
執筆:看護師 図司真澄
突然の鼻血に戸惑い、「病院に行くべきか」「様子を見てよいのか」と迷った経験はありませんか。高血圧だと、鼻血との関係が気になる人も多いでしょう。
大人の鼻血や、止まらない・繰り返す鼻血にはさまざまな原因があります。
本記事では、高血圧と鼻血の関係を整理し、考えられる理由や対処法、受診の目安を分かりやすく解説します。


高血圧とは?大人に多い症状と基本知識
高血圧は「症状がない病気」といわれることが多く、気づきにくい病気です。
しかし、血圧が高い状態が続くと、血管には少しずつ負担がかかります。まずは高血圧とはどのような状態なのか、基準値や特徴を整理しましょう。
高血圧の基準値
一般に高血圧とは、診察室で測定した血圧が収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上の状態が続くことをいいます。家庭で測定する血圧では、収縮期血圧が135mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上が目安とされています(※1)。
一時的に血圧が上がることは誰にでもありますが、高血圧は「高い状態が慢性的に続く」点が特徴です。高血圧になる背景には、さまざまな要因が関係しています。
加齢によって血管の弾力が低下することに加え、塩分の多い食生活、運動不足、肥満、過度の飲酒、喫煙、慢性的なストレスなどが重なると、血圧は上がりやすくなります。また、遺伝的な体質や生活習慣の影響を受けやすい人もいます。
こうした要因が積み重なることで、血管には常に強い圧がかかり、少しずつダメージが蓄積していきます。その結果、全身の血管が傷つきやすくなり、鼻の中のような細い血管が集まる部位では、出血という形で変化が表れることもあります。
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高血圧で起こりやすい症状
高血圧は、自覚症状がほとんどないまま進行するケースが多く、「サイレントキラー」と呼ばれています。
日常生活では特に不調を感じなくても、体の中では血管に負担がかかり続けている点が特徴です。そのため、高血圧と診断されても実感がわかず、治療や生活改善を後回しにしてしまう人も少なくありません。
一方で、高血圧の背景に体の別の病気が関係している場合や、血圧が高い状態が長く続いて体に負担がかかっている場合には、注意が必要なサインが現れることがあります。
例えば、これまでに体重が増えやすくなった、代謝の異常を指摘された、いびきや睡眠中の無呼吸を家族に指摘されたといった状況は、他の病気が血圧に影響している可能性があります。
また、血圧の高い状態が続くことで、脳や心臓、腎臓などの大切な臓器に負担がかかると、頭痛やめまい、視界がかすむ、動悸や息切れといった症状が現れることがあります。これらは高血圧そのものの症状というよりも、血圧が高い状態が続いた結果として体に現れる変化と考えられています。
このように、高血圧は「症状がないから安心」と言い切れる病気ではありません。自覚症状が乏しくても、体の中では変化が進んでいることがあるため、早めの気づきと管理が重要になります。
高血圧と鼻血は本当に関係あるのか
高血圧で鼻血が出やすくなる理由
結論から言うと、高血圧があると鼻の血管に負担がかかり、鼻血が出やすくなったり、出た場合に止まりにくく長引いたりすることがあります。
これは、高血圧による血管への圧の影響に加えて、動脈硬化による血管のもろさが関係しているためです。
高血圧の状態が続くと、血液が血管の内側を強く押し続け、血管の壁に慢性的な負担がかかります。さらに、加齢や生活習慣の影響で動脈硬化が進むと、血管は本来のしなやかさを失い、硬くてもろい状態になります。鼻粘膜の血管はもともと細く、表面に近い位置にあるため、こうした変化の影響を受けやすく、ちょっとした刺激や乾燥でも傷つきやすくなります。
鼻血が止まらない場合、入院するケースも
実際の臨床報告では、高齢者や高血圧のある人では、鼻血が起こりやすいだけでなく、出血後に血管が十分に縮まず、出血が長引いたり、繰り返したりする可能性が報告されています。※2
特に、鼻の奥のほうなど出血している場所が分かりにくい場合には、焼いて止血する処置が難しく、ガーゼなどで圧迫する治療が必要になることもあります。
鼻血はすぐ止まるだろうと思われがちですが、出血が止まらず入院して治療する方もいます。
このように、高血圧と動脈硬化が重なることで、鼻の血管は「出血しやすく、止まりにくい」状態になりやすいと考えられます。鼻血が続く場合には、鼻の局所的な問題だけでなく、血圧や血管の状態にも目を向けることが大切です。
高血圧以外に考えられる大人の鼻血の原因

