
執筆:看護師 図司真澄
「健康管理」は、多くの人にとって切実なテーマです。
実際、内閣府の令和5年度の調査では、男女ともに約3〜4割の人が「月に数日以上、体調が悪い日がある」と回答しており、年代を問わず体調面の不調を抱える人が少なくありません(※1)。
また、心理的なストレスが「要注意」の状態にある人は全体の約25%(※1)。こうした現状は、単に生活習慣の問題だけでなく、「何から始めればよいのか分からない」「続けるのが難しい」と感じている人が多いことも示しています。
本記事では、具体的な始め方や続けるコツ、そしてアプリやスマートウォッチといったツールを使った健康管理術まで、わかりやすく解説していきます。


なぜ健康管理は難しい?基本の考え方とつまずきやすいポイント
健康管理は大切だと分かっているのに、なぜか続かないと感じた経験はありませんか。
実は多くの人が同じところでつまずいており、その背景には「意志の弱さ」ではなく、健康管理そのものに対する考え方のズレがあります。
知識があっても続かない理由
医師や看護師をはじめとする医療従事者は、「病気になりにくそう」「毎日きちんと栄養バランスを考えた食事をしていそう」といったイメージを持つ人も多いかもしれません。
私自身も、以前はそう思っていました。その考えが大きく揺らいだのは、あるプロジェクトでフィリピンの病院を訪れたときのこと。
病院内を案内してくれたのは、その地域では有名な、権威ある先生でした。
案内の途中で、その先生が笑いながら「僕は糖尿病専門医なんだけど、食べることが大好きで、実は自分も糖尿病なんだ」と一言。地域の糖尿病患者さんから慕われる先生でも、自分の健康管理は難しいのだなと考えさせられる経験でした。
フィリピンは日本とは文化や医療環境が異なりますが、日本でも医療者は激務や不規則な生活、強いストレスにさらされがちです。
医療の知識があっても、健康管理を完璧に続けるのは決して簡単ではありません。
つまり、健康管理は「知識があるかどうか」だけではなく、「続けられる仕組みを作れるかどうか」が難しい課題なのです。
ただ、この話を聞いて「医療者でも難しいなら、自分には健康管理は無理だ」と思ってもらいたいわけではありません。
むしろ、健康管理が続かない原因は、知識や意識の不足ではなく、現実の生活に合っていないやり方にあるかもしれないということです。
だからこそ、必要なのは根性ではなく、忙しい毎日の中でも続けられる考え方や仕組みです。
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健康管理とは何をすることなのか
そもそも、健康管理とは本来、何をすることなのでしょうか。
健康管理というと、栄養バランスの整った食事を毎日とり、運動を欠かさず、十分な睡眠を確保する――そんな「理想的な生活」を思い浮かべる人も多いかもしれません。
確かに、それらをすべて実行できれば、身体にとっては理想的でしょう。
しかし、現実的な健康管理の目的は、生活を完璧に整えることではありません。健康管理とは、今の自分の体調や生活習慣を把握し、無理のない範囲で整えていくことです。
すべてを一度に変える必要はなく、「最近睡眠が足りていないかもしれない」「外食が続いているな」「あまり体を動かせていないな」といった気づきからで十分でしょう。
その中で、今の自分にとって負担が少なく、取り組みやすいところから手を付けていくことが健康管理の現実的な進め方です。
仕事や育児、介護などで忙しい毎日の中でも、健康管理は少しずつ積み重ねていくことができます。
そして、この記事を読んで健康管理について知ろうとしている皆さんは、すでにその第一歩を踏み出しています。
健康管理は何から始める?最初に整えたい3つの分野

健康管理を始めようと思ったとき、「結局、何から手を付ければいいのか分からない」と感じる人は少なくありません。
食事・睡眠・運動という3つの分野すべてを一度に整えようとせず、まずは “ 今の自分が無理なく見直せるところ ” から始めることが大切です。
食事:塩分・脂質・糖質の摂り方を意識し、無理なく整える
健康管理において食事は重要な要素ですが、「何をどれだけ制限するか」と考え始めると、かえって続けにくくなります。
特に、塩分・脂質・糖質の多い食事を無意識のうちに摂りすぎてしまうことや、野菜不足は、多くの人に共通する課題です。
塩分の摂りすぎは高血圧のリスクを高め、脂質や糖質の多い食事が続くと、肥満や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病につながりやすくなります。
とはいえ、特定の食品を「食べてはいけないもの」と決めつける必要はありません。
まず大切なのは、何をどれくらい摂っているかに気づくことです。
例えば、
- 外食や総菜が続いていないか
- 味付けの濃い料理を選ぶことが多くないか
- 甘い飲み物やお菓子が習慣になっていないか
こうした点を振り返るだけでも、食事の傾向は見えてきます。
そのうえで、自分が無理なく変えられる部分は何かを考えるのがおすすめです。
- うどんやラーメンなどの汁は全部飲まずに残す
- 揚げ物の頻度を少し減らす
- 甘い飲み物を水やお茶に替える日を増やす
- 味噌汁を具だくさんにして、野菜やきのこ、海藻を入れてみる
このように、普段の食事を少し見直すことを意識すると、食事全体のバランスは整いやすくなります。
一方で、「身体に良いと聞いたから」という理由だけで、特定の食品を毎日食べていれば安心と考えるのも注意が必要です。
どんな食品でも、偏りが続けば栄養バランスは崩れます。健康管理の食事は、何か一つに頼るのではなく、全体の傾向を見ながら調整していくことが大切です。
【関連記事】高血圧を改善する食事法!注意すべき食材と栄養のポイント!
