医師が介入しにくい食事や運動にどう関わるか 【医師 泰江慎太郎氏】

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糖尿病と心臓病の専門医である銀座泰江内科クリニック(東京都中央区)の泰江慎太郎院長が標榜するのは、型通りではない、患者それぞれに合わせたオーダーメードの治療です。前回(「生活習慣病治療の主役は患者 型通りの指導では患者は動かない」)は、患者が段階を経て自分の病気にどう向き合っていくのか、それに対して医師の立場でどう働きかけているのかをお話しいただきました。泰江院長はいかに患者を動かしているのか。今回は「食事療法」「運動療法」の具体的な取り組みについて、お聞きします。(インタビュー、構成=荻島央江)

■カツ丼大盛りはもう頼まない

――具体的にどのように食事指導をしていますか。

基本的には、患者さん本人が楽しく続けられる方法が一番だと思います。食べたものを記録するというのは昔から実施されているやり方ですが、クリニックでは一部の患者さんに食事内容をスマートフォンのカメラなどで撮影していただいています。写真もしくは2~3秒程度の動画だとよりいいですね。

従来のような食事内容のメモや本人の申告では食べた量や調理法が正確に把握できず、指導も行き届きませんでした。その点、写真や動画なら一目瞭然、まさに百聞は一見に如かず、です。

撮影すること自体が治療にいい影響を与えます。撮るとなれば、カツ丼大盛りを頼みませんし、可視化されることでやる気がわく。撮るという行為をする時点で取り組み姿勢のステージがワンステップ上っているのです。

私は食事を単なるエネルギー補給とは考えていません。食事を通して祝ったり、語らったりする文化であり、楽しみであると思っています。教科書的な正論を振りかざしても、生活習慣を変えるのは患者さんで継続的に実践できなければ意味がない。可能な限り、患者さん本人の嗜好や背景、納得度合まで踏み込んで、長続きする方法を提案してきたいですね。

生活習慣病の治療にあたっては医療者として多様なカードを用意することが重要だと考えています。現在、利用している食事内容を記録、共有するアプリケーションのほか、もっと増やしていきたいと思っています。

■糖尿病の予防には食事より運動?

――運動は、糖尿病の治療において非常に効果的なのですね。

1997年に報告された「大慶糖尿病予防研究」で証明されています。これは中国黒竜江省大慶市で糖尿病の発症リスクが高い市民577人を対象に、食事や運動など生活習慣への介入プログラムを6年間続けたものです。この結果、境界型からの糖尿病発症率は食事療法のみ実施した群で31 %減少。一方、運動療法のみの群は46%減少しました。つまり、この研究においては運動療法のほうが10%以上予防率は高いことになります。

――運動の効果が高いことは分かりましたが、食事以上に介入しにくいように思えます。

確かに非常に難しいですね。私自身、以前は運動への介入がなかなかできずに悩んでいました。かといって手をこまぬいてもいられません。とにかく運動をはじめるきっかけをつかんでもらおうと、現在は院内にトレッドミルやトレーニングベンチ、ダンベル等を設置し、実践指導をしています。

運動療法では体重というより、いわば諸悪の根源である内臓脂肪を落とすことに重点を置いています。クリニックでは体重を測る感覚で内臓脂肪を測定できる内臓脂肪測定器を完備。スタートラインから30%減が目標です。また延々とやり続けるのではなく、期間のリミットも決めてやっています。

患者さんにはパーソナルトレーナーがついて週1回20~30分程度、科学的根拠に基づく内臓脂肪を効率的に減らす運動方法をお教えしています。もちろんここでだけではなく、普段の生活でも教わった運動に取り組んでいただく必要があります。

内臓脂肪がいいのは少しの食事制限、運動だけでドラマチックに変化するところです。お腹周りから次第にすっきりしてくるので、モチベーションが上がります。50代女性の患者さんは3カ月で体重を10キロ落とし、内臓脂肪面積は20%減りました。さらに普段服用している薬も半分になったそうです。

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◆生活習慣病治療の主役は患者 型通りの指導では患者は動かない
http://media.welby.jp/medicalworker/7417/

話し手ご紹介

泰江慎太郎_話し手紹介

銀座泰江内科クリニック
院長・医学博士 泰江慎太郎氏
URL: http://ginza-ys-clinic.com/index.html

三重大学医学部医学科卒業、京都大学大学院医学研究科修了。京都大学医学部附属病院内科、社会保険小倉記念病院循環器科、京都大学内分泌代謝内科、国立循環器病研究センター病院糖尿病・代謝内科を経て、2012年5月に銀座泰江内科クリニックを開業、現在に至る


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