1型ライフは夢がいっぱい 【看護師・日本糖尿病療養指導士 片渕敬子氏】

おたんこナース

全国でも数少ない、1型糖尿病を専門とするソレイユ千種クリニック(名古屋市)で、院長の木村那智先生とともに患者さんのことを第一に考え、日々活動を続けている、看護師の片渕敬子さん。前回(患者さんに寄り添う療養指導を目指して)は、1型糖尿病の世界に引き込まれた経緯についてお話を伺いました。今回は、具体的な活動内容についてお話していただきます。(インタビュー、構成=荻島央江)

SNSの波に乗って

――おたんこナースさんといえば今や、1型糖尿病界で、いやネット界で一番有名な看護師さんではないでしょうか?

1型界ならまだしも、ネット界というのは言い過ぎです(笑)。もともと院長が、一般の方に1型を正しく知っていただくため、社会啓蒙活動としてブログやFacebookで情報発信を始めたのが最初でした。やがて1型にあまり関わりのない方たちの興味を引き続けるために、医学情報に加えて、クリニックで起きた出来事などの小ネタも交えて紹介するようになりました。
クリニックは普段から本当に笑いが絶えず、マンガのような世界なんです。スタッフ一人一人の個性が強烈で(笑)。そんな日常の様子をお伝えしていく中で、自然と「おたんこナース」という言葉が生まれ、いつの間にか多くの方に認知していただくようになっていました。今では患者会や学会や研究会など、全国どこに行っても「おたんこナースさ~ん!」と声をかけていただけるので、ネットの影響力の大きさを実感します。

――片渕さんのもう一つの顔といえば、ポンプロ(インスリンポンプ療法の達人)ですよね。ポンプに関してはメーカーよりも詳しいという噂ですが・・・

それは絶対、嘘です!(笑)。でも、ポンプをやっている患者さんの悩みを聞き出し、一緒に解決方法を考える努力は、絶えず続けています。そのために時々自分もポンプを装着してインスリンを注入しながら生活し、低血糖を経験したりするようにしています。教科書に書いてあるようなこととは違う、本当の低血糖の辛さや、スキントラブルで困る患者さんのお気持ちも、少しだけ共感できたかなと思います。でも、私はやめたい時にポンプをやめられますが、患者さんはずっと続けなければなりません。本当の気持ちはやっぱり、やっている本人にしかわからないのです。

――ポンプの導入は入院で行うのが一般的で、外来導入できる医療機関は少ないと聞きました。

海外では外来導入が当然ですし、そもそも入院で導入する必要性はないはずです。導入した直後にトラブルが発生した場合でも、自分で対応できないような人ならば、初めからポンプはやらないでしょう。ポンプ療法やポンプの導入を難しいものにしてしまっている、あるいはそう決めつけてしまっているのは、むしろ医療者のほうなのです。ポンプをやりたいと希望していたり、ポンプでないとコントロールが難しい病状や生活スタイルなのに、今の時代そう簡単に学校や会社は休めない、だからポンプが導入できない、と困っていらっしゃる方はたくさんいます。なので、外来でも全く問題なくポンプを導入できるし、その後の細やかな継続指導のほうがずっと大切であることを医療関係の方にお伝えしていくことも、私の活動の一つです。

医療機関とは思えない夢の小部屋

――ポンプの導入や療養指導をするお部屋がとても素敵と伺いました。

クリニックは成人対象の内科クリニックとしてスタートしましたが、開院直後から小中学生の紹介が続きました。小児科から来られたお子さんたちにとって、大人向けに作られたクリニックの雰囲気は少し威圧的と感じていたので、子ども部屋のように楽しい療養指導室を作る構想を院長と練り続け、開院2周年記念でクリニックを増築した際に作ったのが、この療養指導室です。私の名前から「お敬子部屋」とか「おたんこルーム」などと呼ばれたりしています。
壁紙や家具などを全てメルヘンチックな姫系デザインで統一して、部屋中がぬいぐるみであふれています。子どもさんたちは喜んでこの部屋で時間を過ごしてくださって、その合間に注射や血糖測定の手技指導をしたり、ポンプを導入したりしています。ただ遊んで帰るだけの子どもさんもいます。しかしだんだん大人、特に女性の間でこの部屋の噂が広がり、「ついにお部屋に足を踏み入れたわ!」とか「このお部屋でおしゃべりさせて!」などと言っていただくようになりました。お敬子部屋でお話を始めたらスイッチが入ってしまい、何時間も話し込んでしまうことも時々あるんです。その後「1か月分のエネルギーをチャージしたわ!」と言ってすっきり笑顔で帰っていかれるので、その笑顔に私も元気をいただいちゃっています。