睡眠:時間だけでなく「休養できているか」を見直す
睡眠は健康管理の土台となる要素ですが、日本では慢性的な睡眠不足が課題になっています。
仕事や家事、育児の影響で、睡眠時間が後回しになってしまうのは珍しいことではありません。
調査によると、日本人の男性の約36%、女性の約39%が睡眠時間が6時間未満とされており、理想的とされる6〜8時間の睡眠に比べると、短い人が多いのが現状です(※2)。
睡眠時間が不足すると、疲労が取れにくくなるだけでなく、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れ、食べすぎや間食が増えやすくなることも分かっています。
また、慢性的な睡眠不足は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める要因のひとつです。
睡眠改善というと「十分な睡眠時間」だけを目指しがちですが、健康管理の観点では、「睡眠で休養がとれている感覚(睡眠休養感)」も重要と言われています(※3)。
人によって適した睡眠時間があるため、自分の睡眠時間や生活リズム、体調を振り返り、自分に合った睡眠スタイルに近づけていきましょう。
- 平日と休日で就寝・起床時刻が大きくずれていないか
- 慢性的に睡眠時間が削られていないか
- 何時間寝ると、朝起きた時によく眠れた感覚があるか
こうした点を把握するだけでも、改善のヒントが見えてきます。
調整の方法としては、いきなり理想の睡眠時間を目指す必要はありません。
- 寝る時間を15分だけ早めてみる
- 休日も起床時刻を極端に遅らせない
- 就寝直前のスマホ使用を少し控える
といった小さな調整から始めることが、現実的な健康管理につながります。
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運動:特別な運動より日常の活動量を意識する
運動不足は多くの人が自覚している一方で、後回しになりやすい分野でもあります。
特に、デスクワーク中心の生活では、長時間ほとんど体を動かさない状態が続きがちです。
運動不足や座りっぱなしの生活が続くと、エネルギー消費が減るだけでなく、血流や筋力の低下を招き、肥満・糖尿病・高血圧など生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
これは、激しい運動をしていないこと自体よりも、「動かない時間が長い」ことが問題になるケースも少なくありません。
そのため、健康管理としてまず意識したいのは、日常の活動量です。
具体的には、
- 1日の歩数や活動時間
- 長時間座り続けていないか
といった点があげられます。
特別な運動が難しい場合は、以下のようなポイントを意識して調整してみましょう。
- 一駅分歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 1時間に1回は立ち上がる
こうした行動を積み重ねることが、運動面の健康管理として十分な意味を持ちます。
【関連記事】肥満と高血圧の関係|なぜ太ると血圧が上がるのか?改善のための食事・運動法
アプリ・スマートウォッチを使った健康管理の続け方

忙しい毎日の中で、「昨日は何時間寝たか」「最近あまり動いていないかも」と感じることはあっても、正確に振り返るのは意外と難しいものです。
アプリやスマートウォッチを使えば、こうした日々の健康状態を自然な形で把握しやすくなります。
アプリで食事・睡眠・運動をまとめて管理する
健康管理アプリの大きな役割は、自分の生活習慣や体調を「見える形」で振り返られるようにすることです。
食事や睡眠、運動について、毎日完璧に記録しようとすると負担になりますが、アプリを使えば最低限の入力や自動記録だけでも、傾向を把握できます。
例えば、
- 食事内容を簡単に記録して、外食や間食が多い日が分かる
- 睡眠時間を振り返り、短い日が続いていないか確認できる
- 運動量や歩数の変化を週単位で見る
このように、「できた・できなかった」ではなく「どういう傾向か」を知ることが、健康管理では重要です。
さらに、生活習慣病の治療を受けている人にとっては、アプリは治療と日常生活をつなぐツールとしても役立つでしょう。
例えば、血圧・血糖値 ・体重といった数値を記録することで、体調の変化や治療の経過を振り返りやすくなり、数値を日々入力・管理できるだけでなく、診察時に医師や医療者と情報を共有できるアプリもあります。
その結果、「数値が高かった日が続いていた理由」や「生活習慣の変化と体調の関係」といった点を、より具体的に話し合えるようになります。
重要なのは、アプリを使って完璧な管理を目指すことではありません。毎日入力できない日があっても問題なく、「気になったときに振り返れる」「変化に気づける」状態を作ることが目的です。
健康管理アプリは、「管理されるためのもの」ではなく、「自分の体を理解するための道具」です。
生活習慣病の治療中の人も、予防を目的とする人も、それぞれの立場に合わせた使い方ができる点が、大きなメリットといえるでしょう。
スマートウォッチで自動的にデータを把握する
