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【医師監修】患者さん向け|高血圧ガイドライン2025をやさしく解説|血圧目標と治療法の基本

【患者さん向け】高血圧ガイドライン2025をやさしく解説|血圧目標と治療法の基本

【本記事の監修医師】 八田 告 先生
医療法人 八田内科医院 院長・理事長
高血圧管理・治療ガイドライン2025 執筆委員

本記事は、患者さんに向けて「高血圧管理・治療ガイドライン2025」についてわかりやすく解説し、患者さんに知っておいていただきたいポイントを整理しています。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025とは?

高血圧管理・治療ガイドラインは、日本高血圧学会という高血圧の専門家団体が、高血圧に関する国内外の最新の研究成果(エビデンス)に基づいて作成する高血圧の診療指針です。

前回の改訂は2019年に行われ、今回の2025年版は実に6年ぶりの改訂となります。これまでのガイドラインは主に高血圧を診療する医師など医療関係者が使用することを想定していました。

しかし、2025年版では、新たに「患者」が利用者対象として加わりました。この変更は、医師に任せきりにするのではなく、患者さん自身が高血圧に関する正しい情報を理解し、日常生活での血圧管理や治療の実践に生かすことを目的としています。

このようにガイドラインを「医師だけが使うもの」から「医師と患者さんがともに活用するもの」へと発展させることで、より良い治療につながることが期待されています。

患者さんが知っておくべきガイドラインのポイント

スマートフォンアプリを活用した血圧管理

① 血圧目標は「すべての方で130/80mmHg未満」に統一

これまでのガイドラインでは、年齢や合併症の有無によって目標血圧が異なっていました。例えば、75歳以上の高齢者や糖尿病を合併している患者さんには、目標値を少し緩やかに設定する場合もありました。

しかし、2025年版では診察室で測る血圧は「130/80mmHg未満」、家庭で測る血圧は「125/75mmHg未満」と明確に統一されました。年齢や背景疾患にかかわらず、この数値を下回ることで脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを下げられるという研究結果が多数示されてきたためです。

家庭血圧の目標が診察室よりも低めに設定されているのは、診察時の緊張や環境の影響で血圧が高く出やすい(いわゆる「白衣高血圧」)ためであり、家庭での測定はリラックスした状態で行えるため、実際の体の状態をより正確に反映するといえます。

基準が明確になったことで、患者さん自身が目指すべき血圧の目標を理解しやすくなりました。今後は、医師と患者さんが血圧目標値を共有しながら血圧管理を進めることが期待されます。

② 家庭血圧の重視(早朝高血圧に注意)

2025年版では、診察室での血圧測定に加えて「家庭血圧」の重要性が改めて強調されています。家庭での血圧記録がなければ、高血圧が十分にコントロールできているかどうかを正確に判断することは難しいといえます。

特に注意が必要なのは「早朝高血圧」(起床後1時間以内に測定した朝の血圧が高い状態)です。朝起きてすぐの時間帯に血圧が高い状態は、脳卒中や心筋梗塞などの重大な脳心血管疾患のリスクと強く関連しています。

一方で、診察室血圧のみでは、診察時の一時的な血圧値しか把握できないため、診察室での血圧が良好であっても、早朝高血圧など時間帯による血圧の乱れを発見できないことがあります。家庭で血圧を定期的に測定することで、一日の中で変動する血圧を把握でき、早朝高血圧のようなリスクも早期に発見できるようになります。

③ 高血圧改善のための生活習慣改善のポイント

2025年版では、生活習慣の改善内容が従来よりも具体的に整理されています。

高血圧を予防・改善するための生活習慣として、ナトリウム(塩分)の制限カリウムを多く含む食品を積極的に摂取すること、適正体重の維持軽度から中等度の有酸素運動節度ある飲酒禁煙十分な睡眠、そしてストレスのコントロールが推奨ポイントです。