患者会は治療の一部

――クリニックは、患者会活動にも熱心に取り組まれているんですね。

クリニックが関わっているのは主に、地元の小児1型糖尿病患児さんとそのご家族を対象とした「つぼみの会 愛知・岐阜」、高校生から壮年期までを対象とした「エバーグリーン1型DMの会」、愛知・岐阜・三重県下の小学3年から中学3年までの1型糖尿病患児を対象とした「東海地区小児糖尿病サマーキャンプ」、全国のインスリンポンプ療法をされている方のための「CSIIユーザーズクラブ」です。
中でもCSIIユーザーズクラブは私たちが一から立ち上げた会で、「CSIIユーザーズミーテイング」という公開セミナーを年2回行っていて、全国から1型さんが集まられています。日本初の「かかりつけ病院の垣根を越えてポンプ療法をされている患者さんが集まって勉強し、交流する」イベントとして、様々な方面から注目していただき、今では全国に同様な会が広まりつつあります。
また、認定NPO法人日本IDDMネットワークの「希望の100社委員会」のメンバーとして、同団体の行事にも積極的に参加や協力させていただいています。その他にも、全国の様々な患者さん向けイベントに参加して、交流の輪を広げさせていただいています。院長とセットで講演にお招きいただく機会も、すっかり増えました。
 
――いろいろな病気がある中で、なぜ1型糖尿病ではこれほどまでに患者会が重視されるのでしょうか?

1型の治療は医療者任せでなく、患者さんが自分で行うものです。そしてそれは生涯にわたって続きます。どんなに親身になってくれる医療者(私を含めて)であっても、常に血糖の変動とインスリン注射のことを考えながら生きていく緊張感は、なった本人にしかわからないものです。また、変化に富む毎日の様々な出来事を乗り切っていく沢山のテクニックを、限られた診察時間の中だけで学ぶのには限界があります。そして、患者さんと医療者との1対1の世界だけでは、入ってくる情報も考え方も偏ってしまう危険性があります。
ただし患者会も、いいことばかりではありません。人によって向き不向きがあります。人と人との相性の良し悪しもあります。普通だったら出会うこともないようなさまざまな人たちと交流するため、トラブルもあります。
患者会に頼らなくても自分で情報を集めて生きていく人もたくさんいますし、患者会に没頭してほとんどライフワークみたいになっている人もいます。いずれも、本人が好きな関わり方を選べばよいのですが、患者会を全く知らずして生涯を過ごすのと、一度はその世界を経験したうえでその後の関わり方を自分で選ぶのとでは、治療の幅も、人生の幅も、大きく違ってくると思います。

――最後に、全国の1型糖尿病患者さんにメッセージはありますか?

1型を理由に、夢をあきらめたり、目標を下げたりは決してしないでください。1型を通じて得た人との出会いや、物の見方や、考え方は、他の人は持っていない大きな宝物です。それらを大切にしながら、夢の実現に向けて一生懸命努力して、楽しく人生を送ってくださいね~。

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話し手ご紹介

片渕さん

ソレイユ千種クリニック
片渕 敬子
URL : http://www.med-junseikai.or.jp/soleil/

大学病院で産婦人科、脳神経外科の病棟勤務を経て、ソレイユ千種クリニックで1型糖尿病の世界と出会い、ネット界で「おたんこナース」として花開く。看護師、助産師、日本糖尿病療養指導士。


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