圧の安定に役立ちます。栄養バランスを意識して、体調を整えながら無理なく続けていきましょう。
無理のない運動習慣を取り入れる
ウォーキングなどの有酸素運動や、スクワットなどの筋トレは、血圧の安定に効果があります。
時間を作って運動するのが難しい場合は、通勤や買い物で歩く距離を少し増やす、家事の合間にスクワットをするなど、日常の中で体を動かせるよう工夫してみましょう。
運動後は気分転換や睡眠の質の改善にもつながり、翌日の体調も整いやすくなります。
質のよい睡眠で体を休める
睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、血圧や脈圧の変動を大きくします。就寝前はスマホを見すぎない、寝室を暗く静かに保つなど、眠りやすい環境を整えましょう。
十分な睡眠は血圧を安定させるだけではなく、日中の集中力や気分の安定にもつながります。
禁煙で血管の負担を減らす
たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させ、動脈硬化を進める大きな要因です。禁煙をすると早ければ数日で血流が改善し、息切れしにくくなるなど体の変化を感じられることがあります。
「なかなかやめられない」と感じる方は、禁煙外来などの医療機関に相談してみましょう。
脈圧を家庭でチェック!正しい測定方法と受診の目安

脈圧は家庭用の血圧計で測った「上の血圧」と「下の血圧」の差を計算すれば簡単に確認できます。
ただし、測定条件が整っていないと数値が安定せず、正しい判断が難しくなります。ここでは、自宅での測定ポイントと病院を受診すべきサインについて解説します。
家庭で正しく血圧を測るポイント
血圧は姿勢や時間帯などによって変動します。正確な数値を得るためには、以下の点に注意しましょう。
- 朝は起床後1時間以内(排尿後・服薬前・朝食前)、夜は就寝前
- 測る前に1~2分は安静にする
- 静かで快適な温度の部屋で行う
- 背もたれのある椅子に座り、足は床につけて組まない
- 腕帯(カフ)は心臓の高さに合わせる
【関連記事】血圧の正しい測定方法とは?注意点とアプリの活用について解説
測定値を記録して脈圧の変化を把握しておく
血圧は一度だけでなく、毎日の記録が大切です。 1回につき2回測定し、その平均値を記録することが推奨されています。
上(収縮期血圧)と下(拡張期血圧)の血圧の差(脈圧)も一緒に記録すると、変化に気づきやすくなります。
紙の血圧手帳、スマホアプリ、血圧計の自動保存機能など、続けやすい方法を選びましょう。
【関連記事】血圧を無料で記録・管理する方法まとめ|紙・アプリ・エクセルを比較
まとめ:脈圧を意識して理想の健康づくりにつなげましょう
血圧の「上(収縮期血圧)」と「下(拡張期血圧)」の差である脈圧は、普段あまり注目されない数字かもしれません。
しかし、脈圧は血管の状態を映す重要なサインで、動脈硬化や心臓の異常を早めに知る手がかりになります。放置すると脳卒中や心疾患などのリスクが高まるため、生活習慣の見直しや医師への相談が欠かせません。
本記事でご紹介した生活習慣のポイントを意識して、血圧の安定や体調の改善につなげましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
※2:一般社団法人日本離床学会「数値の裏を読む!脈圧異常と離床のリスク」