これらの生活習慣を取り入れることで血圧を下げる効果が期待できると同時に、脳卒中や心筋梗塞といった心血管疾患の予防にもつながるといえます。

なかでも注目すべきは、「ナトカリ比」「レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)」「スマートフォンアプリの活用」という新たな3つの視点です。

「ナトカリ比」
「ナトカリ比」とは、尿中のナトリウム(塩分摂取を反映)とカリウム(野菜や果物の摂取を反映)の比率を指します。研究により、ナトリウムやカリウムの量を単独で評価するよりも、ナトカリ比を用いる方が血圧との関連が高いことが分かっており、今後の活用が期待されています。

「レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)」
運動について、従来のウォーキングなど有酸素運動中心の推奨に加え、「レジスタンス運動(筋トレ)」も新たに推奨されました。スクワットやゴムチューブ、ボールを使った運動などで、有酸素運動とほぼ同等の血圧低下効果が確認されています。

「スマートフォンアプリの活用」
スマートフォンアプリを活用した血圧管理も新たに推奨項目に加えられました。アプリで血圧測定値を自動記録し、グラフ化することで、患者さん自身が血圧の変化を視覚的に把握しやすくなります。加えて、医師と患者さんとの間で測定データを共有することで、治療効果の評価や生活習慣の改善に向けた連携がよりスムーズに進むでしょう。

④ 薬物治療は早めに開始

これまでの診療現場では、まず生活習慣の改善を行い、その結果を一定期間観察したうえで薬物治療を始めることが一般的でした。しかし、2025年版では「生活習慣の改善を始めても目標血圧に到達しない場合は、1か月以内に薬物治療を導入する」ことが明確に示されています。

これは、血圧が高い状態が長く続くと、脳や心臓、腎臓などの臓器に負担が蓄積してしまうことで、将来脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの合併症を引き起こすリスクを高めてしまうからです。早い段階で薬物治療を開始することで、こうした合併症のリスクを下げ、将来的な健康被害を予防できると考えられています。

この方針は「高血圧になったらすぐに薬を」という意味ではなく、患者さんの血圧値や生活状況に応じて、適切なタイミングで治療を始めることを重視しているものです。

主治医と相談し、生活習慣の改善による血圧改善を基本としつつ、目標の血圧値に血圧を下げることが生活習慣の改善だけでは難しい場合には、お薬の力も借りて速やかに血圧を下げ、医師と協力して血圧値を目標値内にコントロールし続けることが重要です。

⑤ 高齢者も積極的に治療

これまでのガイドラインでは、高齢者に対しては「低めの血圧目標を設定すると転倒やふらつきが増えるのではないか」という懸念から、目標値をやや緩やかに設定する傾向がありました。

しかし、2025年版では、75歳以上の高齢者でも原則として「130/80mmHg未満」を目指すことが推奨されました。これは、高齢者であっても、血圧を適切に下げることで、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気を防げることが研究で示されてきたためです。

ただし、ふらつきやめまい等の身体の不調があったとしても目標を達成しなければならないということではありません。体調や生活の状況に応じて、少量の降圧薬から治療を始め、血圧の変化やふらつき、めまいなどの副作用を確認しながら調整していくことが重要です。必要に応じて主治医と相談し、無理のない範囲で血圧管理を継続することが望ましいでしょう。

高齢者の治療において大切なのは、「年齢を理由に治療を諦めないこと」です。高齢者であっても適切な治療を行うことで、健康寿命を延ばすことが期待できます。

知っておくべき「高血圧の10のファクト」

日本高血圧学会は、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」に基づき、国民向けに高血圧を正しく理解し、効果的に管理・治療できるようにするための啓発資料として「高血圧の10のファクト」を公表しています。

高血圧の10のファクト」は、高血圧の原因や予防、治療に関する重要な知識を10項目に整理したものであり、高血圧を早期に発見し、重症化を防ぐための指針といえます。管理や治療していくために、国民の皆さんに「知っておいてほしい」10の基本的事実をまとめたものです。

