患者さんに寄り添う療養指導を目指して 【看護師・糖尿病療養指導士 片渕敬子氏】

片渕さんアイキャッチ

ソレイユ千種クリニック(名古屋市)は、全国でも数少ない1型糖尿病に注力する専門クリニックで、地元はもとより遠方からも毎日沢山の患者さんが訪れます。同クリニック院長の木村那智医師とともに患者さんを迎えるのが、名物看護師の片渕敬子さんです。「おたんこナース」の愛称で、かかりつけの患者さんのみならず、全国の1型糖尿病患者さんから慕われている片渕さん。前編では1型糖尿病に傾倒するに至った経緯と、その情熱についてお話しいただきました。 (インタビュー、構成=荻島央江)

IT時代の新しい診療スタイルのクリニック

――ソレイユ千種クリニックには、1型糖尿病患者さんが随分遠方から通院されると伺いましたが。

愛知・岐阜・三重の地元三県から来られる方がやはり多いのですが、中には関東、甲信越、北陸、関西などからお越しいただく患者さんもいらっしゃいます。遠方の方は通院間隔が長くなりがちですが、普段からFacebookなどのSNSを通じて日常の様子はお互いによくわかっていますし、ちょっとした噂話や院長のおもしろ写真などはLINEで一斉送信したりするので、いつも身近に会っている友達のような感覚です。何か月ぶりにお会いしても久しぶりな感じはしませんし、距離も感じません。クラウドを介して、日ごろの血糖測定記録はいつも診察室のPCでモニターしています。私たちのクリニックは、大きな総合病院のようにたくさんの診療科がそろっているわけでも、緊急入院に対応できるわけでも、高額な大型医療機器を揃えているわけでもありません。しかし、小さな専門クリニックのメリットを活かして、最新の医薬品や検査機器をいち早く導入し、きめ細やかに患者さんのニーズに応え、いつも医師や看護師が患者さんのそばに寄り添っているような安心感を持っていただけることを目標にしています。

1型という世界との思いがけない出会い

――最近では患者さん向けの全国イベントや勉強会で「おたんこナースさんを見かけないことはない」とまで言われるようですが、片渕さんがそこまで熱心に1型糖尿病に取り組まれるようになったきっかけは何ですか?

 私は、新しい命の誕生のお手伝いができる仕事に憧れて、医療の世界の第一歩は助産師として踏み出しました。とてもやり甲斐があり、その後の人生にも活きる貴重な経験を沢山させていただきましたが、若い頃から専門領域だけ見ていては世界が狭くなると思い、異動を希望したところ脳神経外科病棟の勤務となり、その後結婚を機に大学病院を退職しました。たまたま新居のすぐ近くにあったのがこのクリニックだったので、ここで働きだしました。
大学病院で経験してきたのはずっと外科系のお仕事ばかりでしたから、1型はおろか糖尿病に関する知識は、全くありませんでした。お勤めを始めるに当たってとても不安でしたが、院長から「中途半端に知識を詰め込んで来るより、診察風景を見て生身の患者さんと関わって、リアルな1型糖尿病とはどんなものか分かってもらったほうがずっといい」と言われたので、敢えて何も勉強しないまま1型の世界に飛び込んで来ました。

たくさんの涙を見て

知識が無いまま真っ白な気持ちで診察に立ち会うようになって不思議だったのが、初診時やセカンドオピニオン外来の際に、涙を流しながらそれまでの暮らしぶりを話され、時に声を上げて泣きながらクリニックを後にする患者さんが続々といらっしゃったことです。その涙の理由すら、初めの頃はよく理解できませんでした。しかし、患者さんたちのお話をじっくりと伺っていると、食べたい盛りのお子さんが厳しい食事制限をさせられたり、血糖コントロールの乱れを食生活の乱れと決めつけられたり、新しい薬剤や検査機器を希望しても病院の方針という一言で全く応じてもらえなかったり、患者会で勉強したりインターネットで調べてきたこを医療者から頭ごなしに否定されたり・・・・。事情は様々ですが、多くの場合は患者さんのほうが医療者よりずっとよく勉強していているし、言い分は正しいし、理に適っているということがわかってきました。医療者の都合で、辛い思いをして毎日を過ごしている患者さんがこんなに沢山いることを目の当たりにして、火がついちゃったんですね(笑)。でも多分院長は、最初は私にそこまで期待していなかったんじゃないかしら~。

楽しくなけりゃ、1型ライフじゃない

――どんなことを考えながら、患者さんと毎日接していらっしゃるのでしょうか?
 患者さんのブログやフェイスブックなどで、「明日の診察が憂鬱だなあ」という書き込みをしばしば見かけます。「今月はイベントが多かったから、きっとHbA1cが上がっていて、また怒られるんだわ」と続きます。そしてやっぱりその日の夜には、「怒られた。落ち込んだ。」と書かれています。
でも、誰のための毎日の治療で、何のための検査なのでしょうか?検査結果が悪いと、なぜ怒られる必要があるのでしょうか?治療は、他の誰のためでもない、患者さん自身のためのものです。患者さんは何のために治療するのかというと、自分らしい生き方を続けて、充実した人生を送るためです。血糖コントロールは、充実した人生を安心して送るための手段の一つに過ぎないのです。
院長も私も、患者さんには「次の診察日が待ち遠しい」「今日の診察も楽しかった。また次回まで頑張るぞ!」と思っていただきたいと願っています。外来受診はエンターテインメントなのです。元気の出る、明るくて楽しい受診日になることを、いつも目指しています。

――日々多くの患者さんと接する中で、どんな時にやり甲斐を感じますか。
患者さんが何かの夢を叶えて、一緒にその喜びを分かち合えた時に、この世界で働いていて本当に良かったなと思います。それは、進学であったり、部活の活躍であったり、恋愛であったり、結婚であったり、出産であったり、就職であったり、とにかく様々です。長い人生の中では、上手く行く時も、行かない時もあるものです。でも、一度しかない人生を一緒に喜び、時に悲しみ、困難を一緒に乗り越えて、一緒に年を重ねていくことを感じられた時、私にとっても一度しかない人生を、何人分も楽しませてもらっている患者さんに、感謝の気持ちでいっぱいになります。

話し手ご紹介

片渕さん

ソレイユ千種クリニック
片渕 敬子
URL : http://www.med-junseikai.or.jp/soleil/

大学病院で産婦人科、脳神経外科の病棟勤務を経て、ソレイユ千種クリニックで1型糖尿病の世界と出会い、ネット界で「おたんこナース」として花開く。看護師、助産師、日本糖尿病療養指導士。


掲載内容は株式会社ウェルビーの見解を述べるものではございません。 (すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 本コンテンツに関するデータ、掲載内容、出演/監修者等の所属先や肩書、提供先の企業/団体名やリンクなどは掲載当時のものです。


糖尿病や生活習慣病の患者さんのための

つながる自己管理ノート

アプリのダウンロードはこちらから

糖尿病をはじめとする生活習慣病にとりくむために、
自ら情報を得て、自ら行動し、自ら判断出来るクラウドサービス