キーワードは日本的“協調性” 糖尿病患者の心の負担は身近な人のサポートで軽減

家族

京都大学医学部、高知大学医学部、米国のデラウエア大学などが共同で行った日米の糖尿病患者を対象にした調査結果が2014年10月発行の科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された。糖尿病と協調性などメンタリティの関係を調べた研究報告は今までほとんどなく、「文化・社会心理学との融合研究」という新しい視点が注目されている。

■日本人と米国人では心の負担が違う!?

この共同研究調査は、日本では2009年11月から2010年の10月まで、米国では2010年4月から2012年4月まで、30歳以上で2型糖尿病の外来患者を被験者とした。日本の被験者は152人、米国は64人。うつ症状のある患者は被験者から外した。
調査は心理学の分野などで用いられている数種類の質問紙(アンケート)を使い、「他人と考えや行動が違っても気にしない」「他人の考えに関係なく、私は自分のやるべきことをやる」「他人が自分のことをどう思っているかが気になる」「自分自身のことより、他者との関係のほうが大事だと思うことがある」など、社会的協調性や糖尿病が原因である心の負担、周囲の人からの心のサポート状況について多面的に質問した。
その結果、日本人の2型糖尿病患者では、社会的な協調性を重視する人ほど、糖尿病による心の負担を強く感じることがわかった。また、同じ2型糖尿病患者でも、身近な人から精神的なサポートを受けている人は、心の負担が小さいこともわかった。同じ条件で行ったアメリカのデータではこのような傾向見られなかった。

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■2型糖尿病患者は自分を責めている?

「協調性」は、同じ国民であっても個人差が大きな資質ではある。だが、一般的に「個人の独立」を重視する欧米よりも日本を中心としたアジア諸国の方が「他者との関わり」が重んじられる傾向があると考えられている。論文ではこれを「日本やアジアの国では周囲の他者との調和を重視する相互協調性の高い文化や社会が特徴」と表現し、研究結果の日米差もそこに起因するものではないかとしている。
だがもっと低い視点から見ると「社会的な協調性を重視する人ほど、糖尿病による心の負担を強く感じる」は「生活習慣病になるのは自己責任」「高い医療費を健康保険で払ってもらうのは心苦しい」「社会や家族の“お荷物”だと思われたくない」といった罪悪感や自虐感、日本独特の「恥」の文化が根底にあるのではないだろうか。

■多くの人と関わり、サポートを受けよう

逆に「身近な人から精神的なサポートを受けている人は、同じ心の負担が小さい」というデータについては、こんな状況が想像できないだろうか。
たとえば、医療関係者などとのコミュニケーションから他の患者の存在を知り、「2型糖尿病なのは自分1人じゃない。仲間がいて、がんばっている」。また、食事指導などを通して「他人がこんなに一生懸命になってくれるのだから、結果を出さねば申し訳ない」と一念発起する。相手が家族や友人なら「妻が食事療法につき合ってくれている」「夫が小さな改善を一緒に喜んでくれる」「子や孫に心配をかけたくない」「失明や手足の切断は世間体が悪い」「今の健康な体を維持したまま同窓会や親戚の集まりに出席したい」と、努力を続けていく。とても日本人的で、ごく普通な心情だと感じられる。
アメリカでは、努力目標や達成期限を決めて進める「医療コーチング」などの生活習慣病改善のメソッドが有効とされ、研究・普及が進められている。日本でも一部の医療機関でコーチングを導入し、成功例もある。だが、今回の研究報告を見ると、アジアには、日本人やアジア人にもっと響く新しい治療法やサポートシステムが開発されるべきなのではないかと思えてくる。
この論文でも「社会的相互協調性を重視する地域ではそれに合ったケアやサポート手法が開発されるべき。家族を中心としたアプローチは効果的オプションになり得る」とまとめ、今後の研究に希望をつないでいる。
(取材・文/竹島由起)

<参考文献>
◆Social Orientation and Diabetes-Related Distress in Japanese and American Patients with Type 2 Diabetes
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0109323

◆糖尿病患者の心の負担に日本人特有の要因の存在 -協調性を重視する文化の影響(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/141016_3.html/view


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