
日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」の内容を反映し、更新しました
執筆:看護師 図司真澄
運動をすると血圧は一時的に上がるのか、それとも下がるのか。
高血圧の方や、日頃から血圧が気になる方にとって、気になる疑問ではないでしょうか。
そこで本記事では、運動後の血圧の変化とその理由をわかりやすく解説し、安心して続けられる運動習慣のコツをご紹介します。


運動中に血圧が上がるメカニズムと体への影響
運動中は、体を動かす筋肉にたくさんの酸素やエネルギーを送る必要があるため、心臓が血液を強く送り出すようになります。
その結果、血圧は一時的に上昇しますが、運動に適応するための自然な生理反応といえます。
特に筋トレなどのような強度の高い運動では、血圧が急に高くなりやすく、高血圧や心臓に持病がある方には注意が必要でしょう。
血圧が普段の値に戻るまでの時間
運動後、体はリラックスモードに切り替わり、血圧も自然と下がっていきます。血圧が戻るまでの時間は、運動の内容やその日の体調、気温などによって変わります。
汗をたくさんかいたり、暑い場所で運動した場合は、血圧が下がりすぎる「運動後低血圧」になることも。
そんなときは、急に立ち上がらず、しばらく座って様子を見るようにしましょう。
自分の体の状態を知るためにも、運動前後に血圧を測る習慣をつけると安心です。特に暑い日は脱水や熱中症にも注意が必要です。
運動前後にはしっかり水分補給をして、なるべく涼しい時間帯や場所を選んで運動することを心がけましょう。
注意が必要な血圧上昇パターンと見分け方
運動後に、1時間以上たっても血圧が高いままだったり、上の血圧が180mmHgを超えるような場合は注意が必要です。
頭痛、めまい、息切れなどの症状があるときは、すぐに運動をやめて休むようにしましょう。そして、必要であれば病院を受診してください。
普段から運動の前後に血圧を測っておくと、「今日は高いな」「ちょっと下がりすぎたかも」といった変化に早く気づけるようになります。
特に年齢を重ねると、体の反応が変わってくるため、自分のパターンを知っておくことが安心につながります。一方で、運動を避けすぎると筋力や体力が落ちてしまい、かえって血圧が上がりやすい体になってしまうことも。
無理のない範囲で、少しずつ運動を生活に取り入れることが大切です。
血圧を下げるための運動法と継続のコツ

血圧を安定させるには、毎日の生活の中で無理なく続けられる運動を取り入れることが大切です。
そこで以下にて、どんな運動が効果的か、どうやって続ければよいかをわかりやすく紹介します。
血圧を下げる有酸素運動の種類と効果
ウォーキング、ゆっくりしたジョギング、自転車こぎ、水中ウォーキングなど、息が少し上がる程度の有酸素運動がおすすめです。
1回30分程度の運動を毎日行うと、血管の柔軟性が高まり、結果として普段の血圧が下がることが期待できます。
ただ、毎日が難しい場合は、無理に長時間やる必要はないので、できる範囲で運動を習慣化していきましょう。また、通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常の中でも軽い有酸素運動は取り入れられます。
さらに、軽いダンスやラジオ体操も効果的です。音楽に合わせて体を動かすことで、楽しみながら運動を習慣化することが可能になります。
体を動かすことを「面倒」と感じず、「気持ちがいい」「楽しい」と思える工夫をしてみましょう。
血圧安定に役立つストレッチとその効果
ストレッチは筋肉の緊張をゆるめ、リラックス効果を高める運動です。
特に、寝る前や朝起きたときに取り入れると、自律神経のバランスが整い、血圧の安定にも役立ちます。肩や首、足など大きな筋肉をゆっくり伸ばすことを意識して、痛みを感じない範囲で行いましょう。
ポイントは、呼吸を止めず、ゆっくりと身体を伸ばすこと。
テレビを見ながら、入浴後の体が温まったタイミングなど、リラックスしやすい時間に行うと、より効果的に続けられるのでおすすめです。
ストレッチ後は深呼吸を数回行うと、副交感神経が優位になり、より血圧を下げやすい状態をつくれます。
【関連記事】運動で血圧を下げる~おすすめの有酸素運動と控えるべき運動~
安全に運動するための血圧測定のポイント

運動を安心して続けていくためにも、普段から自分の血圧の変化を知っておくことが重要です。
それでは以下、測定のタイミングや異常な変化への対応について説明します。
なぜ普段から血圧を測定することが重要なのか
血圧は日によって変動するため、「自分の普段の数値」を把握しておくことが大切です。
日々記録をつけておけば、体調の変化にも気づきやすくなり、診察の際にも参考になります。さらに、薬の効果を見直したり、生活習慣の改善が必要かどうかを判断する手がかりにもなるでしょう。
体調がすぐれない日やストレスが多いときには、血圧が高くなりやすい傾向があります。そうしたパターンを把握しておくことも、健康管理に役立ちます。
そこで、アプリや紙の血圧手帳など、自分に合った方法で気軽に記録する習慣を身につけてみてください。
また、血圧の数値だけでなく、睡眠や食事の状況も一緒に記録すると、より体調の傾向を把握しやすくなります。
【関連記事】血圧を無料で記録・管理する方法まとめ|紙・アプリ・エクセルを比較

血圧を測定する適切なタイミング
血圧を家庭で測る場合は、できるだけ毎日同じ条件で測定することが推奨されています。一般的には、
- 朝:起床後1時間以内で、排尿を済ませ、服薬前・朝食前に座った状態で測る
- 夜:就寝前、リラックスした状態で測る
といったタイミングが標準的な目安です。
また、運動の前後にも血圧を測ることで、どのように数値が変化するかを把握できます。
運動前は5分以上座って落ち着いてから測定するのが理想です。運動前に血圧が高い場合は、運動を中止しましょう。
一方で運動後は息が整い、体が落ち着いた状態になってから測定することで、正確な変化を確認できます。
【関連記事】血圧の正しい測定方法とは?注意点とアプリの活用について解説
運動後に、異常な血圧変動があったときの対処法
運動中や運動後にめまいや息切れ、頭痛などが出た場合は、まずは運動を中止し、座って安静にしてください。
それでも症状が続くときは、医療機関に相談しましょう。
また、上の血圧が180mmHgを超えるような場合も、無理をせず休むことが大切です。今後の運動の内容や時間を見直すきっかけになります。
日ごろから、少しずつ自分の体調と血圧の関係を知ることで、「今日は控えめにしよう」「今日は元気だから少し多めに歩こう」など、柔軟な判断ができるようになるとよいです。
さらに、定期的に通院している方は、医師と相談しながら運動習慣を見直すことで、無理のない範囲で安心して取り組むことができます。
自己判断せず、気になることがあれば早めに専門家に相談しましょう。
まとめ
以上、今回は運動後の血圧上昇について解説しました。
内容をまとめますと以下の通りです。
・運動中や直後の血圧上昇は自然な反応
・ウォーキングなどの有酸素運動は、続けることで血圧の安定につながる
・ストレッチや、血圧測定も習慣にすると安心
・高血圧の方でも、正しい知識と工夫で運動は安全に行える
毎日の少しの運動が、血圧を整え、健康を守ることにつながります。自分のペースで、できることから少しずつ始めていきましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆参考文献
日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」


