
執筆:看護師 図司真澄
健康診断や家庭血圧で「血圧が低めですね」と言われても、高血圧ほど深刻に考えずに過ごしている人は少なくありません。
一方で、朝から体が重かったり、食後にしんどさを感じたりして、「食事が原因なのでは?」と不安になることもあるでしょう。
本記事では、低血圧の人に本当に食べてはいけないものはあるのかを軸に、症状や原因を整理しながら、食事で気をつけたいポイントをわかりやすく解説します。


低血圧とは?血圧が低くなる原因と症状を簡単に整理
血圧が低いと聞いても、「体質だから仕方ない」「高血圧よりは安心」と考えてしまう人は少なくありません。
しかし、低血圧でも朝や食後にしんどさを感じる場合があり、原因や症状を整理しておくことが、食事や生活を見直す第一歩になります。
低血圧の基準値と正常血圧との違い
高血圧の基準値はよく耳にするものの、「どこからが低血圧なのだろう?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
実は、低血圧には高血圧のように明確な診断基準があるわけではありませんが、上の血圧(収縮期血圧)が100mmHg以下だと低血圧とされます。
大切なのは、血圧の数字だけで体調を判断しないことです。実際には、血圧が100mmHgを下回っていても、普段の生活で特に困っていない方もいます。
一方で、同じような数値でも、朝起きたときや食後に体がだるくなったり、しんどさを感じたりする方もいます。
低血圧について考えるときは、自分の血圧の傾向と、そのときの体調をあわせて見ることが大切です。次に紹介する症状や原因を知ることで、食事や生活習慣を見直すヒントが見えてきます。
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低血圧で起こりやすい症状
低血圧の症状というと、「めまい」や「立ちくらみ」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際には、それほどはっきりした症状が出ないまま、なんとなく体が重い、しんどい状態が続くというケースも少なくありません。
看護師として現場にいると、「検査では異常がないと言われたけれど、朝からだるい」「食後になると動くのがつらい」と訴える方に多く出会います。本人も「病気と言うほどではない」と感じているため、周囲に理解されにくく、我慢してしまうことも多々あるようです。
立ち上がったときのふらつきや、頭がぼんやりする感じ、集中力の低下などが低血圧でみられやすい症状です。これらは強い痛みを伴わないことが多いため見過ごされがちですが、日常生活の質を下げる原因になることがあります。
また、症状が出るタイミングにも特徴があり、朝起きた直後や、食後しばらくしてから体調が悪くなる場合は、血圧の調整がうまくいっていない可能性があります。「年齢のせい」「疲れているだけ」とせず、低血圧との関係を一度立ち止まって考えてみることが大切です。
低血圧の原因|起立性低血圧・食後低血圧
低血圧による不調は、「血圧が常に低い」ことだけが原因とは限りません。実際には、立ち上がったときや食後など、特定のタイミングで血圧が下がることで、しんどさを感じる人が多く見られます。代表的なのが「起立性低血圧」と「食後低血圧」です。
起立性低血圧は、横になった状態や座った状態から急に立ち上がったときに、血圧が下がってしまう状態です。
本来であれば、体は自動的に血圧を調整しますが、加齢や体質、自律神経の働きの影響で、その調整が追いつかないことがあります。その結果、立ちくらみやふらつき、頭がぼんやりする感じが起こりやすくなります。
もう一つが、食後低血圧です。食事をすると、消化や吸収を進めるために消化管への血流が増え、その影響で全身の血圧が一時的に低下することがあります。その結果、食後しばらくしてから、めまいやふらつきが起こりやすくなり、人によっては失神して転倒してしまう場合もあります。
特に、一度にたくさん食べたときや、炭水化物中心の食事をとったあとに起こりやすい傾向があります。
実際に、高齢者を対象とした複数の研究をまとめた解析では、65〜86歳の高齢者の約40%が、食後に血圧が大きく低下する「食後低血圧」を経験していることが示されています(※1)。
食後低血圧は自覚しにくいため、気づきにくいことも多いですが、食事の内容や食べ方が体調に影響している可能性があります。
このように、低血圧の不調は体質だけでなく、動作や食事のタイミングと深く関係していることが特徴です。
低血圧の人が食べてはいけないものは本当にある?