赤字・太字にしてあるポイントは、この記事の監修医師であり、高血圧管理・治療ガイドライン2025執筆委員でもある八田内科医院 八田告先生が「高血圧の10のファクト」の中でも特に着目してほしいとしたポイントです。

高血圧の10のファクト

  1. 高血圧は,将来の脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症の発症リスクを高める病気です
  2. 日本では,1年間に17万人が,高血圧が原因となる病気注1で死亡しています *1
  3. 日本の血圧コントロール状況は,主要経済国の中で最下位レベルです *2
  4. 上の血圧(収縮期血圧)を10mmHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減少します
  5. 高血圧の人では,年齢に関わらず,上の血圧を130mmHg未満,下の血圧を80mmHg未満まで下げると,それ以上の血圧に比べて,脳卒中や心臓病が少なくなります
  6. 生活習慣の改善(減塩,運動,肥満の是正,節酒など)で血圧は下がります
  7. 日本人の食塩摂取量は10g/日 と世界の中でも高く,高血圧の人は6g/日未満にすることがすすめられています *3
  8. 目標の血圧レベルに達するために,多くの高血圧患者では血圧を下げる薬が2種類以上必要です
  9. 血圧を下げる薬は,安価・安全で効果があり,副作用よりも血圧を下げる利益の方が大きいことがほとんどです
  10. 日本は家庭血圧計が普及しており,家庭での血圧測定は高血圧の診断と治療に役立ちます

注1:この場合の「病気」とは脳心血管病を指しています。

高血圧の10のファクト出典:
*1:The Lancet Regional Health – Western Pacific 2022;21: 100377.
*2:高血圧管理・治療ガイドライン2025,Lancet 2019; 394: 639–51.

(【参考データ】血圧コントロールされている割合(女性):日本29%,カナダ50%,ドイツ58%,米国54%,韓国53%。同(男性):日本24%,カナダ69%,ドイツ48%,米国49%,韓国46%)
*3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2025年版),高血圧管理・治療ガイドライン2025 ,エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023

 「高血圧の10のファクト」は、高血圧患者さんが日常生活の中で意識すべき行動指針であり、国民全体で共有すべき健康メッセージといえます。

日本では、諸外国と比較して血圧コントロールの達成率が低いという課題が明らかになっています。そのため、高血圧を抱える個人だけでなく、社会全体として血圧管理の改善に取り組むことが求められています。

まとめ|主治医と一緒に血圧管理を

高血圧管理・治療ガイドライン2025には、高血圧患者さんが日常生活で意識すべき重要な内容がまとめられています。

大きなポイントは以下の通りです。

  • 目標血圧は「すべての方で130/80mmHg未満」に統一
  • 家庭血圧を重視し、特に「早朝高血圧」に注意
  • 生活習慣改善ではナトカリ比やレジスタンス運動(筋トレ)、スマートフォンアプリの活用が新たに推奨追加
  • 生活習慣の工夫だけで十分に血圧が下がらない場合は、1か月以内に薬物治療を開始
  • 高齢者も年齢を理由にあきらめず、積極的に治療を進める

さらに、日本高血圧学会が公表した「高血圧の10のファクト」では、血圧測定・記録・生活習慣の改善といった基本的な行動を継続する重要性が示されています。日々の血圧測定や生活の見直しを積み重ねることで、脳卒中や心筋梗塞などの重大な心血管疾患を予防できるといえます。

高血圧管理・治療ガイドライン2025をきっかけに、患者さん自身が血圧管理に積極的に関わることが大切です。

不明な点や不安がある場合は、この機会に主治医に相談してみましょう。医師と患者さんが協力して血圧コントロールに取り組むことが、より良い治療結果と健康寿命の延伸につながります。

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参考文献
・日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025
・日本高血圧学会 日本高血圧学会からの提言「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」