健康管理が続かない理由の一つに、「記録が面倒」「つい忘れてしまう」という点があります。
スマートウォッチやスマートバンドなどのウェアラブルデバイスは、身につけているだけでデータを自動的に記録してくれる点が大きなメリットです。
歩数や活動量、睡眠時間、心拍数といったデータは、意識しなくても日々蓄積されていきます。
その結果、
- 思っていたより体を動かせていなかった
- 睡眠時間が短い日が続いていた
といったことに、後から気づくことができます。
最近では、腕時計型のデバイスが苦手な人向けに、指輪型の「スマートリング」も登場しています。
スマートリングは、睡眠や活動量、心拍数などを比較的自然な形で計測でき、装着感が気になりにくい点が特徴です。
「就寝時に腕時計が気になる」「充電の頻度が少ないほうがよい」といった人にとっては、選択肢の一つになります。
スマートウォッチやスマートリングのデータは、生活リズムや体調の変化に気づくためのヒントとして活用するのがおすすめです。
「今日はあまり動いていないから少し歩いてみよう」「最近睡眠が短いから今日は早めに休もう」といった判断につながれば、それだけで十分です。
アプリとウェアラブルデバイスを組み合わせることで、
- 記録の手間を減らす
- 振り返りを簡単にする
- 健康管理を生活の一部に組み込む
といったことが可能になります。
意志や根性に頼らず、続けやすい仕組みを作ることが、健康管理を長く続けるためのポイントです。
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無理なく続けるための健康管理の考え方と自分に合ったスタイル
健康管理は、正しい方法を知ることよりも、「続けられる形を見つけること」が何より大切です。
ここでは、これまで紹介してきた内容を踏まえながら、無理なく健康管理を続けるための考え方を整理します。
ライフスタイルに合わせて優先順位を決める
健康管理には、食事・睡眠・運動など、さまざまな要素があります。
すべてを同時に整えようとすると負担が大きくなり、続けること自体が難しくなってしまいます。
そこで意識したいのが、今の自分にとって優先度の高い分野はどこかを考えることです。
- 最近、睡眠不足が続いている
- 外食や間食が増えている
- ほとんど体を動かせていない
こうした中から、「今はここだけ意識してみよう」と一つ選ぶだけでも十分です。
ライフステージや仕事の状況によって、優先順位は変わっていきます。
状況に応じて見直しながら、自分の生活に合った健康管理を選んでいくことが、無理なく続けるコツです。
正解や理想を追い求めすぎない
健康管理という言葉を聞くと、多くの人は「こうあるべき」という理想像を思い浮かべます。
しかし、その理想を常に守り続けられる人はごく一部です。仕事が忙しい時期や、体調がすぐれない日、家庭の事情で生活リズムが乱れることは誰にでもあります。
そうした現実がある中で、最初から高い理想を掲げてしまうと、「できなかった自分」を責めることになり、健康管理そのものが負担になってしまいます。
健康管理で大切なのは、100点を目指すことではなく、続けられる範囲を見つけることです。
例えば、
- 寝る前にスマホを触らない
- ストレッチを5分だけ
- 具沢山味噌汁を食べる
というように、調子が悪い日はこれだけできたらOK、というラインを設けることもおすすめです。
うまくいかない日があっても、「最低限の行動はできた」と自分を褒めたり認めたりすることが、モチベーションを保ちつつ健康管理を無理なく続けるための大切な考え方です。
まとめ
健康管理がうまくいっているかどうかは、数値や成果だけで判断するものではありません。やめずに続いていることそのものが、健康管理の大きな成果です。
アプリやスマートウォッチ、スマートリングなどのツールは、健康管理を「頑張るもの」から「生活の一部」に変えてくれます。毎日完璧に使いこなす必要はなく、「振り返りたいときに見られる」「変化に気づける」状態があれば十分です。
この記事をここまで読んでくださった皆さんは、すでに健康管理について考え、行動しようとしています。それ自体が、とても大切な一歩です。
健康管理は、今日の食事を少し意識する、早めに布団に入る、少し多めに歩いてみる。そんな小さな積み重ねを、自分のペースで続けていきましょう。
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※本記事の内容は、医療に関する一般的な情報を提供することを目的としており、個別の症例に対する診断や治療方法を示すものではありません。健康状態に関する具体的な相談やアドバイスが必要な場合は、必ずかかりつけの医師とご相談のうえ、適切な対応を検討してください。各自の健康状態やライフスタイルに合ったアドバイスを受けることが重要です。
◆引用文献:
※1:内閣府男女共同参画局「令和5年度 男女の健康意識に関する調査報告書」
※2:厚生労働省「令和6年「国民健康・栄養調査」の結果」
※3:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」