低血圧によるめまいやふらつき、食後のしんどさを経験すると、「食事に原因があるのでは」「何か避けるべき食べ物があるのでは」と不安になる人も多いでしょう。
この章では、低血圧の人に本当に“食べてはいけないもの”があるのかを、根拠をもとにわかりやすく解説していきます。
「完全にNGな食べ物」はあるのか
結論として、低血圧の人に「絶対に食べてはいけない」食品はありません。
また、栄養バランスが悪いこと自体が、低血圧の直接的な原因になるわけでもありません。ただし、食事内容や栄養の偏りによって、低血圧に伴う不調を感じやすくなることはあります。
低血圧は、体質や年齢、自律神経の働きなどが主な要因とされており、特定の栄養素の不足だけで起こるものではありません。
一方で、食事量が極端に少なかったり、栄養が偏った状態が続いたりすると、体力の低下やエネルギー不足につながり、めまいやふらつき、だるさといった症状が強く出やすくなることがあります。
このように、低血圧では「完全にNGな食べ物」を探すよりも、食べ方を工夫すること、そして栄養バランスを崩さないことが大切です。次の項目では、低血圧の人が特に注意したい食べ物や飲み物、食事の際の具体的なポイントを解説していきます。
摂り方に注意が必要な食べ物・飲み物
低血圧の人が意識したいのは、特定の食品を避けることよりも、体調に影響しやすい食べ物や飲み物を「どう摂るか」という点です。中でも、アルコール、糖質が多い食事は、摂り方によって血圧が下がりやすくなることがあります。
アルコールは血管を広げる作用があるため、量が多いと一時的に血圧が下がりやすく、めまいやふらつきにつながることがあります。
特に空腹時や体調がすぐれないときの飲酒は影響を受けやすいため注意が必要です。飲む場合は、量を控えめにし、食事と一緒にゆっくり摂ることが基本になります。
また、甘い飲み物や糖質の多い食事を一度に多く摂ると、消化・吸収に伴って消化管への血流が急に増え、その影響で食後に血圧が下がりやすくなることがあります。
特に早食いや大食いになった場合は、食後にめまいやふらつきを感じやすくなるので注意が必要です。主食・主菜・副菜をそろえ、食事量を分けてゆっくり食べることが対策になります。
このように、低血圧では食事や飲み物を過度に制限する必要はありません。ゆっくり食べる、一度にまとめて摂らないといった工夫を意識することで、体調の変化を感じにくくすることができます。
低血圧の人におすすめの食事と食べ方

低血圧が気になると、「何を食べればいいのか」「食事をどう変えればいいのか」と悩む人も多いでしょう。ただ、低血圧の食事対策は、特別な食品を取り入れたり、無理な制限をしたりすることではありません。
日々の食事を少し整え、食べ方を工夫することで、体調の波を感じにくくなることがあります。
血圧を安定させる栄養素
低血圧の人が意識したいのは、特定の栄養素で血圧を無理に上げることではなく、体が血圧の変化に対応しやすい状態を保つための栄養を、偏りなくとることです。
低血圧そのものの原因が栄養不足にあるわけではありませんが、栄養状態は体調の感じ方に影響します。理由として、血圧の調整には自律神経や血管の働き、筋肉量などが関係しており、それらは日々の食事によって支えられているためです。
エネルギーやたんぱく質が不足すると、疲れやすさやだるさを感じやすくなり、低血圧による不調が強く出ることがあります。
また、ミネラルやビタミンが不足すると、体調の回復力が落ちることもあり、具体的には、たんぱく質を含む食品(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など)を毎食のどこかで取り入れることが基本になります。
たんぱく質は筋肉や血管の材料となり、体力を保つうえで欠かせません。また、野菜や海藻、豆類などからミネラルやビタミンをとることで、体の調子を整えやすくなります。主食・主菜・副菜をそろえることが、結果的に栄養の偏りを防ぐ近道です。
