「ヘルスリテラシー」が すべてを決める! 【医師 飯島勝矢氏】

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血圧変動の専門家である、東京大学高齢社会総合研究機構准教授の飯島勝矢医師。前回(「外来血圧だけでの管理には限界がある。むしろ家庭血圧があなたの治療方針を決める」)は、家庭で血圧を測ることの重要性についてお話しいただきました。とはいえ、家庭での血圧測定を日課として継続できる人はあまり多くはないというのが現状です。継続のためには必要なものは何かをお聞きします。(インタビュー、構成=荻島央江)

血圧を厳格に管理できている人は6割程度

――厚生労働省が2012年に実施した「国民健康・栄養調査」によれば、日本人(20歳以上)男性の35.7%、女性の25.5%が高血圧(収縮期(最高)血圧が140mmHg以上)です。このように高血圧は塩分を多く摂取する日本人としてたいへん多い病気であるものの、血圧を厳格に管理できている人はその60%程度だそうですね。

 わが国では高血圧患者さまは約4000万人いるともいわれており、かなり身近な病気です。高血圧の治療には、お薬による管理も重要ですが、その前に血圧の自己管理が極めて大切です。それには生活習慣を改めるほか、前回お話ししたように「家庭での血圧自己測定」が欠かせません。ただ血圧測定を日課にできる人は案外少ない。1週間や1カ月はできても、1年、2年とまではなかなか続かないようです。

「続く人」と「続かない人」の違い

――継続してできる人とできない人の差は何でしょうか。

「ヘルスリテラシー」の差だと思います。ヘルスリテラシーとは、自分の健康に関する興味、さらには特に高血圧のような自己管理が欠かせない病気の場合、目の前にある健康情報を自分にフィードバックする能力などを指すのであろうと思います。これが治療の行方をすべて決めると言ってもいいでしょう。

 私のこれまでの経験上、患者さんも含めて一般市民の集団は大きく4つのパターンに分かれます。1つ目が超健康オタク。自身の病状への関心が非常に高く、医師が言わずとも率先して自己管理に取り組むタイプです。2つ目は自発性が少なく腰が重い人。母集団の多さは非常に多いと予想される方々ですが、もっともこのタイプは、うまくこちらがナビゲートしてあげれば前向きに治療に取り組むことが少なくありません。

 3つ目は自分の周囲に存在している健康情報を知らない、もしくは右から左へ流してしまうタイプです。このタイプも情報さえちゃんと与えられればいい方向へ進む可能性があります。厄介なのは4つ目で、「俺は長生きしなくても構わない」などと言い放ち好き放題にやる、周囲が何を言っても意識を変えるのが難しいタイプです。

1に塩、2に塩

 治療への向き合い方でどのタイプかはすぐに区別できます。

 例えば、高血圧の患者さんは食塩の制限をしなければなりません。日本高血圧学会の定めた目標では、目安としては1日に6グラム未満が理想です。「意外に多く使えるな」と思われるかもしれませんが、実際には、調理に食塩はほとんど使えません。なぜなら食材自体やしょうゆやみそといった調味料自体に塩分が含まれているからです。現在、日本人の塩分摂取量は平均で1日11~12gくらいと言われているので、高血圧の患者さんは半分近くに減らさなければならないですね。

 食塩の制限はみなさんが思う以上に高血圧に効果があって、1に塩、2に塩、3、4がなくて5に薬というくらいのイメージです。ですから「別の病気で入院して減塩食をとらざるを得なくなったら自然と血圧が下がり、飲んでいる薬の種類を減らすことになった」といった話は珍しくありません。それくらい減塩の効果は大きいんですね。

 こうした場合、その後、良好な血圧を保ち続ける人と、すぐに以前の状態に戻ってしまう人に分かれます。すなわち、減塩だけを例に取っても様々なパターンに分かれます。それこそ「そうか、減塩食でもそれなりにおいしいではないか。よし、薄味の食事に慣れるように努力し、今後は食事を変えよう」と食生活を見直し、しょうゆをほとんど使わないレベルまで頑張るパターンが先程の1つ目のヘルスリテラシーの高い集団。そして、減塩しょうゆにしようか迷うレベルの集団が2つ目の腰が重いタイプ。減塩の重要性を知ってか知らずか、なかなか薄味の食事に切り替えられないのが3つ目のタイプの集団です。最後に、4つ目の厄介なタイプは、入院前と変わらない塩分多めの食生活を漫然と送り続けてしまう集団なのでしょう。

患者さんにはできるだけ2つ目以上になってほしい。こちらとしても褒めたり励ましたり、ときには厳しく注意したりしながら、いかに患者さんの(ヘルス)リテラシーを引き上げていくかに心を配りながら診察にあたっています。

例えば、「医師は日々の家庭血圧が記録されている患者さんの血圧手帳を頼りに治療方針を決めている。それほど重要なものなのに、なかなか実行できずに残念ですね」などと話すと、多くの患者さんは納得して家庭血圧を測ってくるようになります。あくまで治療に取り組むのは患者さん本人。医者から命令されてやるものではありません。

自分の血圧への関心を高めることは、脳卒中や心筋梗塞など高血圧による合併症の予防にもつながります。それらを、大きな火事になる前の「小火(ぼや)の段階」で見つけ、早めの対処をするには、まずは患者さん本人の意識改革とそれによる自己管理が欠かせないのです。

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◆外来血圧だけでの管理には限界がある むしろ家庭血圧があなたの治療方針を決める
http://media.welby.jp/medicalworker/6974/

【話し手ご紹介】

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東京大学 高齢社会総合研究機構
准教授 飯島勝矢氏

東京大学加齢医学講座講師、米国スタンフォード大学循環器内科研究員を経て、現職。
専門は老年医学、老年学(ジェロントロジー:総合老年学。特に①虚弱予防・介護予防の臨床研究(サルコペニア研究を含む)、②在宅医療推進と臨床研究およびその大学卒前教育や多職種連携教育、③千葉県柏市をフィールドとする課題解決型実証研究(アクションリサーチ)、④動脈硬化、特に血管壁硬化を基盤とする高齢者血圧変動


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