2型糖尿病と診断されたら放置しないこと 適正な治療を続ければ合併症は怖くない 【医師 岩岡秀明氏】

岩岡先生

全国に約5,000人いる糖尿病専門医の1人である岩岡秀明医師。船橋市立医療センター(千葉県船橋市)で代謝内科部長を務め、臨床の第一線で日々数多くの糖尿病患者さんを治療しています。一方で、糖尿病を専門としない医師を想定したハンドブックを執筆するなど、その教育にも力を注いでいます。2型糖尿病で大事なのは「治療を中断させないこと」と岩岡医師は話します。(インタビュー、構成=荻島央江)

40代糖尿病患者の半数以上が通院を中断

――生活習慣が原因とされる2型糖尿病(以下、糖尿病)の患者の場合、早期に糖尿病と診断されて一度医療機関を受診しても、その後通院を中断してしまう人が多いそうですね。

厚生労働省が2012年に実施した「国民健康・栄養調査」によれば、40代の糖尿病と診断がつくレベルの人の半数以上が放置、もしくは通院を中断しています。

そもそも糖尿病かどうかは、血液と尿の検査で分かります。糖尿病は症状ではなく、検査の数値で見る病気です。「血糖値が高い」と言われたくらいだと自覚症状がないので、「仕事が忙しい」といった理由で、病院から足が遠のいてしまうようです。

糖尿病であるにもかかわらず、治療をせずに放っておいたり、通院をやめたりするとどうなるか。自覚のないまま病気が進み、気付いたときには深刻な合併症に陥っていたという事態につながりかねません。長年放置していた結果、合併症を引き起こし、どうしようもない状態になってから再度受診するというケースは少なくないのです。

きちんと治療を続けてさえいれば、重い合併症を患うことはまずありません。だから糖尿病治療においては「いかに治療を中断させないか」「いかに動機付けするか」が重要なポイントなのです。ただこれが一番難しい。だから我々専門医は患者さんに適正な治療を続けてもらい重症化させないよう、しっかり病気の説明や生活上の指導をするといった初期教育に力を入れています。

「HbA1cの目標値は平熱と同じ」「糖尿病の三大合併症はしめじ」

――先生の場合、患者さんには例えばどんなふうに話しているのですか。

難しいことをいかにやさしく話すことを心掛けています。HbA1cであれば体温に例えます。
「あなたの平熱は何度ですか」
「36.5℃です」
「37.0℃未満なら平熱です。HbA1cも7.0%未満は平常と覚えましょう。8%あれば明らかな発熱、9%あれば高熱になります」
といった具合です。

糖尿病にはこのほか、簡単な覚え方がたくさんあります。

■空腹時血糖の正常値は?
「コンビニの名前と同じです。セブンイレブン、70〜110mg/dlです」

■糖尿病の生活面で大切な5つは?
「ABCDEと覚えましょう。AはAlcohol、適度の飲酒、BはBody Weight、適切な体重、CはCigarette Smoking、禁煙、DはDiet、バランスの良い食事、EはExercise、適度な運動です。

■糖尿病で大切な検査は?
「A1c、Blood Pressure(血圧)、 Cholesterol(コレステロール)のA、B、Cです」

■間食で気をつけるものは?
「“あ”のつく3つです。甘いもの、脂っこいもの、アルコールです」

■糖尿病の三大合併症は?
「『しめじ』と覚えます。しは神経障害、めは網膜症、じは腎症です。合併症では『えのき』も重要です。えは壊疽、のは脳梗塞、きは狭心症(または虚血性心疾患)です」

■低血糖の症状は?
「『はひふへほ』と覚えましょう。は=腹が減り、ひ=冷や汗、ふ=震え、へ=変な行動、ほ=放置は昏睡です」

糖尿病の場合は自己管理が欠かせませんから、患者さんには覚えやすい語呂合わせで、しっかり頭に入れておいてもらうことが大事なのです。

境界型でも定期的な検査を

強調しておきたいのは、血糖値が糖尿病と正常の間の境界にある「境界型糖尿病」、いわゆる糖尿病予備軍と言われた時点で3~6カ月に1回は検査を受けてほしい、ということです。1年に1回では足りません。予備軍で心筋梗塞を起こすリスクは正常な人の2倍、糖尿病なら3倍以上に上ります。

糖尿病と一度診断されると、ほとんどの場合はそれ以後継続して医療機関に通院することになります。だからこそ最初の入口で、糖尿病に関して最新かつ十分な知識があり、適切な指導をしてくれる医師にかかることです。実際、「もっと早くこの病院に来ていればよかった」「もっとこのことを知っていれば合併症に苦しまずにすんだのに」と涙をこぼす患者さんもいます。

こうしたことにならないためにはどうしたらいいか。1つに糖尿病専門医に診てもらうことです。日本糖尿病学会のホームページなら都道府県別などで専門医が探せます。

ただ現在、日本国内には予備軍も含め2,000万人以上の糖尿病患者がいると言われています。これに対して糖尿病専門医は全国に約5,000人しかいませんし、2型糖尿病の患者さん全員が必ずしも専門医にかかる必要はないと思います。もし普段からよくかかっていて信頼がおけるかかりつけ医があれば、まずそこで相談すればいいでしょう。

ーー糖尿病治療においては早い段階で、糖尿病に関して最新かつ十分な知識があり、適切な指導をしてくれる医師にかかることが重要と言えそうです。とはいえ、通院しやすい地域に専門医がいなかったり、かかりつけ医がいなかったりする場合、どのように医師探しをすればいいのか。また「治療を中断させないこと」と同様に、「いかにインスリン導入するか」も大きな課題です。引き続き、この2つの課題について岩岡先生にお話をうかがいます。

<関連記事>
◆インスリンに関わる 4つの誤解( http://media.welby.jp/medicalworker/6153/
◆自覚症状がないからこそ いかに自覚するかが重要(http://media.welby.jp/medicalworker/6273/

話し手ご紹介

岩岡先生

船橋市立医療センター
代謝内科部長 岩岡秀明氏

1981年千葉大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院及び国立柏病院で内科臨床研修終了後、糖尿病研究室に所属。成田赤十字病院内科などを経て、2002年4月船橋市立医療センターに着任。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本内分泌学会認定専門医


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