このように、低血圧の人にとって大切なのは、「この栄養素をとれば改善する」という考え方ではなく、食事を抜かず、偏らず、無理のない形で続けることです。
朝食の重要性と食事のタイミング
低血圧が気になる人にとって、朝食は「血圧を上げるためのもの」というより、1日の体調を整えるための大切なきっかけになり、朝食をとることで、体が少しずつ活動モードに切り替わりやすくなります。
起床後は、もともと血圧が低めになりやすく、自律神経の切り替えにも時間がかかる状態です。そのまま朝食をとらずに動き始めると、エネルギーが不足した状態で活動することになり、立ちくらみやだるさ、午前中のしんどさを感じやすくなることがあります。
朝食は、量を多くする必要はありません。ごはんやパンなどの主食に、卵・納豆・ヨーグルトといったたんぱく質を少し組み合わせるだけでも、体への負担を抑えながらエネルギー補給ができます。朝は食欲が出にくい人も、無理にしっかり食べようとせず、少量から始めることで続けやすくなります。
また、食事のタイミングも体調に影響します。1日2食になったり、食事の間隔が空きすぎたりすると、血圧や体調の波を感じやすくなるため、できるだけ決まった時間帯に食事をとり、間隔を空けすぎないことを意識しましょう。
そうすることで日中のふらつきやしんどさを感じにくくなる場合があり、低血圧の人にとって朝食や食事のタイミングは無理なく整えることが大切です。
水分・塩分の考え方
低血圧が気になると、「水分や塩分を多めにとったほうがいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。確かに、水分や塩分は血圧の維持に関係しますが、やみくもに増やせばよいというものではありません。
体内の水分量が不足すると、血液量が減り、血圧が下がりやすくなります。そのため、脱水状態は低血圧の人にとって不調を招きやすい要因の一つです。
一方で、塩分については、高血圧との関係がよく知られているように、摂りすぎが別の健康リスクにつながる可能性もあります。低血圧だからといって、意識的に塩分を過剰にとる必要はありません。
日常生活では、まずこまめな水分補給を意識することが基本になります。喉が渇いてからまとめて飲むのではなく、起床後や食事の前後、外出時などに少量ずつ水分をとると、体への負担が少なくなります。特に暑い時期や体調がすぐれないときは、水分不足になりやすいため注意が必要です。
塩分については、通常の食事をとっていれば、不足することはほとんどありません。味付けを極端に薄くしすぎたり、食事量が少なかったりする場合は別ですが、基本的にはバランスのよい食事の中で自然に摂取できていれば十分です。
このように、水分と塩分は「多ければ多いほどよい」という考え方ではなく、不足させないことを意識するのがポイントです。日々の水分補給と食事内容を見直すことで、低血圧に伴う体調の波を感じにくくなることがあります。
まとめ
低血圧の人に「絶対に食べてはいけないもの」はありませんが、食事の量や食べ方、栄養バランスによって体調の感じ方が変わることがあります。
特に、アルコールや糖質の多い食事を一度に摂りすぎないこと、食後は急に動かないことは、めまいやふらつきを防ぐうえで重要です。
また、朝食を含めて食事のリズムを整え、水分不足を避けることも、日常のしんどさを軽くする助けになります。
低血圧を必要以上に怖がらず、自分の体調に合った食事の工夫を続けることが大切です。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献:
※1:Huang L, et al.Prevalence of postprandial hypotension in older adults: a systematic review and meta-analysis.Age and Ageing. 2024;53(2):afae022. doi:10.1093/ageing/afae022