鼻血が出ると「高血圧が原因ではないか」と考える人は多いものの、実際には大人の鼻血にはさまざまな要因が関係します。研究では、鼻血は小児と高齢者にも多く、全体として男性に多い傾向があることも報告されています。※3
大人の鼻血を理解するには、高血圧以外の視点から原因を整理することが大切です。ここでは、日常生活の中で関係しやすい代表的な原因を見ていきます。
ストレスや自律神経の乱れによる鼻血
ストレスは鼻血の直接的な原因とはなりません。
ただし、強い緊張や精神的な負担が続くと、自律神経のバランスが乱れ、血管の働きが不安定になることがあります。その結果、鼻の粘膜にある細い血管が刺激に弱くなり、乾燥や炎症がある場合には鼻血が起こりやすくなります。
また、ストレスがかかる場面では、血圧が一時的に上がることがあります。血圧が上がると出血が長引きやすくなるため、鼻血が起きた際に「止まりにくい」と感じることがあります。
このように、ストレスは鼻血の原因そのものではありませんが、鼻血が起こりやすく、長引きやすい状態をつくる背景として関係していると考えられます。
【関連記事】ストレスで高血圧に? -意外な関係性と改善ポイントを解説-
花粉症・鼻炎・鼻の乾燥
大人の鼻血で多い原因の一つが、鼻の粘膜そのもののトラブルです。花粉症やアレルギー性鼻炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、風邪などによって鼻の中に炎症があると、粘膜は敏感になり、少しの刺激でも出血しやすくなります。
また、空気が乾燥する冬の時期は、鼻の粘膜が乾きやすく、血管が露出しやすい状態になります。実際、国内の研究でも、鼻血に対する治療は12月から2月の冬季に多くなる傾向が確認されており、季節的な乾燥が鼻血に関係している可能性が示されています。※3
乾燥した粘膜は傷つきやすいため、鼻をかんだり、無意識に触ったりするだけでも出血につながることがあります。特に暖房の効いた室内で長時間過ごす生活環境では、鼻の中が乾燥しやすく、鼻血のリスクが高まりやすいと考えられます。
このように、花粉症や鼻炎といった炎症に加え、冬の乾燥という季節要因が重なることで、高血圧がなくても鼻血が起こることは珍しくありません。
鼻血を繰り返す場合に考えられる病気
鼻血が何度も繰り返し起こる場合、鼻の中の乾燥や炎症や高血圧だけでなく、他の全身の病気が関係していることもあります。
頻度が多い、止まりにくい、左右どちらか一方から続くといった場合には、注意が必要です。
例えば、糖尿病では血糖値が高い状態が続くことで血管がもろくなり、循環器の病気を合併しているケースも少なくありません。その結果、鼻の粘膜の血管が傷つきやすくなり、鼻血を繰り返す一因になることがあります。
また、肝臓の病気が関係する場合もあります。肝臓は血液を固める働きを助ける成分を作る役割がありますが、肝機能が低下すると出血が止まりにくくなります。
血液の病気で血小板が少なくなる場合や、血液を固める仕組みに問題がある場合にも、鼻血が長引いたり繰り返したりすることがあります。
さらに、心筋梗塞や脳梗塞などの治療で、血液を固まりにくくする薬を服用している人では、鼻血が止まりにくくなることがあります。薬の影響による出血は珍しいことではなく、自己判断で薬を中止せず、医師に相談することが大切です。
鼻血を繰り返す場合には、「よくあること」と片付けず、背景に病気が隠れていないかを確認することが重要です。気になる症状が続くときは、早めに医療機関で相談しましょう。
鼻血が止まらないときの正しい対処法
突然鼻血が出ると、慌ててしまい、誤った対応をしてしまう人も少なくありません。
しかし、鼻血の多くは正しい方法で対応すれば落ち着くことがほとんどです。特に、高血圧がある人や、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人は、落ち着いた対処が重要になります。
ここでは、自宅でできる基本的な止血方法と、避けたほうがよい対応について整理します。
自宅でできる鼻血の止め方
鼻血が出たときは、まず椅子に座り、少し前かがみの姿勢をとります。慌てずに落ち着くことが、止血を早める第一歩です。
次に、親指と人差し指で鼻のやわらかい部分をしっかりつまみ、そのまま5〜10分ほど圧迫します。このとき、途中で何度も確認せず、一定時間しっかり押さえ続けることが大切です。
可能であれば、鼻の付け根や頬を冷やすことで、血管が収縮し、止血しやすくなることもあります。出血が落ち着いたあとは、再出血を避けるためにもしばらく強く鼻をかんだり、触ったりするのは避けましょう。
やってはいけないNG対応
鼻血が出たときに上を向いて安静にする対応は避けましょう。
上を向くと、血液が喉に流れ込み、気分が悪くなったり、吐き気を催したりすることがあります。また、実際の出血量が分かりにくくなり、適切な判断が遅れる原因にもなります。
