何を食べたかを撮り続けられれば食事療法はほぼ成功 【医師 泰江慎太郎氏】【管理栄養士 稲葉洋美氏】

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生活習慣病の場合、「薬物療法」「食事療法」「運動療法」の3つが治療の柱になりますが、とりわけ食事、運動に関しては自己管理の要素が大きく、医療側の介入が難しいもの。

銀座泰江内科クリニック(東京都中央区)では生活習慣病を抱える患者向けに医師、管理栄養士、パーソナルトレーナーがタッグを組み、患者のバックグラウンドや趣味嗜好に合わせたオーダーメードの治療プログラムを提供しています。
前回(「生活習慣病治療の主役は患者。型通りの指導では患者は動かない」「医師が介入しにくい食事や運動にどう関わるか」)に続き、泰江慎太郎院長と管理栄養士の稲葉洋美氏に食事療法面で患者にどうアプローチをしているのかをお聞きしました。(インタビュー、構成=荻島央江)

■1日3回の食事で食欲増進ホルモンの働きを正常に戻す

――生活習慣病における食事療法のポイントは。

泰江:患者さんから「何を食べたらいいですか」「何を食べたら駄目ですか」と聞かれると、「特にない」と答えています。糖尿病でも食べていけないものはありません。これを食べたら病気が治るといったものもありません。飲酒も量を守って頂けたらOKです。要は極論に走らず、適度にバランスよく食べたり飲んだりすればいいのです。

稲葉:これまでの経験上、食事療法は運動療法以上に取り組むのが難しく、長年の食習慣を変えられない患者さんは少なくありません。「ああしなさい」「こうしなさい」と押し付けるのは簡単ですが、それでは長続きしないことがほとんどなので、患者さんそれぞれの体と心の状態を見極めながらアドバイスをしています。最初のステップとして入りやすいのは「食事を1日3回摂ること」でしょうか。

泰江:なぜ食事を1日3回摂ったほうがいいのかと言えば、主に胃から分泌され脳の視床下部に働きかける「グレリン」というペプチドホルモンの働きのためです。グレリンには食欲を増進させる作用があり、1日3回食事前に分泌のピークがあらわれます。食事を摂ると下がりますが、食べないでいると上がりっ放しになりドカ食いの原因になります。そうした乱れを3食規則正しく摂ることで正常に戻していくわけです。

また、もう1つ重要なのは「寝る前3時間は何も食べないこと」です。動物レベルの実験では夜間の食行動が肥満や血糖値の上昇につながることが体内時計調節の観点から証明されています。加えて、食べ物が口から入って胃で消化され、腸に落ちるまでに2時間から3時間かかります。しかし、食後すぐに寝てしまうと食べたものが重力で下に落ちないので胃に負担がかかり、翌朝胃がもたれるというわけです。朝、胃がもたれていると朝食を抜く原因にもなり不規則な食生活のきっかけにもなります。この点からも「寝る前3時間は何も食べない」のは妥当だと思います。

■いつ何を食べたかを可視化するだけで効果大

稲葉:なかなか食事療法がうまくいかない例で多いのは、最初から細かい部分に入り込んでしまう患者さんです。まずは食事の量や食べるタイミングを変えることからスタートして、次の段階として食事の内容に進めばいいと思います。

実際、食べる量やタイミングを気にするようになると、自然とどんなものを食べるかにも意識が向き始める患者さんが多いですね。食事内容を把握するには写真に撮っておくのが簡単かつ効果的です。「こんなに食べていたのか」「バランスが悪い」など気付くことがたくさんあると思います。

――クリニックでは食事内容を可視化するために、スマートフォンのアプリを利用しているそうですね。

稲葉:患者さんはアプリ内臓のカメラで毎回の食事内容を撮影するだけでいつ何を食べたかが自動的に記録される上、私たちも同じタイミングで共有できるので便利です。

泰江:アプリ導入のそもそものきっかけはある患者さんです。その患者さんは治療に対して意欲的で、日々何を食べたかが一目で分かる表を独自に作成して診療の度に持参してくれていました。3大栄養素を摂ったか、摂取した塩分は何グラムだったかまで記入してあって、こちらとしては助言もしやすく非常にやりやすかったのです。

「これはいい」と別の患者さんにも展開しようとしたのですが難しかった。せめて食事の写真をメールで送ってもらおうと試みたものの、これもまた長続きしませんでした。恐らく工程が多く、面倒になるのでしょう。何とかもっと患者さんの負担が少なくできる方法はないかと探していたときに、見つけたのが現在使っているアプリでした。

稲葉:このアプリの使用状況で、患者さんの食事療法への取り組み姿勢が不思議と分かります。アプリをインストールして写真をすぐに撮っていただける患者さんはこの時点で食事療法はほぼ成功です。あとはポイントだけお教えしながら伴走すればいいだけ。一方で、撮影するのを途中でやめてしまう人やアプリ自体をインストールしない人もいます。でもそこで無理強いはしません。

――そうした食事療法にあまり前向きでない人にはどのようにアプローチしているのですか。

稲葉:医師、管理栄養士、パーソナルトレーナーの3人が一体となって取り組んでいることの強みを生かしています。食事療法での成果は実感しにくいことが多いのですが、血糖値などの数値が改善していたり、運動療法で成果が上がったりして自分の変化を感じると、「食事療法も頑張ってみようかな」という気になるのかなと。3人で「こういうことを話していた」とか「こんな成果が出ている」といった情報を共有し、患者さんのモチベーションが高まっているタイミングを逃さないように働きかけています。

<関連記事>
◆生活習慣病治療の主役は患者 型通りの指導では患者は動かない
http://media.welby.jp/medicalworker/7417/
◆医師が介入しにくい 食事や運動にどう関わるか
http://media.welby.jp/medicalworker/7574/

<関連サービス>
◆Welby食事アルバム
http://www.welby.jp/service/album/
◆Welbyシェア
https://share.welby.jp/pages/about

話し手ご紹介

泰江慎太郎_話し手紹介

銀座泰江内科クリニック
院長・医学博士 泰江慎太郎氏
URL: http://ginza-ys-clinic.com/index.html

三重大学医学部医学科卒業、京都大学大学院医学研究科修了。京都大学医学部附属病院内科、社会保険小倉記念病院循環器科、京都大学内分泌代謝内科、国立循環器病研究センター病院糖尿病・代謝内科を経て、2012年5月に銀座泰江内科クリニックを開業、現在に至る

稲葉洋美_話し手紹介

健康カウンセラー・管理栄養士・博士(学術)
稲葉洋美氏
人間総合科学大学人間科学部健康栄養学科非常勤講師、共立女子大学家政学部食物栄養学科非常勤講師、企業、自治体、大学などでのセミナーや講演多数


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