患者のQOLや幸福感を高める かかりつけ医になりたい 【医師 大橋博樹氏】

大橋先生キャッチアップ

家族みんなが安心して受診できる“町のお医者さん”として、地域の人々から多くの信頼を集めている多摩ファミリークリニック(川崎市)の大橋博樹医師。
前回(「無関心期」からしっかりかかわって軽症で食い止める http://media.welby.jp/medicalworker/5790/
)は、無関心期にある患者さんに対する効果的なアプローチ方法について伺いました。
引き続き、かかりつけ医として糖尿病など生活習慣病のある患者と信頼関係を築くべくどう接しているかなどを伺います。(インタビュー、構成=荻島央江)

患者さんを褒めて、褒めて、褒めまくる

――英国の南部に住む糖尿病の患者さんを対象に、病状や生活の質(QOL)を調査したところ、かかりつけ医にかかっている患者さんは、かかりつけ医にかかっていない患者さんに比べてQOLや幸福感、満足度などが高く、また死亡率も低かったそうですね。なぜこうした結果になるのでしょうか。

特定の病気だけでなく、自分や家族の健康管理を丸ごと任せられるかかりつけ医にすぐ近くでサポートしてもらいながら、自らも主体的にかかわり病状が安定していく。それが心地いいのだと思います。

僕らのクリニックではどちらかというと患者さんを褒めて、褒めて、褒めまくっています。いわば「豚もおだてりゃ木に登る大作戦」です(笑)。生活習慣病のアプローチは褒めて伸ばすほうがはるかにいいというデータがあります。僕自身、医者になりたての頃はよく怒っていましたが、今は確かに褒めたほうがいい結果になることが多いなと実感しています。

例えば、数値が前回より悪くなっている場合はどんなふうに話すか。まずは患者さんの話に耳を傾け、今回どうして値が悪くなったのかの意見を聞きます。

そのときに「正直言うと、おととい食べ過ぎちゃって……」とか向こうから話してくれて、反省しているようだったら、次回の受診時までに何を変えられるかを本人に考えてもらう。その提案に対して僕らは微調整しつつ、よくできている点などを褒めまくる。すると、どんな患者さんも次の診察に向かって頑張って取り組んでくれますよ。

「どうしたいか」を必ず聞く

患者さんには必ず「どうしたいか」を聞きます。希望を聞くことはとても重要です。患者さんが今の病態なり、症状なりをどんなものだと思っているか。これを「解釈モデル」と呼んでいます。

例えば、「頭が痛い」と訴えてきた患者さんの場合で考えてみます。「あなたはどんな病気が心配で来たのですか」と聞いたら、「最近、身近でくも膜下出血で倒れた人がいて、それで怖くなって来たんです」と話すかもしれないし、「主人の帰りがいつも遅くて睡眠不足気味だから、頭痛が起きたんですよ」と言うかもしれない。解釈モデルは一人ひとり違うわけです。

それによって僕らはアプローチを変える必要があります。「くも膜下出血かもしれない」と思っている人はとにかく心配で、検査をしてほしくて来ているのかもしれません。であれば、そこに対応してあげなければいけない。極端に言えば、たとえくも膜下出血である可能性は限りなく低くても、それで本人が納得するなら検査をしてもいいと僕は思います。

糖尿病などの生活習慣病も同じです。「薬を1年後にやめるために今、頑張っているんです」という気持ちを持っている人なのか、「とりあえず安定した生活を送れればよく、できれば運動はしたくない。この状態が維持できればいい」と考えているのか。どう解釈しているのかによって対応は違ってくるから、患者さんがどうしたいのかを知ることは非常に重要なんです。

家庭医ならではのアプローチ

――医師から「どうしたいか」と聞かれたことは今まで一度もありません。

「家庭医療専門医(家庭医)」の教科書に書いてあることで、僕に限ったテクニックではないんですよ。でもすっきりしたからといってそこでおしまいにしてはいけない。くも膜下出血ではなくて安心したけど、生活がすごくハードで睡眠不足が原因の頭痛できているなら、そっちにアプローチしないといけません。安心した段階で、この頭痛ってこっちの原因かもしれないから、こっち変えてみませんか?と。

症状がない怖い病気は結構あります。生活習慣病がそうですし、働きざかりであればがん年齢にもなる。例えば、糖尿病が急に悪くなったときにどんながんが多いか。膵臓がんと思いがちですが、一番多いのは大腸がんです。単に糖尿病を見るだけではなく、その人のリスクになるようなことに関してはすべて網羅的に診るのが僕らの仕事です。

あと僕らが必ずするのは、うつのチェックです。糖尿病が悪くなったり、食生活がだらしなくなったりする人の中に一定の割合でうつの人が隠れている。そのあたりまで目を配ることが、かかりつけ医の重要な役割だと思っています。

――どうしたらいいかかりつけ医を見つけられますか。

継続してかからないと分からないかもしれませんが、少ない時間の中でもきちんと患者の話に耳を傾け、かつ肝となることを聞いてくれる人は総じていい医師が多いと思いますよ。

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◆「無関心期」からしっかりかかわって軽症で食い止める
http://media.welby.jp/medicalworker/5790/

話し手ご紹介

大橋先生

多摩ファミリークリニック
院長 大橋博樹氏
URL: http://www.tamafc.jp/

獨協医科大学卒業後、武蔵野赤十字病院にて臨床研修修了。聖マリアンナ医科大学病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大学附属病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務を経て、川崎市立多摩病院開院準備に参画。2006年2月の開院より総合診療科医長として従事する。2010年4月に多摩ファミリークリニックを開業。聖マリアンナ医科大学非常勤講師も務める。著書に『かかりつけ医がいるとプラス10年長生きできる』(幻冬舎)がある


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