さらに、出血中に頻繁に鼻をかんだり、鼻の中にティッシュを強く詰め込んだりすることも逆効果です。固まりかけた血の塊がはがれ、出血が長引くことがあります。無理に血の塊を取り除く行為も控えましょう。
特に血圧が高い人では、慌てたり不安になったりすることで血圧が上がり、鼻血が止まりにくくなることがあります。
落ち着いて対応することが重要です。長時間圧迫しても止まらない場合や、何度も鼻血を繰り返す場合には、無理に自宅対応を続けず、医療機関での診察を検討しましょう。
受診の目安|高血圧と鼻血で病院に行くべきケース

鼻血の多くは自宅での対応で落ち着きますが、すべてが様子見でよいとは限りません。特に、大人の鼻血や、高血圧・持病がある場合には、受診が必要なケースもあります。
ここでは、「どのような鼻血なら病院に行くべきか」「何科を受診すればよいか」「血圧管理の重要性」について整理します。
鼻血を繰り返す・大量に出る場合は要注意
短時間で止まる鼻血であれば心配ないことが多いものの、何度も繰り返す場合や、量が多くなかなか止まらない場合には注意が必要です。特に、片方の鼻からばかり出る、圧迫しても20分以上止まらないといった状況が続く場合は、鼻の中に原因が隠れていることもあります。
また、高血圧がある人では、出血の勢いが強くなったり、止まりにくくなったりすることがあります。めまい、動悸、息切れなどの症状を伴う場合や、普段と明らかに違う鼻血が出た場合には、早めの受診を検討しましょう。
何科を受診すべきか
鼻血が続く場合、基本的には耳鼻咽喉科の受診が適しています。
耳鼻咽喉科では、鼻の中を直接確認し、出血している場所を特定したうえで、必要に応じた処置を行うことができます。
一方で、血圧が非常に高い状態が続いている、糖尿病や血液の病気がある、血液を固まりにくくする薬を服用しているといった場合には、内科での相談も重要です。状況によっては、耳鼻咽喉科と内科の両方で連携して診療が行われることもあります。
血圧管理が鼻血予防につながる理由
鼻血をきっかけに、「自分の血圧は普段どのくらいなのだろう」と気になった人もいるかもしれません。
高血圧があると、鼻の血管に負担がかかりやすく、鼻血が出やすい、あるいは止まりにくい状態につながることがあります。そのため、血圧の状態を把握しておくことは、鼻血への向き合い方を考えるうえでも大切です。
最近では、家庭用の血圧計とスマートフォンを連携させ、測定するだけで自動的に記録が残る仕組みが広く使われています。数値がグラフで表示されるため、日々の変化を視覚的に確認でき、「忙しい日は高くなりやすい」「鼻血が出た前後で血圧に変化があった」といった気づきにつながることもあります。
医療の現場では、受診時に血圧の記録があると、状況を把握しやすくなります。
医師や看護師にとっても、「いつ頃から高めなのか」「日常生活でどの程度変動しているのか」が分かることで、より具体的な説明やアドバイスがしやすくなります。限られた診察時間の中でも、話がスムーズに進むというメリットがあります。
血圧管理は、完璧を目指す必要はありません。朝や夜など決めたタイミングで測り、スマホに残すだけでも十分です。
鼻血をきっかけに、無理のない方法で血圧と向き合うことが、鼻血の予防だけでなく、将来の健康管理にも役立っていきます。
まとめ
高血圧があると、鼻の血管に負担がかかり、鼻血が出やすくなったり、止まりにくくなったりすることがあります。一方で、大人の鼻血にはストレスや鼻の乾燥、炎症、病気など、さまざまな原因が関係するため、鼻血だけで高血圧と決めつける必要はありません。
鼻血を繰り返す場合や止まりにくい場合には、正しい対処を行い、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。鼻血をきっかけに血圧を見直し、無理のない方法で管理を続けることで、将来の健康を守る一歩につなげましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献:
※1:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
※2: 藤 さやか・平井 美紗都・茂原 暁子 他(2016)「鼻出血症例の再出血リスクの検討」 『日本耳鼻咽喉科学会会報』119(8):1117–1126.
※3: Makihara S, Uraguchi K, Fujimoto S, et al.(2025)Nationwide descriptive epidemiological study of epistaxis treatment using the national database of Japan. Auris Nasus Larynx 52(5):575–580.


